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アクシス・ムンディ【4】


すっかり憔悴(しょうすい)しきって座り込んでしまっていたグリフィス氏を、エルフ王家の執事(バトラー)であるローレンスさんと里和ちゃんの従者(ヴァレット)蘭丸(ランマル)さんが両側から支え、別室で寝かせるために大広間から連れ出した。


私はそれを黙って見送ったまま、ぽつねんと立ちつくす。


「真夜さん、済まなかったね。ちゃんと説明はしてたんだけど、あのヒトそそっかしくてね……理解してなかったみたいで」


同じくその自分の父親を困ったように見送っていたヴィンセントさんが、振り向きざまに私にそう謝ってくる。


いえ、と私は少し笑いながら応えるが、自分でもそのぎこちなさをどうにもしきれないでいた。


場が一気に静まり返る。


(わし)からも謝罪をさせてくれ。自己紹介が遅れたが、(わし)はアーロン・ライオネル・オハラ───このアールヴヘイムのエルフの王を務めさせてもらっている者だ。この度の弟の非礼、心よりお詫び申し上げる」


すると、この大広間に入った瞬間に聞こえた声の主が、(おもむ)ろに重々しい調子でそう口火を切った。


ああ……この人がエルフの王様───


私は茫漠(ぼうばく)としたまま、その声の主に視線を移した。


ずっとそこに居たのかグリフィス氏の騒ぎで正直、全く視野に入らなかったのが不思議なぐらいの圧倒的な存在感でその場に(たたず)んでいた。


ストレートロングのプラチナブロンドに、幾星霜(いくせいそう)を重ねてきたであろう面立ちの白貌(はくぼう)

弟さんや甥っ子さんとよく似た透映(とうえい)青玉サファイアの瞳に、キッと眉尻の上がった柳葉眉(りゅうようび)

淡いアイスブルーの繻子(サテン)のジュストコールに白でシルク地のビクトリア風ブラウス。

白の細身のボトムに、同じく白のボタンアップのショートブーツという出で立ち。


こうも美形ばかりが現れるとだんだん感覚が麻痺してくる。


「弟───グリフィスは、末娘だったマーガレットを目に入れても痛くないほど可愛がっていた。自分を(かば)う形でその娘が400年眠り続ける(あのような)事になってしまったのだ。毎日のように(おのれ)を責め、恐らくその年月が四千年にも、四万年にも感じていた(はず)だ。だからと言って、異世界に住まう貴方(そなた)には本来なら全く関係のない話だったのだが……本当に申し訳ない」


今はただ、その言葉に黙って(こうべ)を振るしか出来ない私であった。


しかし、グリフィス氏に永遠の眠りの呪詛(じゅそ)をかけようとした相手って、一体───結果、父親の盾になってしまったマーガレットさんが肩代わりする最悪の事態になってしまった上に、本人を呪うより効果的な呪いと化しているのが本当に恐ろしいし非道だと思う。


すると今まですっと沈黙を守っていた里和ちゃんが、このタイミングで不意に口を開いた。


「でしたら陛下、何故ヴィンセント様とわたくしを()()()()()にされ、再びこの世界に呼び戻されたんでしょうか?」


美女エルフの峻烈(しゅんれつ)な追及の言葉に、エルフの王・アーロンはひとつ大きな溜め息を()いた。

やけに疲れている顔つきになり、先程の威厳がまざまざと色褪せてゆく。

一気に10年───いや、エルフの時間感覚で言えば100年と言った方がいいのかも知れない───老け込んだように見えた。


「ヴィンセント様やわたくしがこちらへ呼び戻されなければ、恐らくマーガレット様も呪われなかったでしょうし、マヨ・カヅキが私にこの世界へ(こころ)のみ()()()()召喚される事も無かったはずです」


里和ちゃんってば、エルフの王様相手によくそこまで口さがなく言えるもんだなぁ。

つか、『取り替え子』って、一体……?


そこで段々頭が冷えてきた私は、はらはらしながらその二人のやり取りに耳を傾けた。

ようやく自分がここに来た原因が判明しようとしていのだから。


年末色々バタバタしそうなので、また暫く更新出来なくなるかもです

何とぞ良しなに

(でも、今までの投稿内容は地味に時間がある時に推敲して訂正出来ればなぁ、と


【'23/12/22 18:00 誤字脱字修正】

【'23/12/23 00:43 加筆修正しました】

【'23/12/31 加筆修正してます】

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