表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/215

スヴァルトアールヴヘイム【11】

*続きを読んで下さっている方へ*

話がつながらない場合、地味に前回新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい

気になさらない方はそのままどうぞ


スヴァルトアールヴヘイムで失踪(しっそう)してた───


と、言うより、銀次(ギンジ)君ってば一番王道(オーソドックス)なパターンで帰れなくなっていた訳で。


やはり里和ちゃんの推測通り、移動拠点の異変を察知して単独で例の老ゴブリンを追っていたっぽい。


とは言えねぇ……。


結果捕まってたら意味ない感じで。

それも割と最悪な形で。


美女エルフの従者(ヴァレット)の中でも上司的な立ち位置の蘭丸(ランマル)さんがぼやいていた事には、ある意味主人(マスター)に一番似てる上に悪影響も受けまくっている、無意識でスタンドプレイをしがちな使い魔であるとの事。


そりゃ蘭丸さん、さぞかし気苦労が絶えないだろうな。


一瞬顔に出かけた動揺をどうにか立て直し、やれやれと思いながらも何げに実は美女エルフの想定内だった事態に対処すべく、私はできるだけ何事もなかったかのように視線をすっと、正面で妖しく(わら)うフェロモンだだ()れの王女ヘルヤに移した。


此奴(こやつ)はそちの子飼いの従僕(じゅうぼく)であろう?」

「違いますよ!───何度も申し上げている通り、自分はナエポルエ・ユニオンの要請(ようせい)で、こちらのドワーフの名匠(めいしょう)に仕事を依頼するためにアポイントを取りに来ただけです」


少し食い気味(ぎみ)でヒースグレーのソフトモヒカンの少年は、全く気後(きおく)れした様子もなく玉座の傾国(けいこく)の王女に堂々とした態度でそう告げる。


うん、これも想定内の答え───里和ちゃんと銀次君たち使い魔はこんな時のために、口裏を合わせる設定をいくつか考えているらしく、今回の話も実際に彼はそうした行動をしている下地があり、割とどうにでも言い訳がきくらしく。


ちなみにナエポルエ・ユニオン───『NU』と略す場合が多い───とは、ミズガルズに点在する中小国などが集まって作られている連合国家で、場合によっては東西南北の大国より強い権限を行使(こうし)できるらしいのだが、それはまだ別の話で。


とは言え、相手も千年以上の年月を乗り越えてきた百戦錬磨(ひゃくせんれんま)手練(てだ)れ───そう容易(たやす)くは見逃してなどくれないだろう。


さてはて、ここからどの選択肢になっていくのかな?


問題は山積(さんせき)しているのに銀次君が見つかってかなりほっとした私は、地味に気が大きくなってそんな呑気(のんき)な事を考えてしまっていた。


凡庸(ぼんよう)な自分が置かれている現状にしてはあまりにも現実味が無く、まるでRPGの世界に迷い込んでしまったかのような……いや、もしかすると本当にこの異世界(ニウ・ヘイマール)はゲームの中の世界なんじゃないか?


こんな緊迫(きんぱく)した状況にも(かか)わらず、我ながら全く()りずに心が平気で現実逃避しようとしてしまう。


「それでコソコソ()ぎ回っておった、と?」


そんな(おろ)かな私を(いまし)めるかの(ごと)く、エルキングの嬌艶(きょうえん)な娘が氷水のような言葉を浴びせかけ乱暴に現実に引き戻してくる。


しかし流石(さすが)はスタンドプレイを得意としている(?)ヒースグレーのソフトモヒカンの少年───ここまで単独で行動してきただけあり、その揺さぶりにも全然(おく)するところがなく、それどころか───


「そりゃ、コソコソにもなりますよ。スヴァルトアールヴヘイムの国匠の方ですからね。本来ならこちらの陛下かヘルヤ殿下の許可を、大臣や官僚たちを通して取らねばなりませんから───私の依頼主もここ十数年もかけて何度もロビー活動すらいとわず申請しておりましたが、一向に許可が下りませんので(しび)れを切らしたんですよ。人間の生は短いですからね、これでも辛抱(しんぼう)強く待っておられたみたいですよ?」


と、倍返しで論破してくる始末であった……それじゃ逆効果じゃないのかな、銀次君ってば。


私がどうにか能面のような無表情を保持したまま、内心相当ハラハラしながらその様子を見守っていると、案の定───


「苦肉の(さく)、と申すか? ……よくもまぁ、そこまでベラベラと戯言(たわごと)を並べ立てられるものよのう」


王女ヘルヤがその細く形の良い眉根(まゆね)をヒクヒクと痙攣(けいれん)させながら、ぱっちり二重のアイメイクの濃い双眸(そうぼう)をすうっと細めた。


あ、これはヤヴァい……そろそろ止めに入るべきかも。


私がそう思ったのも(つか)の間───


「嘘じゃありませんよ。殿下であればこんな事、簡単にお調べになられてとうの昔にご存知の事と思うのですが───」


銀次君の●ガンテが炸裂(さくれつ)する。



ピシィッ─── !!



この場の空間に強烈な音を立てて亀裂(きれつ)が走った気がした。


うわ……み、耳が痛い。

実は空気読めてないだけ?


私も空気は読める方ではないが、銀次君の場合はちっとも見えてすらいない感じだ。


そこで銀髪金眼の美婦がすっと静かに立ち上がった。


その体の線もあらわな深紅のドレスをまとった肉感的な嬌姿(きょうし)から、おどろおどろしいタールのようなオーラが煮え立つように全身から(ほとばし)りだす。


気づくとそのほっそりした手には、炎刃剣(フランバード)に似たグロテスクな造形の王笏(セプター)らしき物が握られている。


そして次の瞬間───


「どこまでも(シラ)を切るつもりか……まぁ、よいわ───では、死ね(ダウディ)!」


日付が変わる前に投稿したかった……色々調べまくって沼にハマり気味です

そんな訳で、毎度誤字脱字加筆修正すると思いますが、何とぞよしなに願います

【’24/11/24 誤字脱字加筆修正しました】

【’25/02/23 微修正しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ