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4-83. 場所が分かったから向かう

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ムツキの周りが少し騒がしいとき、試練くんは役目を終わったと判断したようでこの後どうしようかと考えていた。


 レブテメスプが回収するのならそれでもよし、ここでおしゃべりするロボとして置いてもらうもよし、そうでもないなら世界をこの目で見てみるのも自身への試練になるかもしれないと試練くんは思っていた。


「なあ、試練くん」


「ン? モト、オコサマ、ナニカアルゾイ?」


「そういえば、すっかり名乗り忘れていたな。俺の名前はムツキだ」


 試練くんは小さな溜め息を吐く。その溜め息は悲しさよりも嬉しさが込められていた。


「ハハハ……ムツキ、カ。イマサラスギルゾイ」


 試練くんは仮に名前を知っていても、名乗られない限り、その人の名前を使うことがなかった。知っているからといって、勝手に名前を使うほどの馴れ馴れしさを試練くんは備えていなかった。


「きちんと名乗っていなかったのは悪かった。ところで、悪いことついでで申し訳ないが、キルバギリーの居場所を教えてくれないか?」


「ハイイロガミノオンナカ……ザンネンダガ、イチハ、ワカランゾイ。デモ、レブテメスプノ、イチナラ、ワカルゾイ」


 レブテメスプの位置が分かる。試練くんのその言葉に、ムツキは状況打破の光明が見えてきた。


「それを教えてもらうことはできるか?」


「ダメダゾイ。クリアノ、ホウシュウデハナイカラナ」


「うーん、ダメか……」


 光明が見えているものの、そこにまだ手が届かないと知り、ムツキは再び考え込む。その隣で何かピンときたナジュミネが彼の代わりに口を開き始めた。


「試練くんよ」


「ン? コンドハ、アカガミノオンナ、カ」


「妾の名前はナジュミネだ。改めてよろしく頼む。さて、本題だ。試練くんは妾たちの試練も終わってしまって暇だろう?」


 試練くんがナジュミネを見る。彼女はほぼほぼ解決策を見出していたようで余裕のある表情でまずはムツキのように名乗り始めた。


 彼女の言葉に試練くんは何一つ嫌そうな顔をせずにウンウンと肯いていた。


「ソウダナ、オワッテ、スグダカラ、ショウジキ、ヒマダゾイ」


「レブテメスプに試練を与えるってのはどうだ?」


「ホウ?」


 試練くんがナジュミネの提案にニヤリとする。


「例えば、妾たちがキルバギリーを取り戻そうとする。レブテメスプが妾たちを止めること、それが試練だ」


「オモシロイ! ダガ、アノオコサマニ、タンジュンニハ、アタエラレンゾイ! ソコデ、ココノダレカノ、シレントイウコトデナラ、ニタヨウナコトヲ、ジッシデキルゾイ! タダシ、ランダムダカラ、ウンダメシニ、ナルゾイ」


 試練くんにもできることとできないことがあるが、疑似的に似たような状況にすることはある程度可能だった。


「なるほど。こちらの試練ということで出すわけだな」


 試練くんの出す試練は試練くんが選べるわけではなく、あくまでランダム性であり、つまりは、賭けでもあった。


 だが、何もできない今の状況を乗り越えるために手段を選んでいられなかった。ナジュミネが周りを見渡し、全員が縦に頷いていることを確認する。


「よかろう。試練が超えられないものではないことをここの全員が証明しているからな」


「ソノ、ココロイキヤ、ヨシ! タシカニ、ウケタマワッタゾイ!」


「さすがナジュ!」


 ムツキはまた試練というところに引っ掛かりを持ちつつも周りが容認しているためにそれを隠して褒めた。ナジュミネは少し顔を赤らめて身体をもじもじと動かしながら、やがて、ゆっくりと口を開く。


「あの……その……旦那様にもっと褒めてほしい」


「やっぱりナジュは頼りになるな」


 ムツキがナジュミネをゆっくりと抱き寄せて、彼女の揺らめく炎のような赤髪を梳かすように頭のてっぺんから肩辺りまで髪の毛に沿って撫でた。そのじんわりと温かい彼の手の感触に彼女の顔は笑みで嬉しそうに崩れきっている。


「えへへ……やっぱり、旦那様が一緒だと安心するな……ちっちゃい旦那様もよかったけど、やっぱり大きい旦那様がいい」


「久々過ぎて、姐御がすっかり甘えたがりなのじゃ」


 ミクズの言葉の後すぐに、試練くんが口を大きく開けたかと思うと急に踊り出した。


「ハッハッハッハッハ! ジツニ、ウンガイイナ! コンカイノシレン、アオカミノオンナノ、ツイカシレントナリ、ナイヨウハ、コレダゾイ! ナオ、コレハ、レブテメスプノ、シレンニモ、ナルゾイ!」


 試練くんの出した紙には『キルバギリーを取り戻せ!』と書いてあった。紛れもなく、ムツキたちの思い描いている試練そのものだった。


「ふむ。行ってもいいのは、旦那様とサラフェだけか。だが、上等だ。2人とも、キルバギリーを頼んだぞ」


 ナジュミネが急に真面目な表情をして、詳細な条件を見たところ、ムツキとサラフェだけを指名していた。協力者もなしである。


「その前に少しモフモフを……」


「ムツキさん? メイリさんでモフモフをしっかりと堪能したのでしょう? 早く行きますよ」


「あぁ……はい……」


 ムツキがモフモフを要求するも、サラフェが急ぐように催促したため、2人は試練くんとともにレブテメスプの元へキルバギリーを取り返しに向かうのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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