アクシス・ムンディ【7】
何だ、あれ……!?
よく見ると、無数の黒い人影がただの人影ではない事に気づいた。
人の形をとった深い闇のような───でも動きは何だかぐにゃぐにゃしてて黒いアメーバーっぽいのが不気味だった。
それ以上に発する気配が異様で、見ているだけなのに凍てついた手で後頭部をギリギリと掴まれている心地がしていた。
男性陣は里和ちゃんやライカちゃんを背に囲むようにして守りながら、それぞれの武器を振るい始める。
ヴィンセントさんが細身のロングソードで切りつけても、イアンさんがスピアで数人を一気に薙ぎ払っても、蘭丸さんが両手にタガーを持ってわらわらと向かってくる相手を何度も切り裂いても、纏わりつくような動きで黒い煙ように元の人型に戻っていってしまう。
き、気持ち悪い……。
あれじゃ、まるで───
そこではっとして、自分を担いで疾走している人物を見ると、最近ようやく見慣れてきた目つきの悪い黒髪の青年が当然のようにそこにいた。
うわっ、またカイルさんだ!
って、それどころじゃない!!
「ねえっ、助けなくていいの!?」
私はそう叫ぶように言うと、カイル氏の背中をバシバシ叩いて走るのを止めるためにジタバタ暴れ始める。
流石に危ないと思ったのか、黒髪の青年はバランスを崩しそうになりながら慌てて足を止め、肩からずり落ちそうな私の体を両腕で受け留め地面に降ろした。
「安心しろ! リワ達なら心配ない」
カイル氏は困ったようにそう言うと、今度は私を両手で抱え上げようとしてきたので、私は焦ってその腕から逃れて距離を取ろうと身を翻す。
「いや、私は適当に隠れてるから、早くみんなを助けてあげて!」
「駄目だ。俺はあんたを守るようにヴィンセントから言われてるんだよ」
えー??
仲間が苦戦してるのに!?
「そんなの駄目だよ! あれ、邪悪すぎる……!」
そう、見た瞬間から鳥肌が止まらない───あれは一種の悪霊と呼んでもいい存在だ。
それも、生き霊とかいうヤツ。
吐き気がするぐらいの悪意が、徐々に周囲の空間や皆を蝕んでゆくのが、なぜか私には判る。
すると、それまで魔杖を胸元に両手で抱えながら黙って目を瞑っていた里和ちゃんが、徐ろに口を開いて何事か呟き始めるのが見えた。
そんな彼女を守るように小さな体を盾にして、ライカちゃんが魔杖を前方に掲げ、呪文を唱えながら襲いかかる黒いタールみたいな影法師を魔法で切り裂いてゆく。
しかし無情にも、その霧散した黒い邪悪な意思を持った靄に似た塊は、すぐに集まって元の人型に戻ってしまう。
キリがない……!
( いや、駄洒落じゃなく )
「いいから、俺達は逃げるんだ!! あんたに何かあったら、元も子もない!」
カイル氏が私の肩に手をかけ、そう言った時だった。
私はその手を払い、黙って里和ちゃん達に向って走り出していた。
今度こそ、逃げない───絶対、助ける───!
心の中でそう叫ぶと、私の両手から眩い黄金色の光が輝きだした。
その私に気づいた里和ちゃんは、珍しく紫水晶色の瞳を見開き、慌てた様子で私に向かって叫んだ。
「香月、来ちゃ駄目……!!」
壁にぶつかり沼にハマり、沼にハマり沼にハマりを繰り返しております
また追記修正しますので何とぞ良しなに
【'24/01/08 10:24 加筆修正してます】
【'24/01/14 09:32 加筆してます】




