5-3. 始まりは忙しいよりもゆっくりで(3/3)
約2,500字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
ムツキが階段の方を振り向いて、2人の女の子に声を掛ける。
「あ、リゥパ、サラフェ、おはよう」
「おはよう、みんな」
そう返すのはリゥパだ。
彼女は、白い肌と長く尖った耳が特徴的な見目の美しい森人とも言われる妖精族の一種エルフであり、若干スレンダーな体型で、優しそうな丸みを帯びた目の中にある瞳の色や髪の色が淡い緑色をしており、髪がショートボブで短く綺麗にまとめられている。
彼女は薄緑色をした膝上丈で七分袖のワンピースタイプのパジャマを着ており、パジャマから見える白い手足が色っぽい。また、両手首に身に着けている琥珀色の腕輪はエルフの姫の証である。
「おはようございます、みなさん」
リゥパに続いて挨拶をしたのは、サラフェという元・水の勇者の人族の女の子である。
彼女は着せ替え人形が動き出しているかのような可愛らしい顔をしており、透き通るような青い髪を両サイドにまとめているツインテール姿だ。
彼女の垂れ目がちな目の中にある瞳の色がその髪の色と同様に綺麗な青色で、肌は健康的な褐色であり、体型がとてもとてもスレンダーで真っ直ぐスラっとしている。
「で、ムッちゃんは嫌なの?」
リゥパがムツキの首に両手を絡めて、妖艶な視線で彼を見つめつつ、耳元で囁くように問いかける。
ムツキは首を動かさずにゆっくりと口を開く。
「嫌じゃないです……」
「ふーん? じゃあ、許してもらって、どうしたかったのかしら?」
リゥパの問いかけが続く。
ムツキはこの世界で最強であるものの、彼の優しさ故か、ハーレムの女の子たちのコントロールが巧みなのか、彼女たちに強く出られないことがしばしばある。ただし、彼の機嫌を極端に損ねると彼女たちでも手が付けられなくなるため、一方的でバランスが崩壊しているというところまでは至っていない。
「いえ、ナジュが許してもらっていたからその流れで言っただけです……」
しょんぼりとするムツキを見て、サラフェは小さな溜め息を吐いた後に助け舟を出すことにした。
「なるほど。では、ムツキさんは罰として言い渡されたもの自体は不服ではなく、単純に許してほしかった、と。もしくは、皆さんと二人きりで過ごすということを罰にすることが嫌ということですね?」
「! そういうことだ。サラフェが俺の言いたいことを言ってくれた。サラフェをぎゅっと抱きしめたい気分だ」
ムツキの表情がパっと明るくなり、無意識に魅力を発揮してしまったことで、周りの女の子たちは少し顔を赤らめつつも知られたくないために難しい表情をする。特にサラフェは素直になれないことが多いため、彼の申し出に首を横に振った。
「遠慮します。人前でしたくないです」
「人前じゃなきゃするのですね?」
「むぐっ……」
キルバギリーの冷静なツッコミにサラフェは返しきれずに黙ってしまう。
「サラフェったら、ずいぶんムッちゃんに甘くなったわね……」
「べ、別にサラフェは甘くなったつもりはありませんけど、まあ、あのままではムツキさんが少しかわいそうに思っただけです」
「まあ、たしかにそうよね。私もイジワルし過ぎたかも。これ以上はムッちゃんが拗ねちゃうものね?」
「そうだぞ。拗ねちゃうぞ」
「ぷふっ……いや、旦那様、そこは否定しないと……ふふっ、おかしいな」
ここは笑える方向に舵取りをした方がいいと判断したムツキはリゥパの冗談交じりの問いかけにそれ以上の冗談を被せてきた。
周りの女の子たちは、笑うなり苦笑するなりしながらもムツキの周りから離れようとせずに話しかけようとする。
すると、さらに階段の方から足音がする。そう、残りの2人がやってきたのだ。
「おはよう、ハビー、みんな」
ハスキーボイスで挨拶をしてきたのは白狐の獣人族のコイハだ。
白狐とは白銀のキツネのことであり、獣人とは動物がヒト型に近付いて2足歩行したような姿だとイメージすれば早い。
彼女は白銀の毛並みが美しく、すっと伸びたマズルや尖った耳、ムツキ同様の切れ長の目に茶色の瞳、ふさふさの尻尾と高い身長が特徴的な美しい白狐である。
「おはよう、ムツキ、みんな」
最後に登場したのがムツキの最初のパートナーであり、創造神にして唯一神である女神ユースアウィス、普段、ユウと呼ばれる幼女である。
彼女は白いナイトキャップに薄青色の寝間着姿だった。背中が隠れるくらいの長い金髪に透き通るような白い肌をしていて、ぱっちりなお目目の中には綺麗な青い瞳がその存在感を主張していた。お人形さんと呼ばれても遜色ないほど、理想的で綺麗な姿である。
「コイハ、ユウ、おはよう。ユウがこんなに早起きは珍しいな」
「まあね。というか、ムツキがワクワクし過ぎて魔力が高まっていて、何となく興奮気味というか、テンションが高めというか、私だけじゃなくてみんな、なんだかんだで眠りが浅いと思うよ?」
ムツキが周りを見渡すと、頷きはせずとも全員の表情がユウの言葉に同意をしているようだった。
彼は申し訳なさそうに頬をポリポリとかく。
「え……あ……そうなのか。ごめん」
「ハビー、俺は気にしていないぞ」
「そうそう、僕も気にしてないよ! ダーリンが楽しそうな顔を見るのは好きだから」
「あ、メイりん師匠! 今の言葉、私が言いたかった!」
「ふふん。こういうのは早い者勝ちだよ♪ ダーリンの膝の上もね!」
「え、それも!? ズルい! 私も!」
「お、おいおい……」
ムツキの膝の上でメイリとユウが何とか乗ろうと押し合い圧し合いの様相を呈してきた。
「ユウ、メイリ、2人とも、旦那様の上で争うな。メイリの方が先だったろう?」
ナジュミネに諭され、渋々ムツキの上から降りるユウだが、勝ち誇ったようなメイリの笑みにカチンときたのか、頬を最大限に膨らませて唸り始める。
「むぅ……むー……むーっ! こうなったら、ムツキが楽しみにしていた雪合戦でムツキ争奪戦をするよ!」
ユウが宙に浮きながら、高らかにそう宣言した。
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