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アイラーツァ【8】


寝てしまった茶髪の竜人(ドラゴニュート)をカイル氏に頼んで寝室に運んでもらう事にした。

このままだと肩が重い……。


しかし(いま)だサーシャの事を(こころよ)く思ってない彼は、その足を(つか)んでそのまま引き()ってゆこうとしたので、慌てて私はそれを止める───そう言えば忘れかけてたけど、私も彼に良くは思われていなかったんだっけ。


すると不意にそのサーシャの体が脱力したまま宙に浮かび上がった。


ぎょっとしてそんな意識のないはずの茶髪の青年を見上げていると、私の斜向(はすむか)いに座っていたライカちゃんが魔杖(ワンド)をこちらに向けている事に気づく。


「私がこのまま連れて行けますよ?」

「悪かった、ライカ。余計な魔力使わせたな。俺が運ぶから、こいつを下ろしてくれ」


そう言って黒髪の青年は宙に浮いたサーシャの体を受け取ると、肩に担いでリビングの左側にある寝室のひとつに運んでいってくれた。


何度か目撃しているライカちゃんの魔法を再び目の当たりにして、自分にこんな真似が出来るのかとかなり気が遠くなっていた。


まず私が最初にしなければならない事は、魔力のコントロール法らしい。

それからルーン等の理論の勉強。

術を使うのはそれから、と言う事らしいのだが───


うー……社会に出てからもう勉強という言葉から開放されると思っていたのに。


だが、どちらかと言えば社会に出てからの方が余程(よほど)多くの学びが必要だった、と身に()みるほど思わされる昨今。


里和(りわ)ちゃんが以前私に言っていたのだが、魔法は数学と物理学だ、と───それを思い出した途端(とたん)、文系の私は頭を抱えたくなった。


イヤ、里和ちゃんも実は文系大卒なのだけど、本来理系の秀才だった彼女がなぜか文学に目覚め、理系の先生達の反対を押し切って物理で大学受験をしたツワモノだったり……まぁ、それは置いといて。


私に魔法理論が理解出来るのか、と。


すると魔導師見習いのカイラちゃんが笑いながら、そこは心配ないと教えてくれた。


「師匠は特殊過ぎますからね。数式使う魔法使い(ドルイダス)は、私は里和(リワ)様以外にまだ会ったことはありません」


との事───でも世界は広い。

何処(どこ)かにはそんな魔法使い(ドルイド)がいるかも知れない。

まぁ、それはそれで当然として、そのどこかで混ぜるな危険同士が出会わない事を祈る私であった。


とにかくライカちゃん(いわ)く、この世界の魔法は魔力の鍛錬(たんれん)と術式の暗記、模倣(もほう)実践(じっせん)が基本らしい。


「先ほど私に相談された、真夜(マヨ)さんが知らないはずの詠唱が出来てしまったのは、やはり、マーガレット様が以前魔術を学ばれていたからだと思います。それが緊急時に脳が危険を感じて防御反応として発動された───それが師匠の見解なのですが、私もそうだと思います」


と、私の心のオアシスである見習い魔導師ちゃんがにこやかに私にそう告げた。


あー、やっぱりそう言う事かー。


それを聞いて、私はがっかりすると言うよりほっとしていた。

どう考えたって私みたいな凡人にそんなモノがあろうはずがない。


「それじゃやっぱり私の魔力が凄いんじゃなくて、そもそもマーガレットさんのって事だよね?」

「それは違います」


え……。

そんなにキッパリ否定しなくても───


「召喚者はこちらに来る時、呼ばれた方の能力にも()るらしいのですが、何らかの空間的エネルギーを必然的に受けるので、どちらの世界に居た時よりも膨大(ぼうだい)な魔力エネルギーをその身に宿してしまいます。師匠はとにかくご自分以上の魔力量を持ってこちら側に呼べるよう、それはもう寝ずに計算されて尽力(じんりょく)されてました」


はぁっ!?

何でそんな余計な事を───!


【参考文献】

wikipediaより『クラークの三法則』 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AE%E4%B8%89%E6%B3%95%E5%89%87

蓋し名言也


【’24/02/08 加筆修正しました】

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