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4-Ex12. 敵が多いから簡単には終わらない

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 屋外での激闘は、単純な戦力で言えば、ムツキ側であるモフモフ軍隊やアニミダック、ケット、クー、アルなどが圧倒的だった。


 いくらミクズの魔力が膨大になりナジュミネと同等以上になったとはいえ、アニミダックやケットが今や彼女たちに少し劣るとしても引けは取らないレベルである。ましてや、余興のつもりか、ミクズ対多人数という構図は正直分が悪い。


 ただし、それは単純な戦力に限ったことである。


「やはり、普通には勝てぬか」


 狐アニミダックの姿をした狐火は、声は彼に似ているもののミクズのような口調で戦況を把握する。アニミダックの触手は一度に大量に生成されるわけではないため、数の上ではクダギツネの方が上だが、1本ずつの戦力としては触手の方が強い。


「まあ、普通にやらなければいいだけじゃがな」


 狐アニミダックは不敵な笑みを眼前の敵に向けていた。


「ん? なんかモヤが……まあ、見えないほどじゃねえか!」


 アニミダックはクダギツネを蹴散らしつつ、戦場の中央まで入り込み、触手を使った全方位攻撃を開始していた。彼の戦闘スタイルとしてはこれが常套手段であり、周りと歩調を合わせながら徐々に進撃というのが性にまったく合わなかったのだ。


 この時点で彼は分かったことが2つある。


 1つは、狐火は火というだけあって、火の魔法がまったく効かないことだ。これに気付いた時、彼はナジュミネには難しい戦いになるだろうと容易に想像できた。


 もう1つは、狐火は火のくせに水や氷の魔法が弱点ではないことだ。ナジュミネが不利な一方で、サラフェは有利かと思われたが、これも違うという厄介な状況である。


 いずれもコイハが普段から狐火を使っていれば分かったことかもしれないが、彼女はここぞという時しか狐火を使わなかったため、研究の余地がなかった。


「とろい狐がいるな! おらあっ!」


「ばうっ!」


「は?」


 アニミダックは動きが止まっているクダギツネを見つけて、思いきり物理攻撃用の黒い触手で殴り飛ばした。すると、今まで何も言わずに消滅していたクダギツネが鳴いたのだ。しかも、犬の鳴き声である。


 これにはアニミダックも驚きを隠せず、触手の追加攻撃をピタリと止めた。殴り飛ばしたクダギツネは消失することなく、彼の方をじっと見つめた後に非難めいた鳴き声で吠え始める。


「ばうわうっ! ばうっ! がるる!」


「えっ? お前は犬か? 狐じゃない?」


 アニミダックがきょとんとした様子で立ち尽くしていると、彼の右手方向からケットが現れた。ケットは腕をぶんぶんと振り回し、お得意の肉球スタンプをお見舞いしようと張り切っている。


「いっくニャー! 肉球スタンプ!」


 アニミダックがケットの放つ一瞬の殺気に気付き、とっさに避ける。ケットは避けられたために地面に手を着くと、そこには猫の肉球の形をした穴ぼこ、クレーターができあがっていた。この威力だとアニミダックでも一たまりもない。


「うおおおいっ! 危ねえ! ケット、何しやがる! 俺は狐耳じゃねえぞ!」


「えっ? その声はアニミダックかニャ? オイラには太ったクダギツネにしか見えニャいニャ!」


「てめぇの目がおかしくなったんじゃ……あれ? 俺もお前がクダギツネに見えてきたぞ」


 アニミダックとケットのやり取りが続く中、お互いがクダギツネに見えてくるという不思議な状況に見舞われていた。彼らが周りを見渡すと妖精たちの姿はなく、全員が狐火から伸びたクダギツネになっていた。


「まずい! 【変化の術】か! 臭いでも分からんぞ! それはともかく、背中合わせに立て! 背中ががら空きだぞ!」


 クーが立ち止まっている2匹のクダギツネを見て、味方だと判断し咄嗟に近付いてきてそう叫んでいる。クーは自慢の鼻が利かず、かなり困っていた。


 アニミダック、ケット、クーが背中合わせになり、周りを警戒する。


「待てよ! 【変化の術】は魔力による抵抗値があるんじゃねえのかよ!」


「っと、たしかに……アニミダックの言う通りです。とすると、これはまた別のものですか?」


 アルも現れて、背中合わせにそれぞれが別方向を向く形になる。


「そう思うニャ! そもそも【変化の術】は一時的に相手を変化させるものらしいニャ! オイラはクダギツネにニャんかニャってニャいニャ!」


「とすると、別の奴からは自分とは違う何かに見える何かってことか!」


「何かが多くてややこしいですが、そういうことですね」


 アルが冷静にアニミダックへとツッコミを入れた直後、アニミダックに向かってクダギツネが突進してくる。アニミダックは触手で殴り飛ばそうとが、先ほど間違えて犬の妖精を殴ったことを思い出し、最後まで動かせなかった。


 しかし、そのクダギツネは本物であり、勢いよくアニミダックに突進した。


「がはっ! これは本物のクダギツネか!? おらっ!」


 アニミダックはクダギツネを確実に仕留めたが、アニミダックのダメージ量から考えれば、攻撃を受けてからのカウンターでは最後まで立ち続けられない。


「まずいな……何であろうといいが、同士討ちはするわ、敵は関係なく攻撃してくるわ、じゃいくらこちらが総戦力で強かろうと関係ないぞ!」


「ちっ! めんどうくせえ!」


 その後、彼らは明確な最適解を見つけるまでに至らず、同士討ちを避けるためにモフモフ軍隊を引き揚げさせる。


「はっは。機転の利かない奴らで助かったのじゃ」


 アニミダック、ケット、クー、アルが背中合わせになったまま、迫り来るクダギツネたちを各個撃破する愚直な作戦で場を保っていた。


 それを見て、狐アニミダックたちは下手に弄らずに眺めるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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