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1-6. 珍しく来客だと思ったらハーレム候補の魔王だった(2/3)

約1,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 魔人族の城下町の買い物の翌日。


 ムツキがいつものワイシャツにスラックスというビジネスカジュアルの服装で、ログハウスのロッキングチェアに揺られている。今日の彼は珍しく、魔人族が書いた『魔法の基礎』という教本を片手に持って勉強しているようだった。


「今日も平和で何よりだ」


「ニャー!」


 しばらくすると、ケットが猛ダッシュで走ってきた。何かあったのだろうか、とムツキが立ち上がる。


「ご主人。お客様ニャ!」


「……どうしてこうなった」


 ムツキは目の前の見知った老人に驚いている。さらに言えば、その老人は昨日と打って変わってまるで紅蓮のような真っ赤な魔法使いのローブと凛々しい顔つきでログハウスの前に立っている。


「やあ、旅人さん。またの機会に、と言ったじゃろ。それが今というわけじゃ」


 さらに、ムツキは老人の横にいる女性にも驚いている。炎ような赤い揺らめく髪に真紅に光る瞳を持つ美女、炎の魔王ナジュミネであった。


 彼女はその髪にも負けない鮮やかな全身紅蓮の軍服を身に纏っている。まさに炎の魔王と呼ぶに相応しい赤く美しい姿だった。


「しかし、なあ、まさか、ナジュミネさんと一緒に来ると思わないだろ」


「びっくりしたじゃろ?」


 老人は悪戯が成功した子どものような笑顔でムツキと話している。


「なんか、びっくりを越えたよ。本当に」


「まあ、今日はただの挨拶のつもりじゃよ。いずれ、ナジュミネの伴侶にふさわしいかどうか試させてもらうがの」


 一瞬、ムツキとケットの時間が止まった。


「ナジュミネさんの伴侶?! 俺が?」

「ニャッ!」


 ムツキは老人の急な話にドキドキし始めた。


「お互いに自己紹介がまだじゃったな。わしはプロミネンス。呼び方はプロミネンスでよいよ。炎の魔王ナジュミネの従者にして、教師である赤の賢人もやっておる。まあ、偉そうな肩書じゃが、この通りのただのスケベじじいじゃよ」


 そう言って、プロミネンスはナジュミネの尻を触ろうとするが、彼女にピシャリとはたかれてしまう。


「わざわざ自己紹介で妾にセクハラはよさぬか。妾の名はナジュミネ。魔人族を統べる10人の魔王の1人で炎の魔王だ。妾より弱い者に嫁ぐつもりは毛頭ないが、中々強そうだな」


 ナジュミネはそう言って、指先から炎を出して見せた。彼女はあまり乗り気ではないのか、笑顔もなくむすっとした表情をしている。


「俺はムツキです。ここでスローライフを送らんとするただの人です。あと、申し訳ないですけど、近くに森があるし、この家自体も木でできているから、ここでの火遊びは厳禁です」


「む……」


 ムツキが自己紹介と注意を終えた後、ナジュミネが不満げに口を開こうとするが、その前にケットが颯爽と鼻を鳴らしながら飛び出た。


「オイラはケットニャ。ケットと呼んでほしいニャ。ご主人であるムツキ様のお世話係筆頭だニャ」


「おぉ。そういえば、気にしておらなんだが、猫が喋っておる。……もしや、世界樹の樹海、大森林に棲む妖精を統べる妖精王ケット・シーかな。わしは初めて見るが、中々キュートな猫じゃな」


「…………」


 プロミネンスの言葉に、ケットは少し照れたような仕草をする。しかし、途中で話に入ってきたケットにナジュミネは少し邪魔そうな表情をする。


「ところで、ケット。どうして、彼らは客人扱いなんだ? いつもなら、敵襲とばかりに駆けてくるじゃないか」


「……二人しかいニャかったし、敵意も感じニャかったし、あと、その、プロミネンスからお土産もいっぱいもらったニャ」


 ムツキが遠くを【クレアヴォイアンス】で見てみると、そこかしこにおやつを食べている仔猫や仔犬、仔ウサギたちが見えた。


 そして、ケットの手には、またたびがチラッと見える。


「まさか、買収されたのか……」


「いや、これは、いや……面目ニャいニャ! でも、敵意がニャいのは確かだニャ!」


 ムツキはわざとジト目でケットを見ると、ケットはあせあせして弁解を始めた。彼とプロミネンスはその姿にすっかりと和んでしまった。


「はっはっは、人様の家に訪問するのだから、手土産は当然じゃよ」


「ええい、話が進まぬ! 妾が和みに来たわけではないわ! 単刀直入に問おう。そなたは中々強いようだが、樹海の偏屈魔王か?」


「樹海の……偏屈魔王? 異端の魔王じゃなくて?」


 ナジュミネの口から出た聞き慣れない単語に、ムツキは怪訝そうな顔を隠さなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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