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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第4部9章 人族の始祖レブテメスプとの決着

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288/360

4-90. 予定調和だから救えた

約2,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 サラフェは思う。レブテメスプはとびきりの嫌な奴ではあるが、悪い奴ではない、と。


 キルバギリーと2人きりでの戦闘。


 キルバギリーとの出会いの場所を模した場所。


 キルバギリーに改造を施した割に、この戦闘で彼女が使うことすらできないという有り余るほどのハンディキャップ。


 中途半端に残されているように思われるキルバギリーの記憶。


 よくよく考えれば、そのハンディがあろうと反応速度や力で勝てるわけがないはず、なのにどうしてか五分かそれ以上に渡り合えているという状況。


 サラフェは都合よく解釈し過ぎとも思ったが、いずれもどこかレブテメスプが自身の負け戦をゲーム仕立てにしているだけのように見えてしまう。


 レブテメスプは道化師なのか、はたまた、道化師を振る舞っているだけの賢者なのか、それとも、自身のしたいことさえ分からなくなった狂人なのか。


「気がそぞろでは勝てませんよ」


「っ!」


 キルバギリーの言葉にハッとしたサラフェは、大上段から迫りくるブレードを避けるために後退する。もしキルバギリーが言葉を発しなければ、彼女は反応が遅れていたために、顔に傷の1つでもできておかしくなかった。


 それをキルバギリー自身が気付いている様子もない。


「そうですね」


 今この戦いの間だけ、サラフェはレブテメスプのことを忘れることにした。どう推測しても真実は分からないと知っているからだ。目の前のキルバギリーに集中せねば、と彼女は無意識にこくりと誰かに知らせるわけでもないのに肯いた。


「では、いきましょうか」


 サラフェはふとあることを考えついて、思いきって賭けに出た。彼女は大きく跳躍して隙だらけの袈裟斬りを放つ。キルバギリーがそれを左腕のブレードで受け止めつつ、右腕のブレードで彼女を突こうとする。


 彼女はそれをまるで予め知っていたかのように最小限の動きで避けてしゃがみつつ、足払いの攻撃に転じた。低空飛行を維持しているキルバギリーに足払いの攻撃など当たるはずもないが、キルバギリーは先ほどと打って変わって大げさにバク転しながら攻撃を避ける。


 サラフェはニヤッと笑みをこぼした。


「朝練の応用型1の6ですね」


「……朝練の型?」


 サラフェの突然の言葉に、今まで無表情だったキルバギリーの目が丸くなって驚いている。


 サラフェはキルバギリーとの日課である朝練の型を仕掛けたのだ。彼女たちの朝練の型はいくつも存在するが、起点となる最初の攻撃と相手からのカウンター攻撃の種類とタイミングによってその後の攻撃も流れるように決まっていた。


 キルバギリーの記憶が完全に消去されているのであれば、カウンター攻撃が一致することはあってもタイミングやその次の攻撃以降まで一致することなどほぼあり得ない。


 サラフェはキルバギリーが無自覚ながら記憶が残っていることを確信できた。


「キルバギリー、今のあなたでは、このサラフェにすら勝てませんよ?」


「そんなことはありません!」


 キルバギリーが2枚の翼を投擲槍へと変えて放つも、サラフェはすり抜けて低姿勢でキルバギリーの前に屈む。


 キルバギリーはとっさに腹部に防御を集中させる。彼女はこのタイミングであれば、腹部に肘打ちが入ると知っていたのだ。


「だから、勝てないのです」


 しかし、サラフェの攻撃は顎へのアッパーカットだった。キルバギリーは頭部を揺さぶられて、視界が歪み霞んで暗転した。


 サラフェはキルバギリーが床に頭を打ち付ける前に回り込んで、その小さな身体でなんとか支える。その後にゆっくりと床に寝かしつけた。


「無意識に朝練の型を想起したからこそ、とっさの判断で型の流れになってしまい、応用が効かなくなってしまった。まあ、朝練でしたら怒られるでしょうけどね。今は実戦ですから」


 サラフェはキルバギリーに朝練の型を強く意識させつつ、朝練の型以外の攻撃を打ち込んだのだ。記憶が残っていると確信できたからこその不意打ちだった。


「さて、このばっくあっぷでーたとやらが入っているめもりとやらを入れないと」


 サラフェがポケットから取り出したのはキルバギリーと出会った研究施設で手に入れたバックアップデータの入っているメモリである。


 彼女はキルバギリーの上半身を軽くはだけさせる。


「まったく……なんでこんなところに……レブテメスプもいやらしいですが、このことを知っているムツキさんも本当にやらしいですね」


 サラフェはレブテメスプとムツキに悪態を吐く。ちなみに、ムツキはキルバギリー本人から以前知らされているから知っているだけだった。つまり、勘違いによる悲しき風評被害である。


 彼女は少し経ってから胸部の中心よりも左胸寄りにあるメモリを入れられそうな場所を見つける。


 しかし、彼女は困った。どうやってメモリを入れるのかを教えられていないからだ。考えあぐねた結果、メモリスロットのフタすら開けていない状態で思いきり力づくでねじ込もうとする。


「待ってください。メモリを壊す気ですか?」


「キルバギリー!」


 意識を取り戻していたキルバギリーが見るに見かねた様子でとっさにサラフェを止める。


 サラフェは驚き一瞬固まるも、キルバギリーの様子から勝負が決まって負けを認めていると悟った。


「貸してください。私が入れます」


「そうですね、お任せします。どうぞ」


「……そんな簡単に。もしかしたら、受け取った瞬間にメモリを壊すかもしれなかったですよ?」


 サラフェが何一つ躊躇わずに大切なメモリを手渡してきたので、キルバギリーは思ってもいないことを彼女に呟いてみる。


 サラフェはそれを聞いて驚くことも怒ることも悲しむこともなく、ただ優しく微笑みながら首を横に振った。


「いえ、サラフェの知るキルバギリーは、そんな悪あがきをしません。なんなら、こう言うでしょうね」


 サラフェが言いそうな言葉を当ててみせるといった表情をするので、キルバギリーは試しに言ってみることにした。


「たとえ記憶が戻っても、レブテメスプ様の下にいるでしょう」

「たとえ記憶が戻っても、レブテメスプ様の下にいるでしょう」


 サラフェの勝ち誇った顔とキルバギリーの降参を示した顔が対比的に映る。


「ね?」


「完全に負けました。そうなるときっと、私は記憶が戻れば、あなたやマスターのところへ戻るのでしょうね」


「ほかのみんなも、レブテメスプ以外はでしょうけど、そう願っています。親離れは早い方がいいですよ」


「ふふっ。メモリを入れた後は少し起動に時間がかかります。そのため、少し待っていてください」


「待ちますよ。待っていますから」


 サラフェがそう力強く答える。


「……ごめんなさい、レブテメスプ様」


 キルバギリーは脳裏に過ぎるレブテメスプに謝りの言葉を呟きながら、静かにメモリを入れて再起動状態へと移行した。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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次回:4-91. 最終手段だから大きかった(1/2)

本作は土日祝日を除く平日更新でお届けします。サブタイは予告から変わることがあります。

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