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4-56. 変わったから唖然とした(1/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 動物的な本能か。急にコイハの尻尾が9本になって彼女の雰囲気が変わったことで、メイリは咄嗟に飛びのいた。


 ムツキは気付いていないのか、いまだにコイハの側にいて、彼女が不安にならないように優しく抱き締めていた。


「ダーリン! コイハがコイハじゃない! 逃げて!」


「メイリ、そんなことはない。そりゃ少し変わったかもしれないけど。コイハ、大丈夫だ。大丈夫だ。俺がついてるぞ」


「…………」


 コイハは無言でぎゅっとムツキを抱き締めた、というよりも、尻尾も何本か使って彼を軽く締め上げているという表現の方が近い。彼女の強さがいくら上がろうと、彼はそれらを振り切ることも容易だったが、無理に逃げようとすると彼女を傷付けかねないために結局動けないでいる。


 メイリ以外の女の子たちや妖精たちは状況把握のために迂闊に動かないよう、ナジュミネに待機指示が出ている。


「……お前様が今世での我が伴侶か?」


 コイハの雰囲気は全く異なっていた。綿帽子が外れて現れた白銀の顔や茶色の瞳は何も変わらないが、首より下の毛並みが金色に輝いていた。


 白面金毛九尾の狐。


 ムツキが前にいた世界でも有名な伝説上の生物である。神獣や霊獣の類とも妖狐や妖怪の類ともされるが、それは人側から見た時の評価であり、実際はただ強大な力を持ち、自由とも気まぐれとも取れる行為の積み重ねによってそう周りから言われているだけである。


 この世界においては、白狐族の歴史上、強大な魔力を有した変異種とされており、初めて狐の嫁入りを実行した白狐である。


 メイリは昔聞いた話を思い出して、コイハが狐の嫁入りや強大な魔力をムツキから受け取ったことで先祖返りを果たしたと考えるに至った。しかし、人格が変わることはまったく理解できなかった。


「コイハ、どうしたんだ? 俺は前からコイハのパートナーだろ?」


「そうか、そうか。愛いのう。おっと、今世の我は狐の顔のままじゃったか。お前様にはこっちの方がよかろう?」


 コイハの様子がおかしいため、ムツキは不思議そうな顔をしているが、彼女はそれを意に介した様子もなく、彼を愛おしそうに見つめながら頭を優しく撫で続ける。


 やがて、自分の顔が狐であることに気付いた彼女は、どこからか真っ白な面を取り出したかと思えば、自分の顔に重ね、半獣人族に変化した。顔や手足、身体は人の姿を取りつつ、狐耳と9本の尻尾だけは残した銀髪の美しい女性へと変貌する。


「綺麗……」


 ユウが思わずコイハの半獣人姿を見てそう呟く。コイハはユウやリゥパのような美しさと異なり、どちらかと言えばナジュミネに近く、キリっとした目元や陶器の人形のような美しさを兼ね備えていた。


「コイハが……変化した!? 半獣人族になった!?」


 メイリは驚く。コイハが【変化の術】を使ったところを見たことがない。そもそも、彼女は獣人族である白狐族が【変化の術】を使えると聞いたことがなかった。


「ん? 黒狸か。しかもその雰囲気は……いや、しかし、メスか? よう分からんのう。まあ、よい。【変化の術】がお前さん方だけの十八番だと思ったら大間違いじゃぞ? 元々、白狐と黒狸はともに化かし合いをして、楽しむこともあれば争いになることもあった仲じゃからな。我が悪友に似た、しかし、魔力が低すぎる黒狸よ。今のお前さんじゃまだまだ我と化かし合いは難しいぞ?」


 過去に黒狸族と何かあったのか、今のメイリを見て勝ち誇ったような顔をするコイハだった。メイリは何が何やらさっぱりだったが、自分が生まれるよりも前にそういうことがあったのだと理解するほかなかった。


 ムツキはその2人の会話に割って入る。


「なあ、コイハ……なんだよな?」


「うーむ、そのきょとんとした顔、お前様は本当に愛いのう。さて、答えてやろう。正確には今世のコイハと我は違うな。完全な別人格とまでは言わんが、我はコイハの一部から生まれつつも……過去の亡霊も混ざったようなもんじゃな」


 コイハは自身を過去の亡霊などと少し皮肉めいた言い方をしながら、ムツキに頬ずりをしてそう説明した。


「だから、コイハ本来の人格には少し眠ってもらっておる」


「……だったら、君には悪いけれども、コイハを返してくれないか? 君は悪い感じじゃないから話し合いで片付くなら片付けたい」


 ムツキはコイハを真っ直ぐに見つめている。彼女は彼を真っ直ぐ見つめ返す。


「ん-。嫌じゃ♪ おっと、コイハの記憶が我にも混ざって来た来た♪ なんじゃ、我以外にもこんなにしかも綺麗な伴侶を持っておるのか。ハーレムにモフモフに欲張りなんじゃのう。っと、話を戻すかのう。そうじゃな、どうしてもと言うなら、我の気が済むまで少し遊びをしようではないか」


「……遊びって何だ?」


 ムツキは少し警戒した口調でコイハに言葉を返した。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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