4-51. ボーナス試練だから思いきってお願いしてみた
約2,500字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
朝。ムツキは大きな欠伸をしながら、自身の髪色と似たような紫色のパジャマ姿でリビングに現れる。前夜に済ませたサラフェの試練の疲れも少し残っているのか、いつもよりぽけーっとした様子である。
彼と一緒にリビングへと現れたのは彼と添い寝をしていたユウである。彼女は白い肌の顔を真っ赤に染めて、ぽーっとした様子でムツキにぎゅっと抱き着いている。彼女がそうなっている理由は、彼が珍しく幼女姿の彼女を相手に抱き枕のようにして一晩中ぎゅっと抱きしめていたためだ。
きっと彼が疲れていたから人肌が恋しくなったのかもしれないと考えた彼女は、今後は彼をめいっぱい疲れさせてから添い寝をしようと思い至った。
「おはよう、旦那様、ユウ」
「おはよう、ハビー、ユウ」
リビングのソファに座っていたのは、いつでも早起きのナジュミネとこれから試練を受けることになってソワソワしているコイハだった。
「おはよう、ナジュ、コイハ。リゥパやサラフェ、メイリはまだ寝ているのか?」
ムツキはソワソワするコイハの隣に座り、尻尾をモフモフし始める。彼女はこんな時にと思いつつもどこかホッとしたのか、尻尾をそのまま彼に預けるように動かさなかった。
「まあ、サラフェは疲れてまだ眠っているのだろう。リゥパは……後で少し相手してやってくれ。悪夢のようにうなされていたぞ……聞いていたよりもちょっと恐ろしいな」
リゥパはムツキからちょっとしたアメとムチを受けて、未だに悶々としていた。彼は少しやりすぎたと反省している。
「あ、あぁ……意地悪し過ぎたからな。後でしとくよ。メイリは?」
「メイリは自分の番が残っているからか少し緊張しているようで、ここのところ寝つきが悪いみたいだ」
ムツキはメイリが緊張しているところを想像するが、あまりうまく想像できなかったために少し笑ってしまう。
「ははっ……メイリが緊張しているのか。いつも自然な感じだから緊張している姿が想像できないな」
ムツキが言い終わる頃にトタトタと階段を降りてくる音がする。噂をすれば影が差す。メイリ本人が少し不満そうに頬を膨らませながら、彼の方を見ている。
「もう! 僕だって緊張するよ!」
「あぁ、ごめん、ごめん」
メイリはムツキが申し訳なさそうに謝ったので、頬の膨らみを戻してからソファにゆっくりと座った。
それと同時に試練くんがギュインギュインと音を立てながら起動する。
「アー、アー、セイリョウヨシ、オンテイヨシ! グッドモーニング、エブリ……キョウハ、スコシスクナイナ! ケンコウテキナセイカツハ、ハヤオキカラ、ハジマルノダゾイ! マッタク、タルンドルゾイ!」
「ロボットやAIに生活指導される時代とか、前の世界に似ているな……」
ムツキは前の世界での記憶を呼び起こしながら、目の前の自律機動型の不思議ロボット、試練くんをじっと見つめている。
「マア、ヨイゾイ! サテ、コンカイ、シレンヲウケルノハ、シロイケナミノオンナダゾイ! シレンハコレダ!」
試練くんの右手が筆に変わり、左手で紙を放り投げると、目の前でズバッと筆を走らせた。筆はコイハの尻尾をイメージした演出のようである。
「……これが試練なのか?」
コイハが紙を受け取ると拍子抜けしたような声色で呟いた。ムツキ、ユウ、ナジュミネ、メイリが横から覗き込むと、そこには『ムツキに1つ願いを叶えてもらえ』と書いてあった。
「コレハ、ボーナスシレンダゾイ!」
「ボーナス試練?」
試練くんが親指をぐっと立ててサムズアップをしていると、ムツキが不思議そうにボーナス試練とは何かと問う。
「ドンナセイブツモ、ウケラレルシレンハ、シュルイガイクツカアル! イズレノシレンモ、セイチョウヲウナガスモノダガ、ナンイドハバラバラナンダゾイ! コンカイ、シロイケナミノオンナガ、ウケラレルシレンノナカデモ、ヒカクテキカンタンダトイウコトダゾイ!」
ナジュミネは試練くんの出す試練にどうやら試練くんの意志で決定されていないということを理解した。つまり、試練くんは示すだけで試練の内容を決めているわけではない。かといって、レブテメスプが内容を決めているようでもない。
では、誰が。
彼女は少し考えるも答えが出るわけもないので、今のところはその疑問を頭の片隅にポンと入れ込んでおいた。
「コイハ、やったね! きっと日頃の行いがいいからだよ!」
「ということは、メイリの試練は難易度が高そうだな」
「姐さん! それ、どういう意味!?」
「旦那様へのイタズラが多いからな。日頃の行いが良いとは言えんだろう」
「うっ……」
メイリが日ごろの行いと口にするので、ナジュミネはニヤリとしながら彼女に軽口を吹っ掛ける。メイリは再び頬を膨らませて抗議の意を示すも、ナジュミネ相手では中々歯が立たずに言い負かされてしまった。
「それで、コイハ。俺にしてほしいことはなんだ? 何でもするぞ」
「ん? ダーリン、今、何でもするって言った?」
「ん? ムツキ、今、何でもするって言った?」
ムツキの言葉にメイリとユウが超反応する。彼は彼女たちに向かって両手を使い全力でバツを作る。
「なんで2人が反応するんだ。ダメだぞ、2人に言ったら何をされるか分からないからな」
「ずるーい!」
「ずるーい!」
「そういうところが日頃の行いってやつだ」
「うっ……」
「うっ……私まで巻き込まれた……」
メイリとユウがたじろいでいる横で、コイハがムツキに顔を向ける。
「ハビー、本当に、何でもいいのか?」
「改まって聞かれるとちょっとためらうが……コイハの頼みなら」
コイハなら大丈夫だろうと思い、ムツキはにっこりと笑みを返した。
「じゃ、じゃあ……簡単にでもいいから、結婚式をしたい……」
コイハのその言葉に他の全員が「おぉ」と感嘆の声を漏らした。
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