表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/215

アイラーツァ【2】


夜の(とばり)に包まれたエシラの町はかなり明るく(にぎ)やかで、この町の裕福さを象徴(しょうちょう)していた。


様々な露店が無数に並び、見た事のない食材が調理される匂いやエキゾチックな香辛料の香りが漂い、色んな民族衣装や服装の人々が行き交い、酒場ではリュートや小型のハープなどの楽器を持った吟遊詩人(バード)や楽団がそれぞれのお国柄の音色を(かな)でている。


私はこの世界(ニウ・ヘイマール)で初めての人間界(ミズガルズ)の人々の暮らしに、内心かなり興奮(こうふん)していた。

見るもの触れるもの全てが興味深く、ついきょろきょろしがちであった。

その度に黒髪の青年に注意を受け、はっと我に返る。


意外だったのはサーシャだ。

あれだけゴネていたのが嘘のようにキリっとし、私の従僕然としてほぼ完璧に振る舞ってくれていた。


『私は従僕(フットマン)の方が護衛(ボディガード)より(マスター)に近い存在だと思うし、いざとなったら一番頼りになる存在なんじゃないかなって思うんだけど』


町に入る前に私が言ったあの言葉で、がらっと表情が変わったのがとても印象的だった。

内心お子ちゃま扱いしてしまったのをとても後悔した瞬間でもある。


ま、とにかく、宿屋を探さないと、だよね。


そもそも護衛然とはしているカイル氏ではあったが、何せ服はズタボロで(ほこり)まみれ傷だらけ、そして長い前髪の隙間から油断なく放たれる鋭い眼光───何か、変に目立つんですけど。


「か、カイルさん、少し殺気、弱められない……?」

「あ?」

「そっちこっち傷だらけのせいもあるとは思うけど、そんなにガン飛ばしてたら逆に目立つ、よ?」

「そんなつもり無かったが……目立つって言うならそれはあんただろ。ミズガルズではエルフは珍しいからな」


え、私?


……うーん、(いま)だに自分の容姿には慣れない───って言うか、自覚できない。

そうじゃなくてもアールヴヘイムや常若の国(ティル・ナ・ノーグ)では綺麗な妖精だの、美形ばかりのエルフに囲まれてキラキラと過ごしていたのだ。

感覚が狂ってしまっても誰も私を責められはしないだろう。

そのせいか、マーガレット(メグ)さんにはホント悪いが自分が美形のエルフだと言われても全然実感がない訳で。


「それと今の俺はあんたの従者だ。『さん』づけはしなくていい」

「あっ、はい」


そっか、いつものクセで、つい。


(ちな)みに、ミズガルズで私は香月真夜(かづきまよ)ではなく、マーガレット・マクシェインを名乗るよう私の兄になってしまったヴィンセントさんに厳命(げんめい)されていた。


稀代(きたい)魔法使い(ドルイダス)である里和(リワ)・エイル・ギネヴィアの特殊召喚魔法は、アールヴヘイム内でも最高機密(トップシークレット)とされていて、王宮内ではエルフ王のアーロン様と執事(バトラー)のローレンスさん、王弟のグリフィス様、その次男坊のヴィンセントさん、そのヴィンさんの直属の配下でもあるカイル氏と竜騎士のイアンさんしか知らない。

後は里和ちゃんの身内の魔導師見習いのライカちゃん、従者(ヴァレット)蘭丸(ランマル)さんのみだ。


そもそもアクロバット召喚されてしまった私と言う存在自体が極秘な訳で、それが今回のアクシデントで成り行きのまま人間界(ミズガルズ)に降り、そうなった原因も判らないままアイラーツァに上陸し、なぜか黒い巨竜(ズメイ)に襲われた挙句(あげく)、予定外のエシラにやって来る破目(はめ)になったと言う現状。


私自体がお荷物な上に、更に竜人(サーシャ)と言う謎の火竜(ズメイ)までやって来て、正直カイル氏の心労たるや私の想像以上の状態なんだろうと思う。


申し訳ないからなるべく迷惑かけないよう、目立たないようにしないとな。


私がうんうんと一人で得心していると、脇から野太い腕が伸びてきて私の左腕を痛いぐらいに(つか)んできた。


ぎょっとして掴まれた腕の方を見ると、手の甲や指にびっしりと体毛が生えたごつい手が視界に入る。

そのまま視線を上に移すと、粗野な髭面(ヒゲづら)の男がニタリと笑って私を見下ろしていた。


「よう、エルフのねーちゃん! オレたちと遊ばねぇか?」


酒臭い下卑た声といやらしげな笑いを放ちながら、獰猛(どうもう)そうな連中が私達の周囲を壁になって(おお)う。


うーん、何このお決まりな感じの悪党共は?


【’24/01/31 22:30 追記修正してます】


【’24/02/02 微修正してます】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ