4-46. 心配だから早く追いつきたい(1/2)
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楽しんでもらえますと幸いです。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
近接戦闘型のゴオは全体的に銀色の表面をしており、顔の部分には様々なセンサーを積んでいた。顔すべてを覆う白銀の能面のようなものを有し、それ故に表情はない。細マッチョと評せるように人族の筋肉質な見た目をしており、先ほどは両手が刃物になっていたが、左手が人族と同じ5本指の手に変わっていた。脚も人族同様に二本足であり、時折、加速するためにかかと部分からブースター出力されている。
「レムウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
遠距離戦闘型のレムは全体的に金色の表面をしており、ゴオと同様に顔の部分にはセンサーを備え、黄金の能面のようなものですべてを覆われていた。ゴリマッチョと評せるように両手だけではなく、肩や太もも部分にも銃火器を装備し、後ろに太ももよりも太い尻尾のようなものも出ており、銃火器を使う際の反動をその尻尾で受け止めているようだ。
「うーん……」
ムツキは苦戦していた。正確には、負けることは絶対にないが、まともに戦えないために苦労していた。
「み……見えない……」
遠距離戦闘型ゴーレムのレムが開始直後に煙幕を張ったことで、ムツキは周りがまったく見えなくなっていた。一方の近接戦闘型のゴオは赤外線センサーか超音波センサーか、つまりは、人感センサーの類を備えているようでムツキの動きに合わせて正確に動いていた。
彼は煙幕を風で吹き飛ばそうと試みたが、空調が煙幕の量に対応しきれずに煙が滞留して、吹き飛ばす度にレムが再び煙幕を張るために煙の濃度が増すばかりなので途中で諦めてしまった。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
ただし、ゴオの攻撃もまた様々な攻撃を無効化するムツキの前では無力に近く、先ほどから左手の装備を変えつつ、ムツキへの有効打を模索しているようだった。
「たまに攻撃できてもなんか手ごたえがなくて、ダメージ入っていないみたいなんだよな……」
ムツキの認識している通り、彼の攻撃が入ろうとした瞬間にゴオの身体がそれに合わせてまるで溶けるように避けていた。
ゴオもレムもナノマシンという無数の細かなロボットの集合体であり、それぞれが独立したり従属したりすることで1体のゴーレムとして機能している。指令するナノマシンは都度決まっていて、その個体が消滅した場合に別のナノマシンが指令する機能を持たされる。
つまり、すべてのナノマシンを消滅させない限り、ゴーレムは止まることがない。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「レムウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
「定期的に叫んでいるのは何なんだ? 意味があるのか? ちょっと音が違う? うーん、分からない。鳥型のやつもどっか消えて、この煙幕の中じゃ全然分からないな……どうするかな……早くサラフェに追いつきたいんだけどな……」
ゴオとレムの連携は電波や光による通信のほか、音によるコミュニケーションによっても行われている。そのため、ゴオが離れた瞬間にレムが超精密射撃を行ったり、レムの方に攻撃が入りそうになった時にゴオが守りに入ったりと連携が上手く取られているのだ。
相手がムツキでなければ、ゴオとレムは既に任務を終えていたはずだった。まったく自分たちの攻撃をモノともしない彼に対し、ゴオとレムは次のフェーズへと移行した。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「レムウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオレムウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
次の瞬間、ゴオがレムへと駆け寄り、レムがいくつかのパーツになると、ゴオに着装されていく。全体的に緑がかった色合いへと変容し、腕が4本に増える。
「合体した!? ちょっとカッコイイ! でも、合体したらゴーレムって叫ぶのか……俺だとすると、ムツキイイイイイイイイイイイイイイッ! って叫んでいる感じなんだよな……」
ムツキが少しくだらない想像をしていると、ゴーレムのフルバーストが彼へと襲い掛かる。数分にも及ぶ銃弾やビーム砲の嵐に、ゴーレムが撃ち尽くす頃には硝煙も周りに立ち込めていた。
しかし、攻撃の嵐が止んだ頃には、彼が平然とした様子で立っており、申し訳なさそうに頬をポリポリと掻いていた。
「ゴオレムッ!?」
「いや、まあ、どうなろうと当たらないんだけどな。だけど……せっかくのサラフェのコーディネートに変な臭いがついたな……ちょっとだけムッとするな……」
ムツキの表情に怒りが混じり、彼の魔力の放出量が少し上がる。
ゴーレムに感情はなく、人の感情も判別できないが、魔力上昇に危険予知機能が働いたのか、思わず後ずさっていた。
「分かっているだろうが、これは高くつくからな?」
ムツキは瞬時にゴーレムの前に現れる。合体していたはずのゴオとレムが危険と判断して、とっさに分離して複数体の小さなゴオとレムが所狭しと駆け回っていた。
「ゴオオオオッ!」
「ゴオオオオッ!」
「ゴオオオオッ!」
「ゴオオオオッ!」
「レムウウウッ!」
「レムウウウッ!」
「レムウウウッ!」
「レムウウウッ!」
「っ! 今度は分裂した!? 小さくて攻撃が余計に当てにくくなったぞ!」
ムツキが小さなゴオとレムにまごついていると、複数体のゴオとレムがそれぞれ集合し、元の大きさのゴオとレムに戻った。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「レムウウウウウウウウウウウウウウウッ!」
「元に戻った!? って……俺、遊ばれてないか?」
ムツキは先に進めない状況に少し焦りを覚えつつも一人では状況を打破できずにいる。
単純にすべてを壊すことが可能なら、最強であるムツキの右に出る者はいない。しかし、研究施設を破壊するとどうなるか分からないため、この部屋の中でゴオとレムを上手く倒す必要がある。その方法が今の彼には思いつかなかった。
「くっ……どうすればいいんだ」
「よぉ、ムツキ、バカみたいに苦労しているみたいだな……さて、俺の席はどこだ? 観覧席か? 実況席か? それとも、華やかな舞台でも用意してくれているのか?」
「アニミダック!」
硝煙の薄もやがまだ立ち込めている中、アニミダックが自身の出す触手に座って足を組み、腕組みしながら表情には不敵な笑みを浮かべて現れた。
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