表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/215

デュフル・ヘジン【8】


その方々(ほうぼう)から上がる野太い絶叫に、ぎょっとして周囲に視線を(めぐ)らせると、白い大理石の床から(わき)き上がる禍々(まがまが)しい(くら)靄々(もやもや)に、闇のエルフ(デックアールヴ)ドワーフ(ドヴェルグ)などの衛兵たちが襲われていた。



うっそ……!



私は(あせ)って持っていたサンザシの魔杖ワンドを振り、叫ぶ───



光の弓(クンダ・ボギ)!」



持っていた柄頭(ポメル)にホワイトオパールがついた魔杖(ワンド)が光りに包まれ、(またたく)く間に黄金色に輝く弓の形に変化する。


そしてそれを迷うことなく天に向け、光の(つる)を引き(しぼ)りながら声を張って(とな)える。



遍く(グノーグト・)降り注げ(デッタ)光の雨(ロズ・レグン) ‼ 」



すると何もなかった(フルドロー)の空間に白光が凝縮(ぎょうしゅく)し始め、大きめの(かぶら)のような(やじり)のついた光の矢が出現した。


そのふわっとした温かさを右(ほお)に感じながら弦を引き絞り、一気にとき放つ───


光の鏑矢はメスキータの円柱の森に似たこの大広間(ホール)の、派手な装飾の(ほどこ)された高い天井の中央まで飛ぶと、火花が飛び散るように無数の光が放射状に展開してゆく。


それが広い玉座の間のあちこちで黒い魔障(ましょう)(もや)に襲われていた者たちの上に降り注ぎ、光の(バリア)となってその全身を(おお)った。


今や黒いアメーバ状に変化し、この室内にいた者達を()み込もうとしていたエルキングと(おぼ)しき不気味で(くら)靄々(もやもや)は、その光の(バリア)に触れた途端(とたん)、焼けるような音を立てて蒸発(じょうはつ)するみたいに消され始める。


その(たび)(しわが)れたニワトリの断末魔(だんまつま)のような絶叫が、大広間中を気色の悪い斉唱(ユニゾン)となって反響していた。


ところがよく見ると、着ていた者の形のまま残された隊服やブーツ、彼らが持っていた(はた)やリボンで装飾されていた長槍(ちょうそう)などが大ホールのそこかしこに倒れたまま点在しており、中にはアマリアちゃんと同じ服装のものも見受けられ更にずきりと胸が痛んだ。



間に合わなかった……。



だが、ちゃちで傲慢(ごうまん)な自分の感傷に(ひた)っている(ひま)など無かった。


今度はベルンハルトさんの鋭い叫びが私の耳に飛び込んでくる。



「エルキング様、何をなさるおつもりですか…… ⁉ 」



帯刀(たいとう)していたツヴァイヘンダーを構えたベルンハルト氏が、鬼気迫(ききせま)る表情でグロテスクな動きをする黒(もや)対峙(たいじ)していた。


その背後にはすっかり様相(ようそう)の変ってしまった王女ヘルヤが、(おび)えたまま銀鼠(シルバーグレー)の髪色した闇の(ダーク)エルフの偉丈夫(いじょうぶ)に震えが止まらない様子でしがみついている。



『邪魔だ、退()け……! 退かぬなら、おのれ諸共(もろとも)我が血肉の力の(みなもと)となるがいい─── ‼ 』



不意に(くら)い奇っ怪な(もや)が、大きな投網(とあみ)が広がるみたいに二人に向かって(おお)(かぶ)さろうとする。



───が、激しいバースト音と発光がその悪意の投網を霧散(むさん)させた。



っしゃ……!



私は内心ガッツポーズをとる。


私の放った光の鏑矢(まほう)がちゃんと()いている。



『おのれ……おのれ、小癪(こしゃく)小娘(ドルイダス)め───また(われ)の行く手を(はば)むか!』



この円柱の森に似た奇妙に華美(かび)で大きな空間に、地の奥底から()き立つような怨嗟(えんさ)(しゃが)れ声が不気味に反響(エコー)する。


その小娘は私じゃないけど、この小娘も僭越(せんえつ)ながら頑張ってご老台(ろうだい)のこれ以上の破滅的状況(カタストロフ)を悪化させないために努力させて頂いてますよ───不本意(ふほんい)ながら。



そこで突如(とつじょ)脳裏(のうり)を移動拠点でのあの忌々(いまいま)しい記憶が次々とフラッシュバックしてくる。



うわ、嫌だ……!


早く忘れたい───



そう、本当はこれ以上こんな訳の判らない真似(まね)ばかりするゴブリン(じい)さんになんかに関わりたくない。


あぁ、我ながら損な性格してる───こんなことしたって、誰からも当然としか思われないだろうに。


それどころか皮肉屋(シニック)からは善人ぶりやがってと(ののし)られさえする。


良い人と言われてしまう者は所詮(しょせん)、どうでもよい人にしか過ぎないのだから。


でも関わってしまった以上は、目の前で恐怖に(おのの)いている闇のエルフ(デックアールヴ)ドワーフ(ドヴェルグ)達を捨て置く訳にはいかなかった。



なぜって、自分が一番悔やむだろうから。



あー、里和ちゃんも私も大馬鹿だ───



「ミッシャ、私に何かあったら迷わず逃げて」



私は背後の二人にそう言うと、思念伝達で私の黒い梅花紋柄(ばいかもんがら)の使い魔に呼び掛ける。



弥七(ヤシチ)、お願い───!



毎度申し訳ないですが、また寝落ちして書けなくなってきたので、また後ほど誤字脱字加筆修正させてもらいます……何とぞ良しなに

因みに、古ノルド語はウェブ翻訳さんですが、恐らく地味に間違ってるかもなのでご了承下さい

【’25/01/02 誤字脱字加筆修正しました】

明けましておめでとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ