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4-96. 終わったから帰ってきた

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキが【テレポーテーション】を使い、全員が一瞬にしてムツキの家へと辿り着いた。


 それほど日にちが経っていないにも関わらず、キルバギリーは新しい気持ちで目の前にある家を見つめている。


 それは彼女が幸せになれというレブテメスプの言葉を受けて、ここが自分の幸せになる場所、もとい、自分の幸せになれる場所だと再認識したからだ。ムツキとサラフェが彼女の様子を静かに見守っており、やがて、彼女は家の扉を開く。


 まず出迎えたのはユウ、ナジュミネ、リゥパ、そして、コイハだった。出迎えた側も帰ってきた側も全員が顔を綻ばせて笑顔で崩れている。


「おかえり! ムツキ、サラべえ、キルちゃん」

「おかえりなさい、旦那様、サラフェ、キルバギリー」

「ムッちゃん、サラフェ、キルバギリー、おかえり!」

「ハビー、サラフェ、キルバギリーも無事でよかった」


「ただいま、ユウ、ナジュ、リゥパ、それに、コイハ」

「ただいまです」

「皆さん、ご迷惑をおかけしました。ただいまです」


 キルバギリーが深々とお辞儀をすると、ナジュミネは彼女の肩を軽く叩き、ムツキも彼女の頭をポンポンと撫でた。


「いや、迷惑を掛けたのはレブテメスプだ。そう言えば、レブテメスプはどうした?」


「すまない。逃げられた」


 ナジュミネの問いにムツキが少しバツ悪そうに答えると、彼女は少し残念そうにするもそれ以外の何物でもなかったのか、肩をすくめて小さく溜め息をこぼすだけだった。


「そうか。まあ、仕方あるまい。それよりも旦那様」


「ん?」


「メイリがそこに横たわっているぞ? そろそろ許してあげたらどうだ?」


「あ……そうだな」


 ナジュミネの目線の先、リビングのソファの上に元気のないメイリが横たわっており、自分の名前を呼ばれてゆっくりと身体を起こす。その瞳は少し虚ろにしていたが、ムツキを見るととろんとした様子に変わる。


「……ダーリン」


「……これは完全にやりすぎたな。すまない」


「……ムツキ、本当に制御できてる。これも成長かな」


 ムツキはメイリに意図的に高めていた【友好度上昇】の影響を徐々に下げていくことで、一種の魅了や催眠になっていた状態を通常状態に戻していく。


 ユウは実際に見て驚いていた。パッシブスキルを自在に制御できる能力をムツキに与えていなかったからだ。


「……ううん。僕こそごめんね。キルバギリーもおかえり」


「メイリさん、ただいま戻りました」


 和やかな雰囲気が続く中、ナジュミネがふと思い出す。


「そう言えば、これで無事に試練も終了だな」


「試練……あっ」


 ムツキは途中から試練と試練くんの自体を忘れ去っていた。そこにひょっこりとまだついてきていた試練くんが現れる。


 忘れ去られていた試練くんは怒っているというよりも呆れた上で仕方ないといった様子で仁王立ちしていた。


「ヤハリ、ワスレテイタノカ! マッタク……マア、ウカレテシマウノモ、ムリハナイゾイ! キヲトリナオシテ、コンカイ、サラフェノシレン、ゴウカクダゾイ!」


「試練くん、ありがとう」


「レイヲイワレルコトハ、シテイナイゾイ。サテ、スコシ、ヤスム」


 試練くんはそう言ってから、ソファの方へと移動し、ゆっくりと腰を掛けてスリープモードに入った。


「……これでようやく元に戻ったのか」


「元に戻っていないわよ? 全員が何かしらの成長をしたじゃない?」


「あぁ、そうか」


「うんうん、ユウ以外ね」


 ムツキが期間は短くともとても濃い内容だったここ最近を思い出しボソッと呟くと、リゥパが訂正を入れ、さらにメイリがユウの方を見て少しイタズラっぽい笑みを浮かべて言い放つ。


「え、待って、ムツキだって、キルちゃんだって、試練してないじゃん!」


「試練はしてないけど、ダーリンは女の子をお仕置きするバリエーションが増えたよ。キルバギリーもなんか後ろの装備の雰囲気が微妙に変わってるし」


 メイリの発言にユウが非難めいた声を上げるも、彼女はきちんと言い返した。


「バリエーションって……俺はただ【友好度上昇】を……あ、そうか。たしかに、【友好度上昇】を制御できるようになったな」


「私もレブテメスプ様に少し改良してもらいましたから」


「ということで、ユウだけ成長していない気がする」


「そんなあ……メイりん師匠、それはイジワルだよ……」


 ユウは自分だけ成長していないと言われてしまい、少し凹んだ。ムツキは凹んだ彼女を慰めるかのように抱き上げる。


「ユウ、そう凹むな。かわいい顔が台無しだぞ」


「……うん! かわいい?」


「うん、かわいい」


 ユウはパっと笑顔が戻ってきた。


「それと、キルバギリー、改めてよろしくな」


「マスター……はい!」


 ムツキの言葉に嬉しさが込み上げたキルバギリーもまた、彼に笑顔を向けていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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