アールヴヘイム【4】
私が再度悲鳴を上げながらカイル某に地面に降ろしてもらった所で、不意に緑の濃い芳気を纏った風が私達の周囲をざあっと吹き荒れ始める。
そんな話を聞いたからか、俄に辺りが騒がしくなりだしていた。
何だか空気感までもが光を浴びてキラキラと輝き出しているようだ。
うふふふふ………
あはははは……………!
うん、何かこんなお伽話、小さい頃読んだことある。
笑っちゃうぐらい鬼のように定石のアレが出てくるヤツ。
木漏れ日揺らめく木々の隙間から。
虫たちも舞い飛ぶ草花の陰から。
石を押し退けた土の中から。
煌めくそよ風の中から。
輝く光のハレーションの眩しさの中から。
気づけば続々とカラフルな妖精たちが、からかう様な笑い声と共に姿を現し始めた。
うわー………無茶苦茶メルヒェン。
可愛いのやらちょっと怖そうな外見の連中まで、続々と里和ちゃんが立っている小高い丘の方に集まってきている様に見える。
そしてその丘から淡いミルク色の不思議な光が、滲みだすかの如き光彩を放ちだしていた。
「ほんじゃ、香月化したメグとカイル君が仲良く戻って来たところで───」
そのあからさまな美女エルフのおちょくりの言葉に、私の眉はぴくっと痙攣する。
ったく、イチイチ引っ掛かる言い方だな!
どこをどう見たら仲良く見えるんだよ。
ほら、カイル某君が苦虫を噛み潰したような顔になってるし───って、まだ傍にいたのか!
気づくと緋色の髪のイアンさんがカイル某氏の右側に立っていて、ニヤニヤしながら軽く彼の黒髪の頭を小突いていた。
それを少しだけ背の低い黒髪の青年が睨み上げ、軽くその手を払い除ける。
何なんだ、この流れは。
流石にスーパーウルトラ鈍臭い私でも、いい加減カイル某と私以外の連中がどういう意図でそうしてるか、薄ぼんやりと気づいてはいた。
だからって、カイル某が中身のガラッと入れ替わった得体の知れない相手に簡単になびく訳がない。
つか、私がそんなの御免被る。
しかしそんな私の静かな憤悶を他所に、やけに明るい調子で里和ちゃんが高らかに宣言する。
「早速皆で踊ろうか! ヴィンさん、音楽よろです!」
───何ですと?
「はいよ!」
するとヴィンセントさんが待ってましたとばかりに返事をしたかと思うと、白の繻子に金糸で華腴な刺繍の施されたマントの中から、どこに仕舞っていたのかリュートを取り出し、雅なメロディの和音をかき鳴らした。
えぇえぇえ─── ⁉
「Are you guys ready ⁉ Let’s do it ‼」
私達を取り囲んでいた妖精たちも一気に歓声をあげる。
何、この俄コンサート会場は ⁉
私は開いた口が塞がらなかった。
英語は毎度クグるさんに助けてもらってますが、合ってるかどうかはイマイチ不安……
また地味に修正させて頂くかもです
明日出掛けますが吹雪かない事を祈って(去年はホワイトアウトで死ぬかと
【'23/12/12 微修正しました】
*色の名前、引用させて頂きました*
『カラーセラピーライフ』https://www.i-iro.com
【'24/01/08 10:41 微修正】
【’25/01/20 微修正】