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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第4部4章 女の子たちに課せられる試練(リゥパの章)

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220/360

4-32. 逃げるから悩み始めた(1/2)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 世界樹の樹海。ムツキがリゥパを探し回って数時間が経過しており、朝は昼へと姿を変えていた。彼は今歩きながら、ナジュミネと【コール】でやり取りをしている。


「旦那様、リゥパを見た者はいないようだ」


 ナジュミネは家に待機しているが、ユウやケットなどの助力を得ながら、樹海に棲む妖精族の多くと連絡を取り合っている。


「そうか……」


 ムツキはリゥパのことを心配している。


 もちろん、すぐに終わりそうな試練が長引いてしまい、やきもきしているのも事実である。しかしながら、家から逃げてまで拒否している彼女のことを考えると、今の状況はただただ彼女を追い詰めてしまっていないかとも考えてしまう。


「乗り越えられない試練は与えられない……か……」


 ムツキはボソッと誰にも聞こえない声で呟く。そのような言葉を前の世界で聞いたことのある彼だが、この状況にも当てはめてしまってもよいものかと考え込む。


 試練に対して、ナジュミネは積極的だった。それに対して、リゥパは消極的である。決して、難易度の問題ではなく、心持ちの問題だ。どんな試練も消極的では乗り越えられないものだと彼は感じている。


「もう少し索敵範囲を広げる必要があるかもしれん」


「索敵って……リゥパは敵じゃないんだぞ……」


「あぁ……すまない、言葉の綾だ。また何かあれば連絡してくれ。こちらは待機する」


 ムツキはリゥパのことを心配していたためか、何の気なしに放ったナジュミネの言葉を少しムッとしながら拾ってしまった。


 一方の彼女も彼の心配とそこからくる苛立ちを感じ取ったのか、少しばかり語気を弱めた声を漏らして謝る。


「わかった。さっきは、その……言い方がきつかったな……ごめん……いろいろとありがとう。助かっているよ」


 ムツキはムツキで、先ほどの自身の言い方にマズさを感じたのか、間髪入れずに謝った。


「旦那様」


「ん?」


「リゥパを安心させてやってくれ……妾には仔細まで分からぬが……頑なに言わないのは単なる数字だけの話ではないのかもしれぬ……」


「そうだな……がんばるよ」


 ムツキはナジュミネとの【コール】を終わらせ、目の前で待機している山吹色の一角ウサギ、アルの方を向く。


「アル、警備中にすまない」


 アルは普段から家に長くおらず、主に外敵が樹海に入ってこないように樹海の警備を担当している。試練くんが試練を言い渡した時には、既に家にいなかったために手伝えるのだった。


「いえ、マイロードのためならば、喜んで引き受けましょう。それに樹海内であれば、お任せください。しかし、リゥパは本当に樹海に逃げ込んだのでしょうか?」


 アルは決してリゥパが逃げ込んでいないのではと疑っているわけではない。むしろ、彼も彼女は樹海に逃げ込んだと確信している。ただ、その考えに別の視点が混ざれば、別の解釈もできると考えて、あえて、その言葉をムツキへと投げたのである。


「リゥパは積極的な性格だけど、絶対に危ないと思ったことはしない。だから、見知らぬ人族領や魔人族領には逃げ込まないと思うんだ。これは他のみんなとも同じ意見だったから、間違いないと思っている」


「確かにそうですね。特に今の彼女は不安が大きいでしょうし、安心できる樹海に逃げ込む可能性が最も高いですね」


 この解釈がルーヴァと少しばかり異なるのは偶然か必然か。しかし、実際にリゥパが樹海にいるのは間違いない。


「そうなんだ。正直なところ……試練を終わらせるために言ってほしい気持ちと無理強いさせたくない気持ちが俺の中にあって、ごっちゃになってて……キルバギリーのこともあるから、どうしても試練を全部クリアしなきゃいけないんだけど……なんか……なんて言えばいいか分からないが……」


 ムツキの優しさが優柔不断という悪い方に出始めた。自分の周りにいる人が誰も傷付かないようにと彼は願うばかりに、その天秤の支柱の下で潰されそうになる。


 アルは彼を見つめて優しく微笑む。


「マイロード。無理に感情や思いを言葉にして表現する必要はありませんよ。そして、気持ちは分かります。試練とは本来、自らの意志によって立ち向かうもの。それを周りが強要することが果たして正しい試練の在り方と言えるのか……。私にも分かりません。ですが、大事なことは、マイロードの今のその気持ちをリゥパに伝えることです。それを聞いて、彼女がどう思うかは分かりませんけどね」


 アルは迷える主人をそっと支える執事のように振る舞う。ケットが迷った時もアルはいつもクーとともにそっと寄り添い、事の最後まで支えてきた。


「ありがとう。だけど、俺、ワガママ……というか欲張りだよな」


「まあ、そういう時がたまにもあってもいいでしょう。リゥパは案外押しには弱いみたいようですからね。ワガママを通せば、折れてくれるかもしれませんよ?」


「俺のために折れてほしくはないけどな」


「ふふっ……。それこそ、欲張りというものですよ」


 ムツキは頬をポリポリと掻く。


「難しいな……」


「伝えること、そして、押し付けないことです。リゥパも分かっているはずです。今の状況でどうしたらいいのか。だけど、気持ちの整理がついていないのでしょう」


「アル様の言う通りねー」


「ルーヴァ!」

「ルーヴァ」


 ムツキとアルの前に、リゥパの伝言を携えたルーヴァが現れた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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