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2-Ex8. 一時的に危機が去ったので談笑を始めた(2/2)

約2,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 仔猫や仔犬たちが4人にお茶を持ってきた。彼女たちはお礼を言って、コップを片手に話をまだまだ続ける。


「ところで、なんで、あの人族まで既にハーレムに入っているんだ?」


「やっぱり、サラフェを許せないの?」


「うーん、分からない」


「分からない?」


 コイハの回答にリゥパは思わず首を傾げる。


「正直、不思議なんだが……、集落が攻撃を受けたけど、死者は出てなかったはずだし、そんなに嫌な気持ちになってないというか……」


「あ、僕もそんな感じだね。不思議だけど」


「なるほどな」


 ナジュミネはコイハとメイリの矛盾しているような複雑な感情の話に何となく合点がいった。


「というか、俺たちもまだハーレムに入ったわけじゃ……」


 コイハはなんだかんだでまだ踏ん切りがついていない。ただ、先ほどのムツキの優しい眼差しや呼びかけを彼女は忘れられない。


「まあ、女神様のお導きかしらね。ムッちゃんは全員の運命の相手ってことよね♪」


「リゥパはさっきからそれしか言ってないけど、よくよく考えたら、説明になってねぇからな……それ」


 コイハは少し呆れたようにしつつも満更でもなさそうだ。しかし、なぜ自身がそう思ってしまうのか。経験のなさからか、何か不思議な力が働いているからなのか、それはまだよく分かっていなかった。


 メイリはメイリで「運命の相手」という響きによって、乙女の顔になっていた。彼女はまだ見ぬ相手に既にその気になっている。


「素敵じゃん。もう僕もコイハも見初められちゃった? やったじゃん! だけど、さっきの人族もだなんて、僕たちのダーリンは節操ないんだね」


「だ、ダーリン?」


 コイハはメイリの唐突なダーリン呼びに目を丸くして彼女を見つめている。


「そうそう、呼び方を考えておかないと! 呼び捨ても憧れていたんだけど、やっぱり、前からパートナーの呼び方はダーリンがいいと思ったんだよね」


 メイリは笑顔で耳と尻尾がぴょこぴょこと動かす。


「ダーリンか。それもよいかもしれないな」


「ナジュミネ……その呼び方止めておきなさい……」


 ナジュミネが真剣に考え始めたので、リゥパは釘を刺す。


「そうか。しかし、メイリは気が早いな。旦那様を見てすらいないのだろう?」


 ナジュミネがそう聞くと、メイリは両目を瞑って少し難しそうな顔をする。


「うーん。そうなんだけど、コイハが好きになるんだから、僕もきっとダーリンのこと好きになるよ。食べ物の好みとか一緒なんだよね!」


「た、食べ物……」


 ナジュミネはコケる。


「それに、とても優しい感じがしたんだ」


「……そうか。それは間違いないな」


 メイリのその言葉に、ナジュミネは微笑ながら茶を少し口に含んだ。


「そう言えば、コイハはなんて呼ぶの?」


「え、あー、ムツキ……かな?」


 メイリがコイハに話を振ると、コイハはメイリから目をそらしながら答える。


「やっぱり、呼び捨てに憧れた感じ?」


「ん-、いや、違うけど……」


 コイハは顔をほんのりと赤くしている。彼女はどうも歯切れが悪い。ナジュミネとリゥパが不思議そうに見つめていると、メイリがポンと手を叩いた。


「そうじゃん、思い出した。昔聞いた時は違ったじゃん」


「あー、あれか……」


 コイハはやっぱり思い出されたか、みたいな恥ずかしそうな表情を隠しきれずに少しばかり俯き加減になる。


「え、何、何?」


「コイハにも憧れていた呼び名があるのか?」


 リゥパとナジュミネは興味津々である。


「は、……ハビー……」


「おー、獣人族や半獣人族は呼び方が洒落てるわね」


 コイハがそう言うと、リゥパは微笑ながら彼女たちの呼び方を肯定した。コイハが尻尾をぶんぶんと振りながら、顔を真っ赤にしているような俯き加減になる。


「えっと、獣人族や半獣人族は、パートナーをコロコロ変えざるを得ない種族もいるからか、全体の雰囲気として、なんとなーく、誰に使っても問題ないなー、って単語になっちゃうんだよね……」


「あー、なるほどね。エルフ族は一途で一度きりだから、名前や愛称で呼ぶのが普通かな」


 種族ごとの在り方が言葉に反映されているようだ。


「あははー。そういう意味でも呼び捨てって憧れちゃうけど、なんとなく回避しちゃうのかも」


「……待て。皆に先に言っておくが……妾は旦那様以外のパートナーを持たないし、旦那様と別れることなど絶対にないからな!」


「いや、誰もそんなこと思っていないわよ。むしろ、ムッちゃん好き好き大好きのナジュミネがそうなったら、こっちが心配になるわよ……」


 リゥパは、ナジュミネの心配をよそに、呆れたような顔で小さく溜め息を吐いた。


「しかし! ……妾が旦那様と使っているのを旦那様にそう思われないだろうか……心配だ……。しかし、今からムツキと呼ぶのは、それはそれでなんだか違うぞ……」


「そんなに変えたいなら、もういっそのこと、貴様、でいいんじゃない? 口調的に」


 リゥパが若干面倒くさそうに返すと、ナジュミネは衝撃を受けた表情になる。


「いや、それはあり得ないだろうに! 旦那様に貴様など……」


「出会ったときはなんて言っていたの?」


 メイリがナジュミネに訊ねると、ナジュミネは恥ずかしそうに答える。


「……そなた、だな」


「じゃあ、それでいいんじゃない?」


 リゥパは先ほどから興味を失っているのか、受け答えが適当になっている。


「いいわけあるか! そもそも、それなら旦那様を使い続ける方がいいではないか! むむむ。なんだかおもちゃにされている気分だ……」


 少しムッとするナジュミネをメイリとコイハがなだめている。


「そんなことはないから……それにしても、ダーリン、戻って来ないね? まだ何か音がしているし」


「まあ、そうね。でも、見に行くだけ邪魔になるから、私たちは大人しく待って、ここで話していた方がいいわ」


 リゥパもムツキのことが気にならないわけではないが、彼が解決できないことを自分たちが解決できるとは到底思わないのでそのような対応になる。


「朝食ができたニャ! はニャ? ご主人、まだ終わってニャいニャ? 珍しいニャ。仕方ニャい。みんニャ、先に食べてほしいニャ。熱々が一番ニャ。オイラは猫舌だから、熱々は無理だから、後でご主人と食べるニャ」


「いや、先にご飯まで食っちまうのかよ……」


「まあ、ただ待っていても仕方ニャいニャ。食べちゃってほしいニャ」


 料理を妖精たちとともに運んできたケットに促され、4人は先に食事を取ることになった。その間も談笑は続いていた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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