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5-7. 雪合戦は遊びよりも本気で(3/4)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキは雪で建てた高台に立つアニミダックの方を向いた。


「アニミダック! サラフェとメイリは!?」


「安心しろ。俺の触手が追っている。奴らの作戦みたいでこそこそと隠れて仕組んでいるぜ? まあ、ルールの範囲内だから違反は取ってないけどな。ちなみに、奴らの攻撃はもう始まっていてポイントもがっつり稼いでいるぞ」


 全てを知っているアニミダックは興味深いといった表情でニヤニヤとしながら、顎に手を掛けて戦場全体を眺めていた。


「え、攻撃してポイントも稼いでいる?」


「メイリの奇抜なアイデアが見られそうだな」


 ムツキとナジュミネは今後の展開を予想しながら眺めることにした。


「リゥパさん、待ってください」


「キルバギリー、どうしたの?」


「ずっと、サラフェとメイリさんの姿が見えません」


 ムツキたちのやり取りと同時刻、キルバギリーが同様にそのことに気付いたようでリゥパに声を掛ける。


 リゥパもまた、そのことにハッとして気付き、辺りを見回す。仮にサラフェとメイリが最初のポジションから動いていなかったとしても、リゥパたちは戦場を駆け回っていたのだから全く見ないというのもおかしい話だと思い始めた。


「ユウよ、サラフェとメイリの姿が見えぬ」


「え? あ、たしかに、サラべえとメイりん師匠がいない!?」


 キルバギリーの声が聞こえたミクズもまた同様に周りを見回してから、ユウに声を掛ける。ユウが周りを警戒していると、どこからともなく雪玉が彼女の方へと飛んでくる。


「あたっ! え!? 雪玉が当たった!? あれ? 誰もいない? ミクずん当てた?」


「なわけないのじゃ! マズいのじゃ! 黒狸の術中か!?」


 ミクズは【狐火】の分身があるにも関わらず、的確にユウの本物に当てられていることに違和感を覚える。

化かし合い、騙し合いは見破り合いでもある。メイリの目が既に分身を見破っているとすると、ミクズはメイリの作戦を見破らなければ勝てないのだ。


「いたっ! え? どこ? ……ん?」


 ユウが再び当てられて周りを見渡すと、メイリの狸耳がパタパタしながら地面から生えていることに気付く。彼女に気付かせたメイリがひょっこりと地面から顔を出す。


「へへーん! バレちゃった? ここだよー?」


「え!? 地面の中を潜っているの!?」


 ズポッという音とともにメイリの姿がいなくなり、ユウがその場所に駆け寄るとただの雪の地面があるばかりだった。


「リゥパさん! 後ろ! サラフェが!」


「え、あたたたたたっ!」


 キルバギリーが雪玉を撃たれる前にサラフェの存在に気付くも、油断していたリゥパが雪玉の連射を受けてしまう。


「大丈夫ですか!?」


「捕まえるわよ! あれ? もういな……何これ……氷? 水たまりじゃないわよね……ていっ! あ! 穴!?」


 リゥパがサラフェのいた場所を見ると、雪ではなく、人ひとりがその上に立てるほどの大きさの凍った水たまりのようなものがある。ふと気付いたリゥパがすかさず氷を砕くと、目の前に人ひとりが入れるような穴があった。


「リゥパ、キルバギリー、一時停戦じゃ! あたっ! まったく、モグラのようじゃな! 地下に戦場の端から端まで地下通路を使っておるのじゃ」


「それじゃ、中で迎撃すればいいじゃない!」


「たしかに!」


「あ、リゥパ、ユウ、待つのじゃ! ええい! それこそ黒狸の罠なのじゃ」


 メイリとサラフェが地下にいる。今までのお互いの攻撃の中に彼女たちの攻撃も含まれていたら、無傷の彼女たちが勝つ可能性は限りなく高い。


 それを阻止すべく、ユウとリゥパは居ても立っても居られない様子で穴の中から地下へと入っていく。ミクズの予想通り、それが罠とも知らずに。


「あ、サラフェ! 待て!」


「待って! リゥぱん! 何か、おかしい!」


「うっ! え? これ……氷の壁が鏡みたいに?」


 ユウとリゥパはくねくねした道を走るサラフェの影を追いかけてきたはずが、いつの間にか氷の壁で覆われた袋小路に辿り着いていた。


「2名様、極寒地獄へご案内ですよ」


 サラフェの声に反応し、リゥパとユウが後ろを振り向くと、追いかけていたはずのサラフェがいつの間にか袋小路の出入り口の方に立っていた。


「ひっ! 氷の壁で閉じ込められて……しまった! 雪玉がないわ!」


「こんなの炎のまほ」


 ユウが氷の壁を炎魔法で溶かそうと口を開くと、メイリがどこからか現れた。


「ふふっ♪ させないよー? 温かいマフラーでお口を塞ぎましょうねー♪」


「むごっ!」


 直接攻撃は禁止されている。


 動けなくなるような拘束ももちろん禁止されている。


 しかし、魔法を使えなくするために口を塞ぐ程度は禁止されていなかった。それはメイリがみんなの前で確認済みである。


「では、覚悟はいいですね?」


 メイリがサッとどこかへ逃げる。


 サラフェは笑う。彼女の後ろには大量の雪玉が準備されていた。


「いやああああっ!」

「むぐうううううっ!」


 リゥパとユウは大量の雪玉に埋もれて、大事には至らないもののしばらく動けなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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