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4-95. 認められたから油断した(2/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ワルキューレたちが見守る中、ムツキとレブテメスプは互いに睨むような凝視をする形で男どうしの無言のやり取りをしていた。


 その最中に、彼らの耳に複数の足音が扉の奥から聞こえてくる。徐々に足音が大きくなり、やがて扉が開くと同時に足音を出していた者たちの姿が露わになる。


 サラフェとキルバギリーだった。ムツキとレブテメスプの決着を見るために、キルバギリーの案内でこの部屋にやってきたのだ。


「マスター」

「ムツキさん」


 キルバギリーとサラフェの声が聞こえると、ムツキはレブテメスプから目を離して立ち上がり、彼女たちの声がする方向へと身体を向ける。


「キルバギリー! サラフェ! 2人とも無事か」


 ムツキは2人の下へと駆けていき、同じように自分の方へと近付いてくる2人を優しく抱きしめた。


「マスター! キルバギリー、ただいま戻りました」


 キルバギリーは、久々にムツキと会えたことや彼をきちんと見た途端に記憶の整合が取れてきたことで、安堵と嬉しさに涙ぐみながら抱きしめ返す。


 ムツキはキルバギリーの頭を抱えるかのように腕で優しく包み込み、そのまま頬を寄せていた。


 その2人を眺めているレブテメスプは、認めたと言葉で言いつつもこのような状況だとどうしてもムッとするのか、腕を組んで難しそうな顔をしている。しかしその後、彼は何かピンと来たのか、ワルキューレたちと合図を送り合いながらこそこそとし始めた。


「ああ、おかえり、キルバギリー。サラフェもありがとう、おかえり」


「お礼なんて……サラフェはサラフェのためにキルバギリーを取り戻しただけです」


 サラフェがムツキのお礼の言葉に気恥ずかしくなってぷいっとそっぽを向くと、キルバギリーはその彼女の様子にくすっと笑い始めた。


「ふふっ。サラフェはまだマスターにツンケンしているのですか? 先ほどここに来るまでに話していたときはだいぶ打ち解けたように思いましたが」


「なっ! その話は! いえ、間違いないですけど……」


 サラフェはキルバギリーが寝ている間のことを説明していた。


 その説明の中で、キルバギリーはサラフェのムツキへの接し方が徐々に軟化していることを指摘し、サラフェは恥ずかしそうにしながらも否定をしなかった。


「いや、打ち解けたと思うぞ。最近、可愛らしい姿も見せてくれるようになった」


「なっ! かわっ! ……ま、まあ……そうですね……少しくらいは……」


「ふふっ。本当ですね。たしかに、しっかりと抱きついていますしね」


「あ、こ、これは……まあ……なんと言いますか……もう! 2人でからかうのはやめてください!」


「あはは」

「うふふ」


「もう!」


 サラフェがムツキとキルバギリーの言葉に顔を赤らめながら拗ね始める。それを見て、キルバギリーもムツキもにこっと微笑む。


 そのやり取りが終わろうとしたとき、ガラガラ、ガチャン、ウィーンという金属音や機械の稼働音が響く。その音の正体は瓦礫と化したスーパー・エニアード・ハーミット(仮)の中からレブテメスプのUFOが飛び出したときの音だった。


「ムツキ! キール! サラフェたん! じゃあね☆ また近々遊びに行くから歓迎してくれよ☆」


「あっ! いつの間に! ……って、たんはやめなさい! ムツキさん! ちゃんと思いっきりぶっっっっっ飛ばしてくれたんですか?」


「あ、あぁ、そのつもりだけど」


 レブテメスプにサラフェたんと呼ばれたサラフェの怒りの矛先がムツキへと向かい、ムツキはたじたじになりながらも縦に頷いていた。


 キルバギリーはその2人のやり取りに参加せず、レブテメスプを見つめている。レブテメスプは、キルバギリーを一瞥した後ににやりと微笑みながら、サムズアップを見せる。


「……キール、幸せになれよ☆ 行くぞ、ワルキューレたち! 別の研究所だ」


「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」


「レブテメスプ様……はい……」


 すんなりと逃がしてしまったことは手痛かったが、別れの挨拶をしている2人の間に割って入ってレブテメスプを捕まえようとするほど、ムツキもサラフェも野暮ではない。


 ムツキはポリポリと頬を軽く掻きながら、サラフェとキルバギリーを交互に見る。


「すっかり油断して取り逃がしてしまったな。ナジュがお仕置きしたがっていたから、どうしようかな」


「マスターがお仕置きを代わりに受けるしかありませんね」


「えっ」


「まあ、サラフェやキルバギリーは何も落ち度ありませんからね」


「ええっ」


「でも、ナジュミネさんなら、逆にマスターのお仕置きを受けたいかもしれませんね」


「……えええっ」


「そのようなことを言っていると、キルバギリーがナジュミネさんに怒られますよ……」


 ムツキが驚きの3ステップを踏んだ後に、サラフェが冷静にツッコむ。


「キルバギリー、俺と一緒に怒られるか?」


「そうですね。それもいいかもしれません。……帰りましょう」


 キルバギリーの言葉に、ムツキもサラフェも笑って肯いた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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