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1-4. ただの幼女だと思っていたら女神様だった(2/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキは少し虚空を眺めた後に肯いた。


「……それは正直、魅力的だ」


 健全な男性なら仕方ない。


「私だけじゃ物足りないでしょ? 英雄、色を好むって言うし」


「え、あ、いや、ユウだけでも十分だよ」


 ユウの意地悪な質問に、ムツキは真っ直ぐに彼女を見つめて答える。彼女は一瞬ときめくが、再び意地悪な笑みをこぼす。


「本当に? 絶対に目移りしない? 女神の私に嘘をついてもいいのかなー? 誰かといずれ結婚する話もしていたような?」


「あー、ごめん。目移りしない自信はないし、たしかにハーレムの予定がある……」


「ふふん。素直でよろしい。ムツキはかわいいなー」


 ユウはムツキの素直な気持ちを彼の口から聞けて満面の笑みを浮かべる。


「大人の男に可愛いはよしてくれ」


「私にとって、ムツキはいつだって愛でる存在だからね」


 ムツキは少しだけ気恥ずかしいといった顔になる。


「どニャたかが嫁ぎに来られても、オイラ達を傍に置いてくださいニャー」


 ケットが慌てたように、ムツキの近くに寄って、小さな2本の前足で彼の膝を揺すりながら子どものように懇願した。


「かわいいなあ! 心配するな。みんなのようなかわいい妖精と共同生活可能な奥さんだけ希望する!」


 ムツキは強い意志を持って断言した。彼の鋼のような意志の強さに、周りの妖精たちは歓喜の踊りを踊り始めた。いつだって、このログハウスの中は楽しそうな雰囲気に満ちている。


「あはは。奥さんがアレルギー持ちじゃないといいね。さて、と、ごちそうさまでした。もっとお話をしたいところだけど、もう部屋に戻るね」


 ユウはそう言うと、椅子から降りた。


「ワン」


 クーの代行として、セントバーナードがすかさずやってくる。


「まだ仕事か? 無理はしないようにな」


「それなら、後でストレス発散させてもらおうかな? 夜の運動でね」


「その姿のユウでは遠慮したい。どう見ても俺が犯罪者だ」


「あはっ♪」


 ユウは手をひらひら動かしている。彼女はそんなことは気にするなとでも言いたげな仕草だが、ムツキは絵面がどうしても危ういと思ってしまう。


「ユウ様。歯磨きしてから戻ってくださいニャ」


 ケットは犬に指示をした。指示を受けた犬は洗面所に向かって行く。


「はーい」


 ユウは元気よく返事をした。セントバーナードはゆっくりと洗面所に向かう。


「さて、俺もそろそろ食べ終わるな。歯磨きして、おモフしてから寝るとするか」


 ユウが歯磨きをしてもらっている隣で、ムツキは嬉しそうにかなり丁寧に歯磨きをしていた。彼ができる自分のことには歯磨きも含まれていたからである。


 彼女は歯磨きの後、部屋に戻った。


「むふふー♪」


 ユウの部屋はかなり広い。


 ある一角にはムツキを模したユウお手製のぬいぐるみやフィギュアまでが取り揃えられており、すぐに隠せる程度に並べてあった。そのムツキグッズの中には、この世界ではまだ発明されていない写真まで飾ってあるのだから、神としての職権乱用もいいところである。


「あぁ……いい!」


 ユウはぬいぐるみを手に取り、ベッドでぎゅっと抱きしめながらゴロゴロし始めた。姿が幼女のため、はた目にはとても愛らしく似合っているが、年齢はこの世界よりも上である。


「むふー。ムツキは今日も素敵だったー♪ ずっと眺めてたーい。一生添い寝して過ごしてたい!」


 ユウにとって、ムツキは超ドストライクの存在だった。


 当然である。


 容姿はユウ自身で創造したのだから、彼女好みの美形にしている。ただし、魂、つまり、性格については、いろいろと探し回った末に異世界の神に無理を言って、ひょんなことで死んでしまったムツキの魂をこちらの世界に呼びよせたのだ。


 よって、容姿、性格、能力、完全にユウ好みである。


「かっこいいし、強いし、何より、性格が優しくて超いい♪ 素敵、素敵、素敵!」


 しばらく身悶えた後、何かスッキリしたのか、ユウは目を閉じて、ゆっくりと呟き始めた。


「世界征服は言い過ぎだけれど、このままじゃ、ムツキがこの世界を嫌になっちゃうかもしれない」


 ユウはムツキが絶望する顔を思い浮かべた。


 一度だけ、様々な呪いの話をした際のムツキの絶望した顔を見た時、ユウは自分が世界とともに終わるような感覚に陥ってしまった。


 彼女としては、少し困るかな? くらいの気持ちだったから、彼の表情に相当衝撃を受けたようだ。


「うわああぁっ!」


「どうしました! 何か、ありましたか?!」


 少し強めのノックの音とともに、アルの高めの声が扉の外からユウに向けられる。


「ごめん! 何でもない! ベッドから落ちそうになっただけ!」


「そうでしたか。安心しました。お気を付けください」


 アルはそう言って、すっと離れていった。


「はーい。ありがとう」


 ユウは少し呼吸を整えてから、小さな声で慌て始めた。


「絶望されるのは……それは困る! すっごく困るから、もう少し調整をがんばらないと! ムツキのハーレムも探さないといけないし!」


 どうやらユウには独占欲がないのか、もしくは、ムツキのハーレム願望を知っているので、それを叶えたい気持ちの方が勝るのか、いずれにしても美女や美少女を彼に与えたいようだ。


「そうだ。たしか、魔王の中に綺麗な女性がいた気がする! 人族側にもムツキの好きそうな女の子がいた気がする! ムツキにちょっと会わせてみようかな。うーん。あ、ここら辺なんて、良さそう。この中だと誰がいいかな」


 ユウの呟きは何やらおかしな方向へ向かっているようにも聞こえるが、これを否定してくれる者は誰もおらず、いたとしても止められる者はいなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでいてとってもほのぼのします…。 心が温まる〜!
[一言] 初めましてTwitterから来ました! なにやら面白い感じの物語ですね( *´艸`) お気に入り登録して本日はおいとましますm(__)m また、後日、改めて読みにきますね! では、内…
[良い点] ユウもムツキにメロメロですね。 モフモフにハーレム。 それが実現されたら最高ですね♪
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