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ファルシマ・ストゥ【5】


「メグちん、お(ひさ)〜」


美女エルフの従者(ヴァレット)かつ使い魔の蘭丸(ランマル)さんが、にこにこしながら移動拠点まで私たちを迎えに来てくれた。


本日も里和ちゃんとはまた違った(さわ)やかなエレガントさが(ただよ)うスタイルで、オフホワイトのマトンスリーブにラッフルカラーで胸元にフリルのついたキャバリアブラウスに、細身で黒のタイトめのボトムに同色の三連バックルつき革のコルセットベルト、足元はヒール高めのクロスベルトつき白のレザーショートブーツという出で立ちだ。


その麗人(れいじん)と呼んで差し支えがないくらいの倒錯(とうさく)的な快美(かいび)さに、ついうっとりと見入ってしまう私であった。


「蘭丸さん、お久し振りです。無理言ってすみません」


私は今回の件でも鬼迷惑かけたであろうスレンダー美人に対し、今までの分も(ふく)めた意味でも深く頭を下げる。


そんな私の態度にぎょっとした様子で、蘭丸さんは焦ったように両手を前に突き出し(なだ)めるみたいに言葉を続けた。


「あー、やめてよ、そういうの! これは私の仕事でもあるんだから、そんな私みたいな使い魔に対してまで恐縮(きょうしゅく)しないで! メグちんなんかより里和(リワ)っこのが、ホントむちゃくちゃ従僕じゅうぼく使い荒いんだから───ねっ、カイルなら判るでしょ?」


と、私のうしろのひy……もとい、黒髪の青年に(はち)を回す。


そのカイルと同じ事言ってくれてるなぁ、と内心その優しさにくすっと笑ってしまう。


「……俺はリワの従者じゃないからな。でも、ランマルがリワのために骨を折りまくってるのは知ってる」


ところが、カイルは淡々とした調子で額面通(がくめんどおり)りの事実を述べるだけであった。



ピシィーーーンッ……!



途端(とたん)に空気が張りつめる音が私には聞こえてきた。


うっ……耳が痛い。


思わず耳を(ふさ)ぐ。


なっ、何、この訳の判らない緊迫感(きんぱくかん)


「………そうね。アンタは本来はヴィンセント様に(つか)える従者だものね───いや、今やメグちん専門の従者か───って、相っ変わらず可愛(めんこ)くない返事しかしない男だね、カイルは」


()しか蘭丸さんの背後から、ゆらっと濃い青紫色したオーラが立ち(のぼ)るのが見えた気がした。


それどころか、何故(なぜ)か黒髪の青年からも青黒いオーラがめらめらと燃え上がるように揺らめいていた。


えっ……何で─── ⁉


その今までになかった不穏過(ふおんす)ぎる空気に、私は慌てて二人の間に無理矢理に割って入る。


「あっ、あのっ、それで里和ちゃんはどこに───?」


(ちな)みに、銀次君がいつの間にか姿を消した───それも謎の老ゴブリンが消えたと発覚して間もなくの話である。


その話にも(から)んでると(おぼ)しき事柄(ことがら)なので、なるべく早く美女エルフに会って話しておきたかった訳で。


「……まだアールヴヘイムでヴィンセント様と右往左往してるよ」


私のそんな意図を()んでか、蘭丸さんはぎろりとカイルを()めつけてから、それでもいつもより低めの声音(こわね)でそう教えてくれた。


そ、そうだ、蘭丸さんもカイルも忙し過ぎて疲労が()まっててイライラしてるんだ───きっとそうに違いない!


とは言え何だか全く理解できぬまま、私は頑張って笑顔が引き()らないよう、明るく声を張って(しゃべ)り続ける。


「じゃ、早速里和ちゃんのところへ連れてってもらえます?」

「オッケー。じゃ、行こっかー」


そう言って蘭丸さんはふいっと黒髪の青年から視線を()らして私の手を取り、居間の中央に()いてあるペルシャ絨毯に似た柄の丸いカーペットの上へ歩いてゆく。


(ちな)みに、このカーペットは里和ちゃんが開発した魔法具で、()り目の糸ごとに違う魔法陣が浮かび上がるような仕組みになっており、居間にあるこれは転移用に(しつら)えてある。


発動条件の指輪とワンセットになっていて持ち運びもでき、ちゃっかり特許も取得して王侯貴族や金持ちなんかの特権階級者に高値でも売れているらしい。


「ほら、ヤシチも行くんでしょ? 来ないと置いてくよ!」


黙ってもついて来るカイルを丸無視し、蘭丸さんはいつもの調子に戻り私のネコ科の黒い使い魔に声を掛ける。


それまでソファーの陰でひっそりとしていた弥七(ヤシチ)は、それに溜め息をつきながら素直に(したが)い、私の(そば)にやって来てぼそりと()らす。


「……オレ()だよ、こんな険悪な雰囲気(ムード)の中で同行すんの───」


私は思わずよしよしと(ブラック)ジャガーの頭を()でてやると、仕方(しかた)なさそうな面持(おもも)ちでゴロゴロと軽く(のど)を鳴らしてくれていた。


「じゃ、行くよ!───転移(ライド)開始(・カノ) ‼ 」


蘭丸さんはそう宣言すると、続けて右手を上げて詠唱する。


するとカーペットから蛍光グリーンの魔法陣が浮かび上がり、その光が私たちを囲むように包み込んだ瞬間、その場から私たちの姿はかき消えていた。



また誤字脱字加筆修正すると思いますが、何とぞよしなに願います

早速挿入間違えして重複内容投稿してしまいました

読みづらくて申し訳ありません


【’24/08/29 エピソードタイトル変更】

話の中身とズレがあり過ぎだったので、思い切って変えました(元のタイトルは後ろにずらそうかと)

【’24/09/02 加筆修正】

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