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4-Ex17. 残ったから話が始まった(1/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキとサラフェがキルバギリーを取り戻すために家を出た後、家に残った女の子たちの話はここ数日のことになる。


「さて、妾たちは信じて待つのみ。ゆっくりと話をしようじゃないか。まずはミクズ、説明してくれるか?」


「そうじゃな。まあ、どこから説明しようかは迷うのじゃが、時間に沿って説明することにするのじゃ」


 ミクズは五重塔最上層を飛ばしてからの話を始めた。


 メイリが試練を突破するために房中術を行ったこと、房中術を行う際にムツキを【変化の術】で大人の見た目にしたこと、メイリが焦っていたこと、メイリがある方法に気付き試してみたこと、それがムツキの嫌がることだったこと、そして、メイリがお仕置きを受けたこと。


 ミクズが順番に話していくと、ユウやナジュミネ、リゥパは表情が七変化し、彼女の話を聞き終わって最初に出てきたのは、嫉妬にも似たメイリへの羨望だった。


「メイりん師匠、試練のためだからって、ズルい!」

「メイリ、旦那様とそんなにも……羨ましい」

「メイリ、ムッちゃんとずっとイチャイチャしていたの!? 私が悶々としていた間!」


 ミクズはそうなると思って、落ち着けと言わんばかりに、両手を前に軽く突き出す。


「そう思うのも分からんでもないのじゃが、今はこれ……じゃぞ?」


 ミクズの視線の先、彼女の隣でしなだれかかるようにメイリが身体を預けている。


 メイリは、うなだれているためか短髪にも関わらず黒髪が顔半分を覆い、黒髪に覆われた隙間から見える茶色の瞳が虚ろだった。


「……ダーリン……ダーリン……どこ……? 僕の側に居てよ……ダーリン……」


 メイリは無表情のまま、言葉をぶつぶつと呟き、虚ろな目で周りを見渡して、ムツキが居ないことに悲しみを覚えて、次第に涙をぽろぽろと流し始める。いつもの元気さや明るい声、悪だくみを考えていそうなイタズラっぽい笑顔はまるでなかった。


 ミクズは軽くメイリを抱き寄せる。


「…………」

「…………」

「…………」


 文句を言っていた3人もさすがに無言になった。本来、房中術でイチャイチャしていたことと、お仕置きで今の状況になったことに直接の繋がりはないため、それはそれ、これはこれ、と責めることもできないわけではない。


 しかし、今のメイリを相手に責め続ける者はいなかった。


「リゥパにはおそらく説明するまでもないのじゃが、あのお仕置きは……なんと言えば正確か、もはや、精神的な毒というべきじゃの……ハビーのことしか気にならなくなるし、ハビーが絶対になるからの……」


「……ダーリン……ダーリン……ダーリン」


 リゥパよりも短時間に、リゥパよりも強めに、そのように設定したお仕置きをミクズはあえて毒と表現した。


「ナジュみんもたまにこうなるよね」


「ここまでではないが!? ……まあ、たしかに旦那様がいないと寂しい気持ちでいっぱいになるな」


 ユウが沈んだ話を少しでも笑いに変えようとナジュミネに話を振り、それに気付いたナジュミネが少し大げさに反応した。


「それにしても、私の場合は耐えきれるか耐えきれないかで悶々とするくらいで収まっていたけど、メイリは既にムッちゃんへの愛情メーターが振りきって崩壊してない? ムッちゃん、ちゃんとメイリを元に戻せるのかしら?」


 ムツキがお仕置きを若干緩和したこととお仕置きから数日経ったこともあり、リゥパは高められた【友好度上昇】の影響がほとんどなく普段程度のムツキへの愛情に戻っている。


「そこは心配ない……らしいのじゃ」


 メイリの今の姿を見ている全員が、ムツキのどこからその自信が出てくるのかと思う。


「旦那様は加減ができないこともあるからな……」


「メイりん師匠はムツキの独占欲をいたずらに刺激し過ぎたのがなあ……ムツキが自分の独占欲自体を恥ずかしがっているというか、嫌がっているというか、人に見せたくない部分だからね。私はあの感じの独占欲もムツキのいい所だと思うんだけどね」


 ユウはムツキの独占欲を美点としている。それは彼の独占欲が自分の手に届くもの、自分の手に入れたものに限られているからだ。


 他人のものを無闇に欲しがらず、あくまで自分のものを大切にする。大切にするために過剰防衛が働くこともあるが、彼女はこの彼のスタンスが好きだった。


「……さて、そろそろ、我は眠るとするのじゃ」


 ミクズは説明が終わり、話がひと段落したと思ったこのタイミングでそう呟いた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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