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ジャーン・ウールヴ【9】



×××××××××××



そして私がありふれた被害妄想(パラノイド)懊悩(おうのう)をしているそんな最中(さなか)───


いまだ私達の預かり知らぬ驕奢(ごうしゃ)な屋敷の不自然に明るい広間(ひろま)で、華美(かび)な革張りのソファーセットに集う倨色(きょしょく)の濃い貴人や為政者、聖職者、豪商と(おぼ)しき面々が、やけに賤劣(せんれつ)な笑顔をその上品ぶった顔に貼りつけ互いの成果を誇示(こじ)しあっていた。



「スヴァルトアールヴヘイムでひと騒動あったようだな」

「奴らの(つぶ)し合いはさぞ見物(みもの)であったろうよ」

「お陰で諜者(スピオン)もろとも始末(しまつ)できたのは神授(しんじゅ)であったな」

「全ては目論見(もくろみ)(どお)りという事で───パーヴェル陛下」

「あぁ、早く彼奴(きゃつ)らには消えてもらわぬとな。それにしても例のエルフは存外(ぞんがい)伏兵(ダークホース)であったと聞いておるぞ」

「また随分(ずいぶん)厄介(やっかい)魔法使い(ドルイダス)が現れよったな……まだ『紫炎熄滅(しえんそくめつ)魔法使い(ドルイダス)』も(ほうむ)れないでおるというのに───どうするつもりだ、コナーズ」

「ご安心下さい、ミルナー司祭長。(すで)に手は打っておりますゆえ」

この世界(ニウ・ヘイマール)に不必要な連中を一掃(いっそう)せねば、我々に未来などないのだからな」

「次はあの怪物(チュドゥビシャ)が我々の思う厄災(カタストロファ)となって現れるだけか」

「楽しみだな」

新たなこの世界ノーヴォ・ニウ・ヘイマールの神の降臨(こうりん)だ」

「では、我らの栄光に乾杯プリヴェツヴューム・ナシュ・スラーヴォ!」



次々と金の装飾が派手なシャンパングラスを(かか)げる老獪(ろうかい)なお歴々(れきれき)の中、とある人物の面影(おもかげ)のある一人の青年が、豪華な(しつら)えの暖炉(ペチカ)を背にそれを睥睨(へいげい)しながら薄く(わら)っていた。



×××××××××××



青みががった白髪の闇の(ダーク)エルフの少女の白い目に気づいた私は、コホンとひとつ咳払(せしばら)いをし、黒いネコ科の使い魔からばつ悪く身を離し口を開いた。


「それでアマリアちゃん、私に何か用があるんじゃないの?」


その私の言葉にはっとした様子の愛らしい闇の(ダーク)エルフの少女は、その綺麗なストレートのボブカットをきらきらと揺らしながら私にキッと向き直り、意を決したように勢いよく(のたま)った。


「はいっ、実はベルンハルト様からスヴァルトアールヴヘイムを案内して差し上げろと(おお)せつかりまして」


おぉ、マジっスか!

それはそれはすんごい助かりますです。


───って、確かアマリアちゃん、前回の私の『桂魄(けいはく)の宮殿』での騒ぎで怪我してたって聞いてたんだけども。


「その、魔法使い(ドルイダス)リワから聞いたんだけど、体の方は大丈夫なの? 全身打ちつけてたって……」


まさかあんな事になるとは、流石(さすが)に私も思ってなかったからなぁ。


そんなの判ってたら、銀次(ギンジ)君と一緒に(そば)にいてもらったのに───The『後悔先に立たず』を絵に描いたような自分の不始末に、()しもの私もこれ以上(へこ)みようがないほどまた落ち込んでしまいそうになる。


「それは問題ありません。マーガレット様が眠っておられる間、魔法使い(ドルイダス)リワ様があたしに治癒(ちゆ)魔法をかけて下さいまして、お陰で以前より体調がいいくらいで───あの時の()びだと申されまして、『桂魄(けいはく)の宮殿』の怪我人のほぼ全てを魔導師見習いの方と一緒に魔法で治癒して下さったんです」


目を輝かせながらそう教えてくれる闇の(ダーク)エルフの美少女に、私は思い切り違和感を覚える。


あれ……アマリアちゃん、里和ちゃんのこと怖がってなかったっけ?


ま、それは()(かく)───


「それは良かった」


思わずそう口にしてしまうぐらい、私も今回ばかりは心底美女エルフに感謝していた。


今だって───私からは逃げ回っていると(おぼ)しき里和ちゃんなのだけど、何のかんの言ってちゃんと私の粗相(そそう)をフォローしてくれている。


しかし、だ。


「……それにしてもアマリアちゃん、わたsh……もとい、魔法使い(ドルイダス)リワのこと、怖がって───」

「いえ、それが……! その時たくさんお話させて頂いたんてすが、リワ様ってお綺麗で本当に素敵なお方ですね! あたし、ファンになっちゃいました」



な・ん・で・す・と……?



また食い気味で、大きなパーシアンレッドの瞳を輝かせながらそう話す闇の(ダーク)エルフの美少女に、私はまたまた衝撃を受けていた。


無意識のうちにくるーりと頭を回し(かたわ)らの(ブラック)ジャガーに視線を移すと、やはり同じようにくるーりと誰もいない方へ顔を(そむ)けるのだった。



何でそうなるの─── ⁉



往年の○本欽ちゃんのギャグが脳内に絶叫となって響き渡る私なのであった……どっとはらい。



ロシア語翻訳は毎度のググる翻訳さん頼みで

読みは耳コピなので間違ってたらすみませんです……って言うか、ロシア語もかなり独特ですね(語彙感が

また後ほど誤字脱字加筆修正させて頂きとう存じます

【’25/02/08 誤字脱字加筆修正しました】

札幌は晴れててこちらは細雪……また除雪ですだ

【’25/02/11 微修正しました】

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