4-Ex20. ご無沙汰だからしたくなっていた
約2,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
ムツキはお風呂の後、なんだかそわそわしていた。
正確にはムラムラしていた。
大人に戻って、キルバギリーも戻ってきたことで安堵していたところ、子どもだったときに自然と収まっていた欲求が大人に戻った途端に一気に膨張していたのだ。
「マズいな……」
ムツキはリビングのソファで、マンチカンのような姿の仔猫とチワワのような小型犬を撫で回したり鳴き声に癒されたり、彼がおモフと呼んでいる行為をしながら、至極真面目そうな顔をして欲求不満をどうにかしないと考えている。
「今夜はおそらく……」
彼の欲求不満を少人数で解消しようとするとやり過ぎる可能性があった。それに彼の記憶が正しければ、当番制の夜のお供は、順当だとリゥパとサラフェとキルバギリーである。
サラフェからはまだ肌を許されていないから添い寝だけで、リゥパは先日お仕置きをしたからあまり無理をさせるのもと思い、キルバギリーもなんだかんだ疲れているだろうと思うと、この3人を相手にやり過ぎることは非常にまずいと思い始めていた。
特にサラフェに手を出してしまえば、今まで時間を掛けてようやく築いてきた信頼が崩れる可能性もあると彼は大いに悩んでいる。
「しかしなあ……」
かといって、欲求不満を抑えられるわけもなく、とはいえ、だから全員と寝たいなどという本能を剥き出しにした話もしたくなかった。周りの誰も理解ができそうにない変なかっこつけが、ムツキの頭の中でぐるぐると巡っていたのだ。
「あの、ムツキさん」
「おわっ!」
自分の考えに耽っていたムツキの隣にいつの間にか、サラフェが座っていてそっと彼に声を掛けた。
ムツキは突然の声掛けに驚きの声を上げつつ目を白黒させながら、サラフェの方を見て今しがたの悩みの呟きを聞かれていないかと心配になった。
「あっ、急に声を掛けてすみません。ちょっと、いいですか?」
「あぁ、サラフェ、驚いてごめんな。いいぞ、何かあったのか?」
サラフェはムツキの言葉の後に言葉を繋げようとするが、もじもじとして中々切り出せなかった。
しばらくして、落ち着き始めた彼女がゆっくりと口を開く。
「その、あの、とても申し上げにくいことなのですが……今夜は全員と相手してくれないでしょうか?」
「……えっ?」
ムツキはまさかのサラフェの言葉に素っ頓狂な声を上げてしまうも、頭の中で渡りに船という言葉を思い出す。
「あ、いや、いろいろあって疲れているところに、とても申し訳ないと思っているのですが……サラフェはまだちょっと恥ずかしくて肌を重ねられそうにないですし……全員と話したところ、皆さんも久々にムツキさんと一緒に寝たいということなので、その、今夜は……」
サラフェは褐色肌を真っ赤にしながら、青い瞳をうるうると潤ませてムツキを見つめている。
「あ……」
ムツキはサラフェにこのようなことを提案させるくらいなら、変なかっこつけなどせずに自分から皆に提案すればよかったと後悔した。
彼は隣にいる彼女をそっと抱き寄せて、そのまま彼女の頭を撫で始める。最初はビクッと驚いた彼女だが、次第に顔を彼の身体に埋めてもたれかかるようになる。
「サラフェ……言いにくいことをありがとうな。俺でよければ」
「ありがとうございます」
ムツキとサラフェがよい雰囲気になっている頃、彼女以外の女の子たち、ユウ、ナジュミネ、リゥパ、キルバギリー、コイハ、メイリがじーっと少し離れた所から2人を見ていた。
「サラフェ、成功したわね。今夜はすごいことになりそうね」
「マスターも嬉しそうですね」
「ダーリン、悶々としているのが分かりやすかったけど、たぶん、いろいろと考えて、言い出せなかったんだろうね」
「ハビーはモフモフだと強引なくせに、なんだかんだでそういうところでは言えないタイプみたいだからな」
「そういう意味だと、サラべえは助かったと思うよね。初めてのサラべえに、ムツキの本気は無理だと思う。きっと泣いちゃう」
「そうだな。しかし、暴走したケダモノな旦那様だと、サラフェの制止を聞いてくれるかどうかも怪しいからな。まあ、リゥパとキルバギリーで食い止められればいいが」
「それなら、いっそのこと、サラフェを外した方がいいわね。ケダモノムッちゃんは目の前にいる女の子を等しく相手にするだろうから」
「私とリゥパさんの2人で、ケダモノマスターの相手になるでしょうか」
「……無理ね。だから、全員で今夜はがんばるんじゃない! サラフェが無事かどうかは全員の体力にかかっているわ!」
最初はこそこそ話だったものが、話している内に声が大きくなることはよくあることだ。女の子たちの会話も途中から声が大きくなって、ムツキの耳に届いていた。
ムツキは少しうな垂れる。
「ケダモノ、ケダモノと、聞こえるようなところで言われるとツラい」
「あー、まあ、聞こえなかったことにしてください」
サラフェはムツキの身体に若干苦笑い気味の笑顔を埋めたままそう呟くのだった。
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