アルフェマフトゥル【2】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回新たに話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
誰かが遠くで私を呼んでる声がする。
『マヨ……助けて、真夜…………』
ちょっと鼻にかかった甘めのテナーボイスが哀しげに語りかけてくる。
『………お願い……もうボク、誰も傷つけたくないよ………助けて……!』
この声は………?
───サーシャ!
×××××××××××
私が意識を戻した時には、2匹の使い魔以外、拠点には誰も居なくなっていた。
………?
軽く記憶が混乱していた。
確か、里和ちゃんに魔術士ファーマンの真の名を報告に───でも、それが違ってて………その上、なりゆきで悪魔を憑依させちゃって─── 予想通りに叱られて、それから………今、誰かが、私を呼んでた?
「真夜、目が覚めたか」
ふと声のした方に視線を移すと、私の使い魔たる黒ジャガーが若草色の楔石みたいな瞳に心なしか不安気な色を乗せ私を見つめていた。
「……弥七?」
その背後の寝室の出入り口からは大きなクリーム色の熊が、出入り口より大きなその巨体を詰まらせながら顔を覗かせる。
『おぉ、主、お目覚めになられたか』
しかし、その時の私はその事実を全く知らなかったので、自分の頭の中に直接響いてくるその聞き覚えのある声に当然のように絶句する。
とは言え、最近ではちょっとやそっとの事じゃ動じなくなってきていた私は、ついさっきまで自分の口から出ていたはずのその嗄れ声に、すぐその白っぽい熊の正体が判った。
「………その声は───レラジェ、だよね?」
『御名答。貴方様を謀った罰で、魔法使いリワにゲッシュを立てさせられてこの中に入れられてしまいまして』
よりによってちょっと変わった白熊さん(?)になってしまった訳だ。
どこかユニークな風貌のクリーム色っぽい毛並みの大きな熊が、この寝室に入れない様が何だか憐れっぽくもあり、それがとても滑稽に見えてしまい思わず笑いが漏れてしまう。
里和ちゃんがやりそうな事だけど、見た目から強そうな使い魔にしたかったのかな?
ところがそこで弥七が珍しく声を硬くしながら口を挟んできた。
「真夜、レラジェの件は後回しにしてもらえるか? それより今、大変な事が起こってるんだ」
え?
その黒い使い魔の妙に改まった言葉にどきりとする。
そう言えば───やけに静かだ……。
私は慌てて身を起こす。
しんと静まり返った室内に、人の気配は少しも感じられなかった。
いつもなら必ず誰かが傍にいてくれたはずなのに、可愛い魔導師見習いも、金髪さらさらロングヘアのお兄様も、緋色の髪の青年も、麗人 っぽい従者さんも、美女エルフも───何より、本来ならずっと私の近くにいるであろう黒髪の青年までもがそこにはいない。
一体何が起こっているのか……?
「大変な事って?」
その無気味な静けさに胸騒ぎを覚え、先刻の夢現な意識の中で聞いた気鬱な出来事を思い出していた。
弥七がかい摘んで説明する事には、私が眠ってる間にヴィンセントさんが慌ててやって来て、アールヴヘイムが黒い巨竜に襲撃され、魔物と呼ばれる連中も大量に雪崩れ込んで暴れているという。
お陰で現在アールヴヘイムは崩壊寸前まで追い込まれ、今は伝説の大魔導師でもあるエルフ王のアーロン様と稀代の魔法使いリワを筆頭に、ライカちゃんやこの世界中から集まってくれた魔法使いや魔術師達がどうにかアールヴヘイムの消滅を食い止めてくれていると言う事。
そしてカイルとイアンさん、ヴィンセントさんが狂ったように暴れ回る黒い竜を相手に今まさに戦っている、と──
あぁ、やっぱり───!
あれは夢じゃなかった。
「それって黒い巨竜?」
「そうだ」
そんな私の憂色の濃い様子に、弥七は困惑したような複雑そうな表情を見せる。
サーシャだ。
私の従魔の黒い巨竜が私に助けを求めてる……!
「……行かなきゃ」
私に何が出来るかなんて関係ない。
あの黒竜が私に来て欲しいと願っているのだ。
だったら何が何でも行く。
もうしない後悔はしたくないから。
それがただの独善であっても。
大好きなサーシャを助けに。
寝落ちしまくるので今回はこの辺で
最近こんな調子ですみません……
また加筆修正しまくると思いますが、何とぞよしなに願います
【’24/07/04 加筆修正しました】
因みにエピソードタイトルは古ノルド語で挫折し、ググる翻訳さん頼みでアイスランド語で『アールヴヘイム再び』と言う意味です……読みは耳コピなんで間違ってると思います(T_T)難し過ぎ
【’24/08/30 間違え訂正しました】