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4-Ex13. 誰もいないから連れ去った

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 同時刻。場所が変わってムツキの家の中。全員が出払っている中でその者は現れた。


「呼ばれてないけど、レブテメスプ様のご登場じゃ―んっ! ま、誰もいないけどね☆ 不用心だよねー♪ しかし、アニミダックも……おっと、これくらい近いと名前を言えてしまうのか。気を付けないとね☆ まあ、アニミダックも妖精たちもあんな簡単な仕掛けに気付かないなんて、本当困ったもんだね」


 半球カプセル型UFOに乗った10歳くらいの容姿を持った少年、人族の始祖の1人、レブテメスプがムツキの家に侵入していたのだ。


 彼はアニミダックの名前を言えたために少し注意する。それは彼ら始祖の4人が過去にそれぞれが悪口を言い合うので、近くにいないと互いの名前を言えないようにユウに条件付けされているからだ。


 つまり、近くにいるかどうかを判断するのに名前が呼ぶ方法が取られるため、レブテメスプがムツキの家にいることを悟られる可能性があった。ただし、アニミダックがレブテメスプを呼ぶ暇があれば、の話ではある。


「【変化の術】が魔力による抵抗があるのは周知の事実だから、それを逆手に取られたようだね。場に霧だかモヤだかを発生させて、敵に纏わりついている部分だけに【変化の術】を掛けることで、周りからは姿が変わったように見えるってわけさ。まあ、たしか、名称が変わって【幻惑の術】だったかな? そこらへんは白狐、黒狸の十八番だよね☆」


 レブテメスプは黄緑色のマッシュルームカットヘアを揺らしながら、UFOから降りてくる。彼は半袖の白シャツ、黒の半ズボン、その上から羽織った白衣をした子ども博士のような服装だった。


「きっとあの黒狸族の女の子メイリだっけか、鬼族の女の子ナジュミネだっけかがいれば、それが理解できて打開策もあったけど、分断されているしね。【幻惑の術】を使ったタイミングも彼女たちがいなくなってからしばらくしてだし、割とバッチリだよね」


 レブテメスプが現れたのはムツキの家の中でもキルバギリーとサラフェの部屋だった。


「娘とルームメイトの部屋に勝手に入る父親は嫌われそうだね☆ でも、大丈夫! 今は娘にしか興味ないからさ☆ たしかにルームメイトはちょっとロリっとしている感じで素敵だけど、もっと今のユースアウィスくらいのロリロリがいいよね♪」


 レブテメスプは会話量も多いが、独り言も多くずっと口が動き続けている。しかし、彼が一生懸命にいろいろと喋っていたのは目の前に寝かされているキルバギリーに語り掛けていたようにも見えた。


「キール……君はボクが勝手に家に連れ戻したらきっと怒るのでしょうね」


 レブテメスプの口調が変わった。キルバギリーの喋り方は彼の元々の話し方の影響が大きかった。いつしか彼の口調が変わったが、その理由は誰にも分からない。当の本人も理由を忘れ過ぎ去っている。


 そのまま彼は動かないキルバギリーをキールと呼んで、彼女の髪を梳くように優しく頭を撫でている。彼が作った当初、キルバギリーはキール・ヴァルキュリーという名前だった。長い時間の間で名前が少し変わったのか、通称がそうなったのかは彼に分かるわけもない。


 ただ、彼はそれさえも少し愛しいと思っているかのように、いつもの騒がしい雰囲気を潜めて、今はただ静かに彼女を嬉しそうに見つめている。


「いろいろなことを経験したようですね。さすがにプライバシーは守りたいので、記憶を読み取っていなくて詳細が分からないですけどね。でも、ボクといた時よりもルームメイトや他の女の子たちのようなお友だちと一緒にいる時、お友だちと一緒にいる時よりもムツキと一緒にいる時の方が楽しそうに純粋無垢な笑顔が増えているのは……嫉妬しますよ……正直ね。あと、ボクに挨拶もなく、君とムツキが結婚したことは今でも許してないけどね! ムツキをぶっ飛ばせるものなら地平線の彼方までぶっ飛ばしてやりたいくらいさ☆」


 レブテメスプは今の口調に戻りつつ苦笑いをする。その苦笑いもただ困ったからというより、嬉しいような、腹立たしいような、悲しいような、楽しいような、そのような彼の中に渦巻くいくつもの感情が不思議な混ざり合いをして、それを表現のしようがないといった困り方だった。


「君の大事なお友だちも君の愛するムツキもすごいよ。ボクの想像を簡単に越えてくれる。これじゃあ、このゲーム、ボクの負けはほぼ確定だろうね。まあ、楽しめたからいいけどね☆ それに彼女たちも強くなっておいた方がいい。単なる勘だけど、嫌な予感がするからね」


 レブテメスプは起きてから、気味の悪い何かを感じ続けている。どう表現していいかは彼にも分かっていないが、思ったよりも面倒なことが周りで起ころうとしているような気持ち悪さが彼の頭によぎっている。


 だからこそ、彼は娘であるキルバギリーも心配になっていた。


「ということで、せっかくの機会だから、君にも協力してもらうよ。最後まで父親のワガママに付き合わせちゃうことになってゴメンね♪ まー、謝るくらいならワガママやめろよ! ってコメントは却下だからね☆」


 レブテメスプは試練後の大舞台を用意するためにキルバギリーをUFOの中に入れて、そそくさとムツキの家から退散するのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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次回:4-61. 相手が狐耳だからウサギ耳で受けて立った

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