表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/215

スヴァルトアールヴヘイム【2】


そんな風に私の兄になってしまった美青年は言ってくれてはいたが、この場合の『マーガレット』は()くまで私───『真夜(メグ)』の事ではなく、約400年前に眠りについてしまった父親思いの可哀想なマーガレット・マクシェインさんの事なのである。


そして(うるわ)しの吟遊詩人(バード)たるヴィンセントさんは、私たちが以前にいた世界の家族と期せずして引き()かれてしまい、その一人娘(ひとりむすめ)さんの面影(おもかげ)を妹のマーガレットさんに重ねていたのだから。


そうなると聖女のようなマーガレットさんと俗に(まみ)れた私なんかじゃ比べようもない上に、代わりになんぞなろうはずもない訳で───こうなったのは私のせいじゃないとは言え、逆に鬼のように申し訳なく思ってしまうぐらいで。


なのにその現実に変にがっかりしてしまっている自分がいて、それがあまりにも滑稽(こっけい)で、自分のおかしな強欲(ごうよく)さにはほんと辟易(へきえき)してしまう。


今だって充分(じゅうぶん)に良くしてもらっていると言うのに、私はそれ以上に何を求めてしまっているのか。


恥を知れ、恥を───


自分を(いさ)めつつ、私は(つと)めて平静を(よそお)いながら、里和ちゃんの使い魔のピリカちゃんがシルバーのトレイを持ってこの部屋を()したところでようやく口を開いた。


「それでヴィンセントさん、少し(くわ)しくマーガレットさんの話とか、父君(ちちぎみ)のグリフィス様のお話、(うかが)ってもいいですか?」


アールヴヘイムの崩壊やその襲撃、スヴァルトアールヴヘイムとグリフィス様がどう(かか)わり、そこからミズガルズの国々をも巻き込んで───なのか、逆に様々な利権なんかが複雑に(から)み、向こう側からわざわざ巻き込まれに来ているのか?


そしてその中心にいるのが、魔術士マイケル・ファーマンことマックス坊っちゃん、なのか?


(さら)にその背後にまだ黒幕(フィクサー)が存在していて、それがまさかあの老ゴブリン(エルキング)だとでも言うのか……?


そう言えば、マイケル・ファーマンの分身(ダブル)のミッシャが───


そう思い出した途端(とたん)、移動拠点で襲われてしまった時の悲惨(ひさん)な光景が一気に奔流(ほんりゅう)のごとくフラッシュバックし始める。


それに私が急激に胸が悪くなり、目眩(めまい)を覚えていると、それを断ち切るかのような玲瓏(れいろう)なテノールが私を現実に引き戻す。


「あぁ、もちろん!───済まなかったね、こんな愚痴(グチ)を聞かせてしまって。ただ真夜さん(きみ)があまりにもマーガレットの(たたず)まいと似ているものだから、つい……以前彼女に話してたみたいに(しゃべ)ってしまったよ。あの()ともよくこうして一緒にお茶を飲みながら、私のしょーもない愚痴につき合ってもらってたっけ」


私の兄になってしまった美青年は照れ臭そうにそう言うと、ガラスのティーカップを優雅な所作(しょさ)で手に取り、何だか満足した様子(ようす)(のど)の乾きを(うるお)すように一口(すす)った。


え、私が……似て、る?

マーガレットさんに??


そりゃ私の外見自体は彼女そのものなんだけど、カイルは私がマーガレットさんだって認めないって最初に言ってたし、中身は全然似てるはずが───


私がぽかんとしていると、そこで()かさずヴィンセントさんは私に向かって(くぎ)を刺すのも忘れない。


「でもね、真夜(メグ)───また忘れてるよ? ()()の───?」


……あ。


「ヴィンセント()()()!」


油断するとうっかり忘れてしまう。


仮初(かりそ)めの兄妹(きょうだい)とはいえ、今はまだ本当の兄妹のように()()わないと。


「うん、それがいい───実際私たちは片親とはいえ、本当に血が(つな)がってはいるんだからね。何かあったら遠慮(えんりょ)なく私に頼るといい。無理にとは言わないが、私はこちらの世界(ニウ・ヘイマール)では本当に君の兄になれればいいな、と考えているんだよ」


───!


その私の兄になってしまった美麗(びれい)金髪碧眼(きんぱつへきがん)のエルフの言葉は、(かわ)き切った私の心に清涼(せいりょう)な水のごとく()み込んできた。


ヤッバ……何でそんなこと言っちゃうんだろ、この人。


「……ヴィンセントお兄様、妹口説(くど)いてどうするつもりなんですか?」

「えっ…… ⁉ 何言って────じゃ、『お父様』と呼んでもらっても!」

「お兄様、それはお断りします」


それ、まだ(あきら)めてなかったんだ……。

そっちのがもっとヤヴァいでしょ!


元の世界で肉親に恵まれなかった私は苦笑(にがわら)いしながら、そんなちょっとお茶目な相手の優しさに心底感謝するのだった。


するとそこで(うわさ)をすれば何とやら、でまた背後から、最近やっと聞き慣れてきた青年の声が(つぶて)のように後頭部にこつんと飛んでくる。


「まぁ、ヴィンは父親のグリフィス様に負けず劣らず天然の女っ(たら)しだからな……気をつけろ、真夜(メグ)


ゔーん……なかなか話上手く進められなくてすみません

最近ほのぼの多めかも


【24/10/21 加筆修正しました】

思っきし言葉遣い間違ってました……削除訂正しました

他に言い方あったかなぁ……(懊悩

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ