ミズガルズ【7】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回に新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
「それでこの黒竜、どうするの?」
そっと近寄り、でろんと伸びて横たわる黒い巨竜を人差し指で突っついてみる。
想像通りの金属のような硬い質感の鱗に覆われていて、色が色なのでこのサバンナの炎天下で少々暑いくらいに熱を持っていた。
鱗自体は黒がベースなのだが、光の加減で薄っすらと加工前のアンモライトの様に赤や緑の輝きを見せている。
あぁ……やっぱり綺麗なドラゴンだなぁ。
顔は恐いけど。
恐い顔と言えば、私の左横に同じように立つカイル氏が、難しい表情で何事か唸りながら自分の考えを口にした。
「子って、そんな可愛いモンでもないだろ。まぁ、このまま放っといても問題ないとは思うが───誰かに操られてって感じでも無さそうなんだけどな……ただ、北方系の火竜が何でこんな暑い所にいるのかが引っ掛かる」
私はふぅんと相槌を打ちながら首を傾げる。
でもそれって野良ドラゴンって事だよね。
「………コレ売ったら幾らかになる?」
そんな私の能天気な言葉に、黒髪の青年は流石にぎょっとした表情になり、
「あんた、コレまだ生きて───」
「え、死んでなきゃ駄目なの?」
「イヤ、こんなでっかいドラゴン、生きたまま売った奴の話なんか聞いたことないが」
普通は民間のギルドに登録したハンター(『冒険者』なども含む )なんかが、手頃な大きさの魔物や人間に害をなす獣を討伐した後、現場である程度の下処理をしてから持ち帰って売買するらしい。
ここまで巨大なサイズの魔物や獣は一応国家機関レベルになるとの事で、一般的に軍や国営ギルドで依頼した民間の傭兵機構などの担当になるらしく───個人事業主みたいな傭兵(『勇者』と呼ばれる連中も含む )だの魔道士、魔法使い等もいない訳ではないらしいが、そんな真似が出来る高スキルの連中はそうそういないとの事で。
ただ、この黒竜は鱗から何から相当希少で、売ろうと思えば方々から大金、それも人間が一生暮らせるほどのお金が入る事になるらしい。
でも、私はエルフだからなぁ……一生は無理だろうけど、お金は絶対必要だし幾らあっても困らない、よね。
そんな説明は受けたけどイマイチぴんと来なかった私は、更にこんな提案を渋面の青年相手にしてしまう。
「この世界、サーカスとか動物園とか、ないの?」
「さ、さぁかす───」
彼にとっては相当的外れな話だったらしく、到頭カイル氏は絶句してしまった。
あれれ、またやっちまったか、私。
うむ、確かにこんなでっかいドラゴン、どうやって見世物に出来るんだろ……我ながら鬼浅はかでした。
とは言え───
「うーん……ホント綺麗なドラゴンなんだけどなぁ……お金は欲しいけど、流石に殺すのは忍びないかも」
と、私が不穏な話をしていると、黒竜がぴくりと身動ぎするではないか!
やばい、ちんたら長話し過ぎたか?
いや、そう言う次元の話でもないかも───もっかいシェマカーン鞭で───って、あれ、どうやって出したんだっけ!?
「か、カイル……さん、逃げ───」
私があわあわしながら口を開くと、そんな私を黒髪の青年は慌てず自分の後ろに庇う体勢を取り、ゆっくり後退るよう指示を出す。
ところが───
『やあ、ボクのお気に入りのエルフ!』
えっ!?
例の求婚野郎の声が聞こえてきたかと思うと、ゴオッと音を立てて炎を纏った強風が砂塵を巻き上げつつ黒い巨竜を覆いだした。
それはやがて炎の竜巻となって上空へ伸び、その強烈な熱風に、カイル氏と私は飛ばされないように互いにしがみついてそれに耐えるしかない。
『このボクを生きたまま売ろうなんて、何て肝っ玉の太いエルフなんだよ───うん、ますます気に入った!』
そんな軽薄そうな声が、吹き荒れる炎の嵐と砂埃の中から聞こえてくると、徐々にその暴風が弱まり始める。
気づけばそこにあった筈の黒いドラゴンの姿は消え失せており、舞い飛ぶ炎と砂煙の中から人影が現れていた。
ロシア語、ググる翻訳さん頼みなので間違ってたらまた後ほど直します




