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アクシス・ムンディ【2】


まだ歩くのか、と私が何気に困惑したまま里和ちゃんエルフの後をほてほてとついて行く。

ほぼ円型の要塞のような崖っぷちに沿って、何故か黙々と反時計回りに進む。


え……何これ?


先ほどあるのではないかと考えた出入り口は、城の反対側───死角にも存在せず、本気でどこからこの城に入るのかさっぱり判らなくなった。


何、このエッシャーの(だま)し絵みたいな城……。


そこでイアンさんの言葉が脳裏で反芻(はんすう)される。


『相変わらず用心深い城だな、ここは』


そ、そういう事か……。


私はがくりと肩を落とした。


そのままひたすら歩き続け、到頭(とうとう)一周して───私の体感で約1kmぐらい───元の場所まで戻ってきたかと思うと、それでも里和ちゃん達はまだ止まらずに歩き続ける。


ちょっとお……!?


心の中でムンク状態になる私。


「あと二周だから」


そこで私に振り向いたヴィンセントさんが、くすくす笑いながらそう教えてくれた。

よっぽど顔に出てたらしい……あぁ、恥ずい。


これでオープンセサミになるといいんだけど───


内心そう嘆息しつつ、残りの二周を同じように歩ききった時だった。


それまで黙って歩いていた里和ちゃんが何事か詠唱し、持っていた魔杖(ワンド)を城に向けた瞬間、城を囲んでいる円状の崖が光り輝きそこに巨大な魔法陣が浮かび上がる。


そういうことかーっ!


そして私達はそこからかき消える事と(あい)なった。




×××××××××××




「お待ちしておりました」


そこにはロマンスグレーに黒のフロックコートを優雅に着こなすエルフの一人の紳士が(こうべ)を垂れて待ち受けていた。


心なしか、里和ちゃんエルフがその紳士を見て淡い紫色の瞳をキラキラさせている。


うむ、実に里和ちゃんのストライクゾーンかも。


イアンさんが何となくむっとしてるのは見なかった事にする───と、言うか、緋色の髪の竜騎士さんもよく見ると実はなかなかの好青年(イケメン)なんだとは思うんだけど。


燃えるような赤い髪に意思の強そうな太めの眉、柘榴石《ガーネット》色の瞳、白のビクトリアンブラウスやタイトめの黒のボトムの下からは鍛え上げられた筋肉質な体躯(たいく)が見て取れる。

身長(タッパ)もあるし、明るくてサバサバしてて如才ない感じで。


如何(いかん)せん、里和ちゃんの趣味からはあまりにも遠い若々しさなのがねー……うーん、残念。


「どうぞこちらへ───」


そのロマンスグレーの紳士はそう言うと、洗練された所作ですっとこちらに背を向け歩きだす。


その紳士に吸い寄せられるように、瞳をハートにしたまま里和ちゃんがうきうきした様子でその後に続く。


そこは光芒の宮殿の城内と言うにはヤケに薄暗さを感じる場所だった。


魔法で転移してきたこの広間は、城のエントランスである事には間違いないのだろうが、先ほど見た外観とはどうも不釣り合いと思えるぐらいシンプルな内装である。


例えて言えば、近未来感を感じるほどあっさりスマートな、スタンリー・キューブリックの映画に出てきそうな印象、と言うか何というか。


てっきり中世北欧風のロマンティックな内装を想像していた訳なのだが……うーん、残念の2乗。


その上、城内と言うには余りにも人気(ひとけ)が感じられないのが、微妙なホラー感を(かも)し出していた。


普通、城って言うならもうちょっと門番だの近衛の兵士だの、侍従だの侍女だのがわらっと立ち並んでいそうなものなのだが。


とは言え、そんな事を気にしているのは私ぐらいで、他の皆は当たり前のようにガンガン先へと進んでゆく。


そんな私の浅はかな考えを打ち消すように、私の兄になった美麗なエルフが口を開いた。


「ローレンス、父は───」

「はい、グリフィス様は(すで)にこちらに到着されておりまして、ヴィンセント様とマーガレット様をお待ちしております」


ちょいちょい加筆修正しまくっておりますが、何卒良しなに願います


【'23/12/19 21:40 鬼加筆修正しました】

【'25/01/07 誤字修正】

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