ミズガルズ【2】
ざぁっ……!
白い光の方向から葉擦れの騒めきに似た音と、緑の濃密な匂いが風と共に私の鼻孔を擽る。
世界樹の根から出る直後、黒髪の青年は再度私を抱えてそこから飛び出す。
やっぱりかーっ!
私は目をぎゅっと瞑り、今回最後の落下になるであろう恐怖に備える。
ところが───
すぐに予想外のふわりと軽い衝撃が私の体に響いてくる。
………あれ?
顔を上げふと周りを見渡すとそこはだだっ広い草原で、ぽつぽつと少ないながらも広葉樹が生えているのが見えた。
そんな中、時折り埃っぽい乾いた空気が、草原をざあざあと撫でるように通り抜けてゆく。
空は濃いめのベイビーブルーで、その中を綿雲や千切れ雲がゆっくりと形を変えながら漂っていた。
ここがミズガルズ?───って言うか、私のいた世界と似て、る?
ここの場所自体、雰囲気的にはアフリカのサバンナっぽい感じがするかも。
「着いたぞ」
カイル氏がいつものぶっきら棒な調子でそう私に告げた。
その声にはっとし焦ってその声の主の方を見ると、思った以上に近くに黒髪の青年の端正な顔があり、別な意味でぎょっとする。
───そうだった!
私この人に疎まれてたんだっけ。
「あ、ありがとう」
それまで両手でがっちり握っていた相手のベストの胸元からぱっと手を放し、半ば仰け反りながらそのまま押して身を離そうと思ったのだが───
「おい……!」
かなり不自然な格好になり、流石のカイル氏も態勢を立て直せないまま二人で倒れ込んでしまった。
「いってー……ったく、何やってんだよ」
とは言え、転んでも忍者みたいな身の熟しをする黒髪の青年は、今回も咄嗟に私の腕を掴んで自分の体をクッション代わりにし、私が地面に落ちるのを防いでくれていた。
「わあっ! ごめんなさい‼」
それに気づき、更に慌てて私は彼の上から身を離し、今度は自分が相手を助ける為にその手を掴んで立たせようと試みる。
するとその私の慌てっぷりを見て、珍しくカイル氏が吹き出していた。
「気にするな。あんたを守るのが今の俺の仕事なんだから」
喉の奥でくっくっと笑うその表情が、いつもの無表情で冷酷そうな雰囲気の青年と違い、あまりに無邪気で朗らかだったので、私はその意外にほっそりとした綺麗な指を有した手を握ったまま、ぽかんとしてそんな相手の表情を眺めてしまっていた。
あっれー……もしかして私が思ってるより若いんじゃないかな、この人───
そこで思わず気づいてしまった違和感の正体を訊いてしまっていた。
「もしかしてカイルさんも、エルフ……?」
その刹那、時間が止まった気がした。
「……今、ソコ、気ヅクカ?」
何でカイルさんまでカタコト風に言う───っつか、私と里和ちゃんのやり取り、見てたな!?
しかし彼の答えは私の想像以上の内容であった。
「まぁ、隠すつもりも無かったけど、俺はダークエルフとハイエルフのダブルだよ」
ちまちま投稿ですみません
また地味に追記修正とかしそうです……
*早速修正しました*
【'24/01/13 23:23 加筆修正してます】




