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1-49. パーティーがスムーズだと思ったらカオスになって楽しかった(4/4)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

「旦那様!」


「おわっ……危ないぞ! なにをして……ナジュ?」


 ナジュミネがムツキの方へと真っ直ぐ勢いよく近付いていき、気にせずにダイブした。彼は少しきつめに非難の声を上げるが、特に返事のない彼女を見て少し不安になる。


「旦那様、旦那様、だ・ん・な・さ・ま。きゃー、旦那様だー」


「あー、もしかして?」


 ナジュミネの赤らんだ顔、とろんとした目つきと少し重たげなまぶた、色っぽい声色と艶っぽい仕草、そして、支離滅裂な連呼を見て、ムツキは容易に察した。彼女は酔っている。しかも割と飲んだ後のようだ、と。


「ムッちゃん、ごめんね?」


「ユウ、リゥパ……。ナジュに飲ませるなって言ったはずだぞ?」


 ムツキはユウとリゥパをジト目で見やる。2人はナジュミネの様子を見て、少し焦り気味だった。


「だから、ごめんって。ちょっと話が盛り上がって、ちょっとした悪戯心が、ね? まさか一口飲んだ後、あんなに押しが強くなるなんて思わなくて……すごい勢いで飲むし」


「どこかで止めてくれ……」


「正直、目が怖くて……」


「私もちょっと舐めていたわ……」


「ユウが怖がったら、誰も止められないじゃないか……」


 しかし、ムツキも止められなかったことがあるので、それ以上強く言うこともできなかった。ナジュミネは彼に抱き着いたまま、その胸板に頬ずりをして甘えている。


「旦那様、好き、好き。愛してる。旦那様は妾のことを愛しておるか?」


「あぁ、愛しているよ」


「よかった! 嬉しい!」


 ナジュミネがムツキのことをぎゅっと抱きしめて離さない。引き剥がそうものなら何が起こるか分からないので誰も手が出せない。


「すごい変わりっぷりね。いつも我慢しているのかもね」


「我慢、か……」


 ムツキは申し訳なさそうに呟き、ナジュミネの頭を優しく撫でようとする。その瞬間、彼女はガバッと顔を彼の方へ向けて満面の笑みで見ている。


「旦那様!」


「どうした?」


「猫耳にゃ!」


「すごいリアルだな」


 ナジュミネはどこからか赤い色の猫耳を取り出して付けた。その猫耳は彼女の頭に付いた途端に本物らしい動きをするのだった。


「おもちゃだけど、神の力で作ったから。自動で語尾も変わるわ」


 しれっとユウが猫耳の説明をする。それが神造物だとは誰も思わないだろう。


「創造の力を職権乱用したのか」


「なんなら本物にできるわよ? ちょっと時間をかければ、ナジュみんを副作用なく鬼族+半獣人族みたいな感じに、ね。獣人になるとちょっと負担が大きいけど、半獣人は人族や魔人族と獣人族との間のようなものだからね」


 ユウはまるでゲームのキャラメイクのような気軽さでムツキにそう伝える。


「そんな簡単に新しい種族を作らないでくれ」


「私たち全員、獣人や半獣人になって、モフモフになったら?」


「……………………俺の性癖を揺さぶらないでくれ」


「ムッちゃんがすごく葛藤したのが、間の空き方で分かるわね……」


 ムツキの長い葛藤を見て、リゥパは自分も試してみようかと思ってしまう。しかし、正直、ナジュミネほど吹っ切れるかは分からなかった。お酒の力を借りようにも、彼女はナジュミネと違い、割とザルだった。


「旦那様!」


「どうした?」


「今日はあ、旦那様は妾とユウとリゥパと一緒に寝るにゃ!」


「結局、そうなるのか」


 上目遣いに潤んだ瞳、ナジュミネのこのお願いを断れるほど、ムツキは野暮ではなかったが、なんだか腑に落ちない気もしていた。


「なんなら、私やリゥぱんにもつけてあげるわよ? 動物耳。私なんて、本当に自由だからね。リアルうさぎちゃんになれるわよ? リゥぱんはおもちゃの犬耳にしとく? 今なら全員尻尾もつけられちゃうわよ? それでも、しないの?」


 猫耳のナジュミネ、犬耳のリゥパ、ウサ耳のユウ、彼女たちの一糸纏わぬ姿をムツキが想像する。彼はいろいろと限界が来ていた。


「にゃ。旦那様のが……」


「ナジュ」


「にゃ?」


「ドント、フィール、シンク、アンド、ノティス。感じるな、考えるな、気付くな」


 ムツキのいつになく低い声が部屋に響く。少しピリッとした感覚に、3人娘だけでなく、妖精たちまで少し震えている。


「……承知にゃ」


「……それと、3人ともパーティーが終わったらちゃんと来なよ? 俺をあまりにもからかったらどうなるか、この際だからじっくりと教えてあげるよ」


 ムツキの笑顔に3人娘はゾクッとする。後悔先に立たず。彼女たちは彼の本能を本気にさせてしまった。逆らえる雰囲気は一切ない。


「あ、これはマズいかも……」


「からかいすぎちゃったかな……」


「にゃー……」


「じゃ、じゃあ、オイラたちは後片付けをするから、4人でごゆっくりニャー」


「ニャー」

「ワン」

「プゥ」


 ケットのセリフとともに妖精たちは一斉に、残せるものは明日の朝食に回し、残せないご飯を平らげて、後片付けを始める。


「じゃあ、すぐ行けそうだな。さあ、3人とも行こうか?」


 ムツキは無言で逆らわない3人を連れて2階へと消えていった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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