表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/215

デュフル・ヘジン【3】



こんなの、絶対に駄目だ───



憎しみあって(あらそ)った先には新たな憎しみが増えるだけなのに……。



私から(ほとばし)るように(きら)めきながら広がってゆく光の圧力に、ダークブロンドの紳士は(ひざ)()いたまま驚いたように私の方を(なが)め、エルキングの嬌艶(きょうえん)な娘はその最中さなかであっても(さら)奸邪(かんじゃ)な笑みを深めている。


『───メグ!』


それまで私の右肩で、次々と巻き起こる様々(さまざま)事象(じしょう)に、黙って()えていた(さば)トラ姿(すがた)の使い魔が、流石(さすが)に少々(あせ)った様子(ようす)で私に思念伝達(しねんでんたつ)してくる。


『何が起こってるんだ ⁉ 』


大丈夫だよ、弥七(ヤシチ)───私に何かあったら(あと)は頼むね。


私はその二人を予断(よだん)なく見据(みす)えたまま、自分が発するその光の温かさになぜか不思議な心地良さを覚えていた。


『ったく、あんたって(ヤツ)は……! 判ったよ、安心してオレ様に(まか)せろ』


多少憤慨(ふんがい)した調子ではあったが、それでもかなり呆れ返った風情(ふぜい)でそう応えてくれていた。


いつも弥七(ヤヒ)っつぁんがいるから心置(こころお)きなく頑張れるし、気兼(きが)ねなく頼らせてもらえてるから本当に助かってるんだよ。


鯖トラ化している私の従魔にそう伝えると、そんな私の(ほお)に小さな頭を少し強めに()りつけてきた。


その何気(なにげ)ない使い魔の仕草(しぐさ)にかなり勇気づけられながら、私はまず目先(めさき)懸念(けねん)を解消する事にした。


サンザシの魔杖(ワンド)の大粒のホワイトオパールがついた柄頭(ポメル)を左手で天に(かか)げ、頭の中で一気に詠唱する。



『我は求む───白き清厳(せいげん)たる泉の輝ける光の化身(けしん)ベレヌスよ! その俊豪(しゅんごう)な力を持ちてこの場に(よど)みたる昏黒(こんこく)迷霧(めいむ)を、鮮烈な眩燿(げんよう)により洗い流し(たま)え!』



すると、虹色に(きら)めく遊色が美しいホワイトオパールの魔鉱石から、更なる水流のごとき凄烈(せいれつ)な光が(ほとばし)り、辺り一帯(いったい)渦巻(うずまく)くように広がってゆく。


やがてその光の奔流(ほんりゅう)がこの華奢(かしゃ)な玉座の間と(おぼ)しき大広間(ホール)の隅々まで満たしていった。


ところがそれまで奸悪(かんあく)な笑いをフェロモンだだ()れの美貌に()りつけていたヘルヤが、突然激しく苦しみだした。


それどころか、呆然(ぼうぜん)里和ちゃん(わたし)を見ていた魔術士ファーマンも突如(とつじょ)、小脇に抱えていたマーガレットさんの体を乱暴に落としたかと思うと、やはり同じように苦悶(くもん)の表情を浮かべ(もが)き始める。


ちょ、(マーガレットさん)の体だと思って……!


つか、やっぱりこの(ヒト)、まさか───


私の想像が確信に変った瞬間、ダークブロンドの青年の口から黒い液体が血のように流れ出す。


うわ……っ⁉


やっば、マっズ……!


私は(あわ)てて魔術士ファーマンの(そば)まで()け寄ると、そのまま里和ちゃんに依頼されていた()()を試してみる事にした。


壊れた人形のように横たわるマーガレットさん(じぶん)の体を横目に、内心これが終わったらすぐ助けるからと言い訳しつつ、私は左手を黒いどろどろした液体を()()らしながらのたうちまわるダークブロンドの青年の左胸に当てる。


そんな私の左手首をファーマンことマックス坊っちゃんがガッと両手で(つか)み、苦悶(くもん)の表情を浮かべたまま首を横に小刻(こきざ)みに振る。


これ以上苦しみたくないのは判るけど、自業自得(じごうじとく)なんだから我慢(がまん)してよね───


私はその相手の反応に薄く微笑(ほほえ)むと、右手に握っていたサンザシの魔杖(ワンド)のホワイトオパールのついた柄頭(ポメル)を再び頭上に(かか)げ、また頭の中で一気に詠唱した。



オオタカ(ストール・ハウカ)よ───すれ違う願いは夢幻(エイワズ)溶けて消え去り(ラグズ)真実はやがて姿を現す(パース)己を知り(マンナズ)その殻を破り(ハガラズ)───新たなる光明(カノ)を!』



(とな)え終わる(いな)雷撃(らいげき)のような光が現れ、魔杖の柄頭に向かって落ちてきたかと思うと私の全身が電球の(ごと)く輝き、それが左手に向かってどんどん流れてゆく。


そしてその光に焼かれたかのように、それまで隠れていた私の左甲(ひだりこう)のウォーターオパールが徐々(じょじょ)に出現し、私の全身の光が全て左手に吸収されたかと思うと直視できないほどに輝き、その瞬間───


怪鳥(けちょう)の奇声に似た断末魔(だんまつま)(ごと)き絶叫がこの大広間に響き渡った。


遅くなった上にこんな調子ですみません

本日インフルの予防接種受けてきまして、また睡魔に勝てません

また後ほど続き書かせて頂きとう存じます

【’24/12/16 誤字脱字かなり加筆修正しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ