スヴァルトアールヴァル【7】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
再び私の隣りに鎮座する破目になった、私の兄になってしまった金髪碧眼の美丈夫は、気づけば黒髪の青年の隣りに佇む可愛いゴスロリ少女が持つロープを腰に括りつけられ、逃亡できないように見張られてしまっていた。
……お、王族?
何気にあんまりな扱いのヴィンセントさんの状態に、思わず疑問を抱かずにはいられない私であった。
それがエルフ王であるアーロン様が気さく過ぎるのか、はたまた稀代の魔法使いたる美女エルフがそんな風な空気感にしてしまっている所為なのか……。
とは言え、これから話す内容はピリカちゃんには流石に聞かせられない内容ばかりになるので、里和ちゃんはそんな仕事に生真面目なゴスロリ少女を説き伏せ、ロープを長く伸ばして隣りの控室に待機してもらう事となった。
つか、こんな時こそ魔導具とか使うべきな気がするのだけども……この程度の些事には使いたくないって事なのか。
とは言え、ヴィンセントさんも何気に自然魔法は普通に使えるとか言ってたから、本気で逃げようと思えば逃げられるんじゃないの……かな?
当のヴィンセントさんはと言えば、立場的にそんな気の毒な状態にさせられているにも拘らず、それでも至極深刻そうな表情でとても言い難そうに私に向かって切り出した。
「正確に言うと、マーガレットと私は異母兄妹なんだよ」
……………なるほど。
はぁ、と私は気の抜けた返事しか出来ないでいた。
ぶっちゃけ外見があんまり似てるとは言い難かったし、薄々そうなんじゃないかと肌で感じてたと言うか。
正直な気持ちはピンと来ないと言うだけであり、所謂王家だのお貴族様系の話では珍しくもないし、況してやこの世界ではヴィンセントさんとは、片親とはいえ物理的に兄妹ではあっても、元の世界では真っ赤な他人だった訳で、実感しろと言われても所詮無理な話ではあった。
私的にはただただ事実を聞いている感じと言うか ───
ところが、何故か私にその事実を告げたヴィンセントさんの方が滅茶苦茶ダメージを受けている様子だった。
「あ〜! やっぱりそのうっすい反応 ‼ だから私はこんな話したくなかったんだよーっ」
……えっ? だっ、駄目なの ⁉
寧ろそう言われてしまった事にショックを受けている私であった。
私が事実を聞いてショックを受ける方が駄目なのかと思い込んでいたので、四方や逆の反応を求められていたとは……。
「……ヴィン、そっちの方が逆に酷だろ、この状況で」
「───だね。そもそも元の世界じゃ兄妹じゃないんだから、うっすい反応されても仕方ないよね」
普段意見がほぼ合わない里和ちゃんとカイルの見解が珍しく一致するぐらい、今回の私の反応が間違ってはいなかった事に地味に救われたが、それはそれで何となく心中複雑な気分にもなっていた。
ところが何故か、高雅絢爛な美青年エルフだけは全然納得がいってない様子で、そんな二人に対して猛然と反論し始める。
「そんな事言われたって、私は真夜にまで私たちの前から居なくなられてしまったら……私はもうそれに堪えられないんだよ」
そのヴィンセントさんの言葉に、一斉に私に視線が集まった。
げ。
それに普通に私はたじろぐ。
『私を元の世界に戻してくれるとか───』
先ほど自分の放った言葉が脳内にリフレインする。
えっ……もしかして、事ここに至って私の責任とか言う ⁉
そこで私の背後の黒髪の青年が満を持したように口を開いた。
「真夜には本当に残酷な話だけど、元の世界に帰るのは無理だってリワが言ったばかりだろ。ヴィンの辛い気持ちも心配するのも判るが、真夜の気持ちも察してやんなよ……ヴィンなら判ってやれるんだろ?───それに、まだ話さなきゃならない事、あるんじゃないのか?」
かなり不意打ちなカイルの朴訥だが想像以上に優しい言葉に、思い切り私の気持ちは揺さぶられてしまっていた。
やめてよー……こんな場面で泣かす気?
しかしそんな黒髪の青年を見上げ、何故か金髪碧眼の美青年エルフは真顔でぽんと自分の膝を打ったかと思うと、
「───そうか! カイル、真夜と結婚しろ」
然も名案かのように言い出したのだった。
スパァーーーン!
すると業を煮やした黒髪の青年が背後からスリッパでヴィンセントさんの頭を叩いた。
「そうじゃないだろ!」
お、王族かつ上司……?
私が困惑したまま苦笑いしていると、観念したように私の兄になってしまった美青年エルフは漸く白状するのだった。
「いいだろ、それぐらい……お前だって───あ、いやいや、もう言わんから殴るな───って、そうそう、メグの母親は闇のエルフなんだよ」
その二人の戯れ合いのようなやり取りを見ながら、変に深刻な感じにならなくて良かった、と私はほっとしていた。
もしかしてこれも、存外カイルの気遣いなのかも知れないな、とも思う。
だが、この時の私はその話の重要さに全く気づいてはいなかったし、まだ理解もしてはいなかった。
昨晩寝ながら書いていたら寝落ちし、気づくとdeleteを押していて書いた半分程が消えておりました……しかしマメに下書き保存してた為、3分の2は無事でほっとしましたが……(悲しくて言葉にできない
また誤字脱字加筆修正すると思いますが、何とぞよしなに願います
【’24/09/27 誤字脱字加筆修正しました】