アクシス・ムンディ【8】
眩い光の中、私はぎょっとして思わず立ち止まり、輝き出した自分の両手を呆然と見つめる。
───え!?
「おい、勝手に行くな!」
速攻私に追いついたカイル氏は、その私の現象を見て愕然とする。
「あんた、それは、メグの───!?」
そんな黒髪の青年の驚愕の声を聞きながら、自分の両手から発する光の顕現に無意識のまま躊躇う事なくすぐに次の行動に出ていた。
昔とった杵柄っ!!
心の中でそう叫ぶと、弓の形に変化した謎の光を左手で掲げ、弦と思しき箇所を右手の指に引っ掛けて徐々に引き絞る。
すると、知らないはずの言葉が自然と口から迸った。
「曙光のデリングの名に於いて、彼の黒き魔軍を浄き暁光の光を持ちて打ち払い給え!」
黄金色に輝く弓を引き絞りきると、今度はそこに青白い光の矢が現れる。
その間も終わる事ない黒い魔障の軍団との消耗戦に、必死で各々の武器を振るうヴィンセントさん達。
それまで私を一度牽制してから再び目を閉じ詠唱し続けている美女エルフを、その小さな体で敢然と守護し続けていたライカちゃんが、青い顔色になり肩で激しく息をしながら到頭、魔杖を両手で掴んだままその場に崩れ落ちた。
そこへ容赦なく、魔導師見習いが魔法で粉砕したはずの黒グニャでモヤモヤな集団が再び襲いかかってくる。
その一番近くにいた蘭丸さんがそれに気づき、慌てて二人のサポートに回ろうとするが、間髪を与えずに黒靄ぐにゃぐにゃ集団がその先を遮る。
小柄な魔導師見習いの体を闇の化身が覆い隠す───
ライカちゃん───!!
私はライカちゃんを覆う黒い塊に狙いを定めると、
「浄化!」
そう叫びながら青白い光の矢を放った。
光の矢は右上方に緩やかに弧を描きながら闇のような靄々に吸い込まれたかと思うと、白い輝きが亀裂のように走り、大きな破裂音と共に一気に霧散した。
そこにはぽかんとしたライカちゃんが魔杖にしがみついたまま、ちょこんとしゃがみ込んでいた。
薄い蛍光グリーンの光に紫紺色の魔導服姿の全身が包まれているのをみると、防御魔法か何かが発動してるっぽい。
───っしゃ、次!
ライカちゃんが無事な様子にほっとし、内心ガッツポーズをしながら私が次の黒モヤグニャに狙いをつけようとした瞬間だった。
それまでヴィンセントさんと蘭丸さんに群がっていた一団が俄に合体したかと思うと、黒い投網のように広がって私の方に飛んでくるではないか───!
わあ、ヤバっ!!
と瞬間的に思うが、負の闇沼の如き黯靄の巨大な一つ目と視線が合ってしまった。
その血走った白目に瞳孔が開ききったみたいな黒瞳が、じっとりと私を見下しながら睨みつけ蠱をかけてくる。
底なしの暴怒。
底なしの怨嗟。
底なしの絶望───
途端に全身に氷水を浴びせかけられたような恐怖心が涌いてきて、体が思うように動かなくなる。
体がブルブルと震えだすのを止められない。
あ……やっぱ無謀、だったかな───?
ごめんなさいごめんなさい許して下さい。
私みたいな地味な性格の臆病者が、差し出がましい真似をしてしまいました。
背中にべったりと冷や汗をかきながら、私があっさりすっかりてっきり二度目の死を覚悟した時、その暗黒の投網の背後から目映い黄金の輝きが辺りに広がりだした。
調べ物沼にハマりすぎて書きながら気持ち悪くなってしまいました……また訂正修正追記しそうです
【'24/01/08 12:40 加筆修正してます】
【'24/01/09 19:20 重複表現削除】




