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4-63. 遠距離攻撃だからお互いに撃ち続けた(2/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 ナジュミネ、リゥパ、サラフェ、メイリの4人は警戒を強める。ミクズが扮する狐リゥパが消え去った瞬間に、彼女の気配も完全に消えてしまったからだ。


 リゥパが【マジックアロー】や固有魔法【ミリオンアロー】、【ビリオンアロー】を主軸にする遠距離攻撃を得意としていることから、狐リゥパも遠距離攻撃主体で真似してくる可能性が高いためにどこから攻撃が飛んでくるか分からない。


「さて、ナジュミネ、どうする?」


「……リゥパ一人で相手をできるか?」


「それはいいけど、皆で相手した方が良くないかしら?」


 リゥパがナジュミネに作戦を問うと、ナジュミネは少し考えた後にリゥパと狐リゥパの一騎打ちを提案する。


 リゥパはその提案に一度肯定をしつつも、自分の提案も一応投げかけてみる。今回、特に一騎打ちである必要性はない。全員で着実に狐リゥパを仕留めた方が良い気もしている。


 ナジュミネは一度だけ頷き、それは間違っていないという肯定なのだが、表情が変わらない。


「そう、本来であれば、全員で仕掛けた方が良さそうだが、正直な話、地の利があるのはリゥパのみ。メイリもそれほど悪くないが、あくまで地面のみで、木々まで含めた地の利を活かせるほどではない。サラフェも似たようなものだ。妾に至っては、木々を燃やす可能性があるしな。【ファイア】」


 ナジュミネは【ファイア】で葉を1枚燃やしてみせる。この葉が実物にせよ魔力によるものにせよ、【ファイア】を受けてボボッと燃え盛っているということは間違いなく可燃性である。


 周りの木々もこの葉と同じと考えれば、火を使えば延焼することは明らかだった。


「サラフェたちにはムツキさんの【バリア】がありますが、それならどうでしょう?」


「それも考えたが、旦那様の【バリア】は頼みの綱であると同時に油断の種だ。ミクズはそれを知っていて戦いを仕掛けているから多用しない方がいい。何かあるはずだ」


「うん。アニミだってダーリンの【バリア】を破る方法を見つけているからね……」


 サラフェがムツキの【バリア】も考慮してみてはと言ってみると、ナジュミネはやんわりとそれを考慮から外しておくように伝える。それに続けて、メイリが過去のことを思い出して呟く。


 ナジュミネはメイリの肩に手を置いて、ぐっと力を込める。


「……そうだな。メイリ、案ずるな。妾が近くにいる限り、ひどい目には遭わせん。リゥパがミクズの相手をしている間に、3人で次の階層への入り口を探す。それで、だ。最初にデカいのを一発頼めるか? 先手必勝だ」


「……分かったわ。いくわよ、【スプレッド】【ビリオンアロー】!」


 リゥパが拡散する【ビリオンアロー】を上に向けて放つ。


 すかさず、ナジュミネ、サラフェ、メイリの3人が動き出し、大きな枝の下やウロの中に入り込み、近付きすぎず離れすぎずの距離で待機している。


 やがて、無数の【マジックアロー】がバラバラと落ちてくる。その中には地面に刺さるものもあれば、木々の葉や枝、根っこに弾かれ地面に横たわるものもあった。


「ははっ……リゥパじゃな! 動かずに囮を買って出るか!」


 ふわりと浮いている狐リゥパが急に現れて、ワンピースのスカートの中から【マジックアロー】のように硬いクダギツネをリゥパに向かって放ち続ける。


「ちょっと! 私の見た目でスカートから変なもの出さないでよ! って、こいつら、自動追尾するのね! 単発の連続じゃ間に合わない! 【ラピッドファイア】【マジックアロー】」


 リゥパが迫り来る複数のクダギツネに向かって、【マジックアロー】を連射する。1匹のクダギツネが【マジックアロー】数本でようやく消失した。


 パラパラと【マジックアロー】とクダギツネが散っていく中で、狐リゥパとリゥパが静かに真っ向からお互いを見据える。


「【マジックアロー】にしては威力が強いのう。ただし、威力は強かろうが、多少なりとも弓で撃つモーションをせねばならんのが痛いところじゃな。我のクダギツネの物量に敵うのかのう? 助けを求めるなら今じゃよ?」


「油断しているとその眉間を【マジックアロー】で撃ち抜くわよ? ミクズが他の3人を気にできるほどの遅さか試してみればいいんじゃない?」


 リゥパは負けるわけにはいかない。


 場を託されたのはもちろんのこと、木々のある森の中で樹海の守人を自負するエルフが遠距離攻撃比べで負けることなどあってはならない。


「ふふっ……この階層も根比べになるとはのう」


 リゥパの固有魔法である【ミリオンアロー】や【ビリオンアロー】は、【マジックアロー】の単発に比べれば場を制圧する力が大きい。その反面、無駄撃ちになるものも多く魔力消費も段違いに大きい。


 彼女にはそれらを乱発していられるほどの優位もない。


「そりゃあ、各階層で1人しか足止めされなきゃ最終階層には誰かしら1人辿り着くからね」


「そうじゃの」


「……ミクズはそれを狙っているの?」


「それはないのう。気が変わってな。次の階層は2人で相手してもらうのじゃ」


「ズルいわね」


「ふふっ」


 リゥパと狐リゥパの会話が終わる頃、メイリが第3階層への出口を見つけ、ナジュミネ、サラフェも集まっている。


「リゥパ!」


「先に行きなさい!」


「……分かった! 頼んだぞ!」


 リゥパの言葉にナジュミネが応じ、階段を駆け上がる音が聞こえる。


「さて、では、根比べを適度に楽しんでもらおうかのう」


 狐リゥパのクダギツネが次々と発射される中、リゥパは【マジックアロー】を撃ち続けていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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