表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/215

ファルシマ・ストゥ【2】


私が移動拠点で起こった思い出すのも(はばか)られる恐怖体験を仕方(しかた)なく説明し、当然のように黒髪の青年には黙っていて欲しいと金髪ふわふわウェイビーヘアの魔導師見習いの美少女に念を押していた矢先だった。



「おい、二人で何騒いでんだ?」



不意に背後から、絵に描いたように(うわさ)をすれば何とやら、な青年たちが姿を現した。


その緋色の髪の青年の不思議そうなハイバリトンの声に、思い切りびくっとしてしまった私は、もう一人その(かたわ)らに立っているであろう人物の顔を怖くて見られないでいた。


まさかライカちゃんと私の今してた話、聞いてないよ、ね……?


そんな私の青ざめた表情に気づいた向かいのソファーに座っていた魔導師見習いの美少女は、すっと私から視線を外し、私の背後の青年たちににこやかに声を掛ける。


「お帰りなさい、イアンさん、カイルさん。早かったですね」

「あー、オレたち武人は警護と力仕事ぐらいしかやる事ねーからな。このメグちゃんのお陰で、後片づけもほぼしなくて良くなってな。ホント助かったよ」


そんな(ほが)らかな声と共に、大きくて無骨(ぶこつ)(あった)かい(てのひら)が、私の頭をぽんぽんと軽く叩いてきた。


私は苦笑(にがわら)いしながら、そんな緋色の髪の青年の裏表のない言葉に思わずほんわかと心が軽くなる心地を味わっていた。


ホントいい人だなぁ、イアンさん───なのに里和ちゃんって、こんな素敵な人が好み(タイプ)じゃないんだから、困ったもんだよね。


私が地味にはにかみながらそんな緋色の髪の青年を見上げていると、視界の(はし)心做(こころな)しかかなり憮然(ぶぜん)とした表情の黒髪の青年がちらりと映った。


ゔっ……怒って、る───?


渦巻く怖さにますます振り向けないどころか声を掛けるきっかけすらも(つか)めないまま、私が(ひたい)にだらだらと脂汗をかき出した時だった。


再びライカちゃんがその微妙な空気感に多少おろおろしながらも、場を()()すように明るくイアンさんの話に乗ってくれていた。


「ですよね〜。真夜(メグ)さんのお陰で私たち術者連(じゅつしゃれん)も相当助けられました」


ライカちゃんの言う術者連とは、ミズガルズの各国にある魔術技能組合(ギルド)内の術者たちで結成されている魔術者団体連合だ。

ミズガルズに悪影響のある事象(じしょう)が発生した場合、国や人種、種族を越えて有事に対処する目的で結成されたらしい。


結局あの騒動からの経緯(いきさつ)を軽く説明すると、美女エルフの宣言通り、私は今回アールヴヘイムに集結したその術者連の(おも)だった面々に引き合わされ、アールヴヘイムで400年の眠りから目覚めたエルフ王弟の娘として散々(さんざん)見世物(みせもの)状態になった。


黙っていてもいずれはバレてしまう話ではあるし───と、言うより、里和ちゃんが(すで)(メグさん)(おとり)にしてワザと(うわさ)を流してしまっていたので、それを誤魔化(ごまか)すためだったんじゃないか、と内心思ったりしていた私であった。


とは言え、気づけばどんどんと退()()きならない事態に追い込まれていっている気がする。

これも美女エルフの私に対する復讐(ふくしゅう)の一環なのだろうか?


ただ、今回も特殊な転生者(?)である事は秘匿(ひとく)されたまま。


そう言えば───


そこでひとつの引っ掛かりを思い出す。


本来なら里和ちゃんに()こうと思っていた話なのだが、かと言ってここで不用意に皆に話しても良いものか。


私がそんな事に躊躇(ちゅうちょ)していると、魔導師見習いの美少女が更に気を(つか)ってか話題を変えてきた。


「それにしても、残念でしたね。他の術者の中に、サーシャさんの呪いのトルクを外せる方がいらっしゃらなくて……」


結局南極水道局で、他の術師たちも手掛かりらしき話はちらほらしてはくれたが、どの話も地味にあてどない伝説やお伽噺(とぎばなし)みたいなものばかりで、誰もサーシャの黒蛇のトルクの解呪(かいじゅ)方法は判らなかった。


まぁ、稀代(きたい)魔法使い(ドルイダス)である美女エルフに出来なかった事が、そんな簡単に他の術者達に出来るとは限らないから、仕方(しかた)ないっちゃー仕方ない話ではある。


それ(ゆえ)黒い火竜(ズメイ)たるサーシャは、首の黒蛇のトルクのせいで(しばら)くアールヴヘイムで軟禁される事と(あい)なっていた───これも里和ちゃんとヴィンセントさんが各方面に東奔西走(とうほんせいそう)してくれたお陰だ。


本来なら、私とサーシャはどんな罰を受けていてもおかしくはなかったのだから。


ただ美女エルフが、自分に下手に刃向(はむ)かえない真似をしてきてる権力者連中が多いだけだよ、などと怖いことを平気で言ってきたのがヤケに印象的だったのだが……。


「でね、真夜(メグ)さん。移動拠点(ここ)も今となっては完全に安全な場所とは言えなくなってしまったので、そろそろ変身魔法を覚えてもらおうかと、師匠と話してたんですよ」


毎度変なところで拘ったり引っ掛かったり、資料沼にハマったりしております

こんな調子ではありますが、何とぞよしなに願います


【’24/08/23 かなり加筆修正しました】

【’24/08/29 エピソードタイトル変更】

【’24/10/16 微修正しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ