4-38. 真面目だから服装選びも真剣だった
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楽しんでもらえますと幸いです。
昼過ぎにムツキとリゥパが家に戻ると、試練くんが待ち構えており、大きな声をあげた。
「ハイ! テス! テス! アー、コンカイモ、シレンノ、クリアヲ、カクニン、デキタゾイ! ジュンチョウ、ジュンチョウゾイ! ツギノ、シレンハ、ホンジツチュウニ、アオガミノオンナニ、ツタエルゾイ! タノシミニ、マツト、ヨイゾイ!」
試練くんが前回同様に成功のくす玉を開けている。試練の突破を嬉しそうにしているので、レブテメスプとは完全に独立した存在なのだと周りからも理解され始めている。
「そういえば、今回は直接見てないけど、試練をクリアしたって、よく分かったな?」
ムツキが何気なくそう質問すると、試練くんが少しムッとしたようで、腕組みをして喋り始める。
「フン! クリアシタカドウカハ、ミレバワカルゾイ! アナドルデ、ナイゾイ! ナンナラ、ソノアトノコトモ、ワカルゾイ?」
試練くんがニヤリとすると、ムツキとリゥパがドキリとして、一瞬、身体が跳ねる。
「その後のこと?」
近くで聞いていたナジュミネやコイハ、メイリが怪訝そうな表情でムツキとリゥパを見る。2人は決して目を合わせも反らしもせずにナジュミネを見るようにした。
「いろいろと話し合ったんだ」
「…………」
「…………」
ムツキの言葉に、コイハとメイリはじぃっと無言で見つめている。
「……そうなのか。いろいろとあるのだろうな。2人ともお疲れ様」
「そうね……そうだ……今回、逃げてごめんね」
「なに、気にするな。試練を目の前に誰でもいつでも立ち向かえるとは思っていない。それに、最終的に試練を乗り越えて戻ってきてくれたのだから、そういうことは言いっこなしだ」
「……ありがとう」
ナジュミネはリゥパを見て、何かを感じたようだが、それ以上の追及をせずに、また、昨日の逃走にも何一つ言わずに済ませた。それを見て、コイハやメイリも何も言わなかった。
「さて、では、ムツキさんにはお風呂に入ってもらってから、サラフェとお着替えをしましょう。昨日は家に戻られなかったからか、やはり少し汗の臭いがします」
「え……分かった。でも、リゥパが先の方がいいか?」
サラフェの指摘に、思わずムツキは自分の衣類の臭いを嗅いでみるもよく分からなかった。彼はリゥパに訊ね、彼女は首を横に振った。
「私はムッちゃんの後にお風呂に入るわ。それまで自分の部屋で休もうかな」
「分かった」
リゥパは手をひらひらと振りながら、先に自室へと戻っていく。ムツキは何匹かの妖精と連れ立ってお風呂にゆっくりと浸かった後、さっぱりした身体と表情のまま、サラフェの待つ自分の部屋へと向かう。
ムツキの部屋では、ケットとサラフェが衣類をいくつも広げながら、あれやこれやと相談していた。
「さっぱりされたようですね。さて、では、ムツキさんを着替えさせましょう。ケットさん、よろしくお願いしますね」
「分かったニャ」
ケットは既に候補から外れたものをしまいつつ、決めきれなかった候補の衣類たちをムツキに合わせるように持って動かしている。
サラフェはそのムツキと重ねられた衣類の雰囲気を眺めつつ、自分の中での最高のコーディネートを決めていく。
「どうかニャ?」
「うーん。リゥパさんのコーディネートでロングも良いと思いましたけど、やはり、サラフェはショートがいいと思いますね。ただ、あまり足を露出させるよりも……ここはソックスをニーハイにしてしまいましょう。黒のニーハイはありますか?」
「あるニャ!」
半分以上、なされるがままになっていたムツキもニーハイソックスという単語を聞いて、目をぱちくりとさせて、サラフェの方を見ている。
「え、ニーハイ? そういうのは女の子のじゃないのか?」
「いえ? そんなことありませんよ? このコーディネートなら全然あり得ますね。さて、黒のニーハイソックスであれば、ショートパンツはベージュくらいにしておきますか。あと、長袖の白シャツ、それと……これなら、オプションにハンチング帽とサスペンダーでバッチリ決めましょう。貴族の男の子、ハンティングコーデ、でしょうか」
じっくりと吟味された衣類は徐々にその統一感が出てくる。
「ジャケットはどうかニャ? ベストもあるニャ」
「ジャケット……それもいいですね。ベージュか、それより少し濃い目の茶系でありますか?」
「あるニャ! ニャいニャら作ればいいニャ!」
「それは頼もしいですね。サラフェは裁縫スキルがないですから」
こうして、サラフェが選んだムツキのハンティングコーデが決まった。
「なんだか、統一感はあるな……」
思ったよりもニーハイソックスがバッチリと決まった自分に驚くムツキだった。
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