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1-8. 単なる力試しだと思ったら誓約付きの神前試合(ガチ)だった(1/4)

約2,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

「ユウ?」


「はいはい! 私、ユースアウィスが審判やります!」


 ムツキは張り切っているユウを見て嫌な予感がしていたが、その後すぐに彼女が審判に立候補すべく手を挙げた。


「小娘よ。そなたに審判など務まるのか?」


「もちろん、審判も神判も得意だよ!」


 ナジュミネがユウに向かってそう言うと、彼女は自信ありそうに言った。


「2つの違いが発音くらいしか分からぬが、そなたのその意気込みは買おう」


 ナジュミネはユウの神様ジョークに訳が分からないといった表情をするが、彼女が審判を務めることに了承した。


「いや、やると決めて……」


「ムツキ、やりなさい? いい?」


「……はい」


「よろしい」


 ユウはナジュミネさえ了承すれば、ムツキならどうとでもできると考えていた。彼は乗り気ではないものの、女神のワガママに付き合うことにした。ここで乗っておかないと後が怖いと彼は思っている。


「むむ。こんな年端もいかぬ少女に言い返せぬのは優しさか? それとも、弱さか?」


「ユースアウィス、はて、どこかで聞いたような」


 プロミネンスは聞き覚えのある単語に、昔の記憶も呼び起こそうとする。しかし、歳のせいか、中々思い出せないようである。


「改めて、審判は私、ユースアウィスが務めます! そして、決闘の勝敗には対価がつきもの。お互いに差し出すものを指定しなさい!」


「む……。雰囲気が変わった?」


 ユウの瞳が淡く光る。その異様な姿にナジュミネは気圧されつつも、先に宣言を始めた。


「……よかろう。妾、ナジュミネは負ければ、この身を全て差し出そう。この身を好きにするがいい」


「好きにするがいいと言うが、ナジュミネ、お主は伴侶を探しに来たんじゃないのか?」


「負けなければよいだけだ。それに、負けた上で自分の望むものを願うのはおかしいだろう」


「いいね! かっこいい!」


 ナジュミネが全てを差し出すと言った手前、ムツキもまた全てを差し出さざるを得なかった。


「分かった。俺、ムツキは負ければ、この身を全て差し出そう。小間使いにでも、何にでも好きに使ってくれ」


「ニャ、ニャッ?!」


 ケットが一瞬慌てるが、ムツキが最強であることを思い出し、静かに見守ることにした。


「両者の差し出すものが同等と、私、ユースアウィスが判断した。よって、この決闘を受理し、正式な神前試合とする! 互いの約束は破られないことを私が保証する!」


 ユウは決め顔で高らかに宣言した。


 周りで猫や犬がポフポフと拍手でユウを讃えている。まるで学芸会のセリフを噛まずに言えた子どもに送る拍手のようだ。


「あ、あぁ、ユースアウィス。思い出したぞ! 亡くなった創世神の名ではないか!」


「そうそう、創世の……って、えええええええええええええええええええええぇっ! 私、死んだことになってるの?!」


 プロミネンスの言葉に、決め顔だったユウの顔が驚きの表情に変わった。急に自分の死を告げられては仕方のないことだろう。


「……話がそっちに逸れそうだな」


 ムツキは長くなりそうな話だなと思いながら呟いた。


「うぐぐ……。それは後で聞くからね!」


 ユウは苦渋の決断とばかりにプロミネンスにそう言い放った。


「逸れなかったな。しかし、創世の女神か」


 ナジュミネは目の前の幼女が本当に女神ならムツキが言い返せないのも無理はないと理解する。


 その後、舞台は移った。神前試合の舞台は、世界樹の樹海からも、魔人や人間の領地からも離れた最果ての荒野と呼ばれるただただ広い空き地のような場所だった。


 ムツキはもちろん、ナジュミネやプロミネンスも知らない未開の地である。


「すごいのう。よくこんなところがあるもんじゃな」


 ユウは、ムツキ、ナジュミネ、プロミネンス、そして、ケットと愉快なモフモフ応援団たちをこの場に転送していた。


「ここは昔から大して何も生えなくてね。世界樹からも遠いから、結局、放置気味になっちゃってるんだよね。あはは……。でも、ここならムツキも存分に戦えると思うよ!」


「そうかもな。負けらんないしな」


「そうだよ! がんばってね!」


 ユウは嬉しそうに話す。ムツキはこの一連が彼女の仕業なのだろうな、と勘づくも自分には何もできないと判断し、諦めることにした。


「っと、そうは言っても、俺は、近接から遠距離、小さなものから大きなものまで、すべての攻撃をすべて返してしまうんだから、ナジュミネさんに勝ち目ないんじゃないか? 俺はラッキーだけどさ」


 ムツキはナジュミネやプロミネンスにも聞こえるようにユウに話しかけるが、ユウは問題ないといった仕草を返した。


「ちっちっちっ。神前試合では、そういうのも調整できるの。お互いに耐性や無効、自動反射はしない設定にしておいたよ!」


「それは、ご配慮どうもありがとう。果てしなくご都合主義だな……」


 ムツキは神の気まぐれに思わず呆れた。


「ほう。それでは、妾の炎耐性や魔法軽減もなくなっているということか」


 ナジュミネがユウに問う。


「もちろん。純粋に力と力のぶつかり合いだよ! 武器の使用も、魔法の使用も何でもあり。その方が力量差もはっきりして楽しいでしょ?」


 ナジュミネの質問にもユウは答える。これらの配慮は、ガチンコ勝負ならナジュミネも納得するだろうとユウが考えた結果である。


「当然、望むところだ」


「仕方ない。がんばるか」


 ナジュミネとムツキはゆっくりと伸びをする。軍服とビジネスカジュアル姿が真っ向から対峙する光景が広がっている。


「あ、今だけなら呪いも解除できるよ?」


「な、なんだって! 本当だ! 脱げる! 脱げるぞ! 服が爆散しないぞ!」


「ご主人がすごい喜んでいるニャ」


 ムツキはそう聞いて、上半身のシャツを全て脱いでみた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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