4-27. まさかの試練だったから逃げた(1/2)
約1,500字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
ムツキやナジュミネ、ユウ、モフモフ応援団やお世話係の妖精たちが彼の家に戻ると、心配そうにしていた全員が駆け寄って来た。
リゥパはすかさず彼を抱き上げて、頬どうしを摺り寄せた。メイリもリゥパと同じことをしようと思ったが、ナジュミネを見て目を真ん丸にし始める。
「……えっ……姐さんがめちゃくちゃ強くなってる! 倍とかじゃきかないくらいにパワーアップしてる!」
「だな……姐御が一気に桁違いの戦闘力を手に入れたな……」
ナジュミネのパワーアップに、メイリとコイハは驚きを隠せなかった。
「む。メイリ、コイハには分かるのか?」
「獣人族や半獣人族は鼻が利くからね。魔力とか気力だったかな、とか、そういった気配に通じるものには敏感だよ?」
「姐御は特に力を抑えないから分かりやすいしな」
「まあ……さすがに、こんだけ違うと、私でも分かるわよ? 露骨に驚かないだけよ?」
「サラフェも少しだけですが感じ取れますよ。ナジュミネさん、とてもお強くなりましたね」
実際、コイハやメイリは敏感に感じ取れるが、リゥパはそれより感度が落ち、サラフェはそれに輪をかけて感度が落ちてしまう。それは魔力や強さの感知が種族によって、感度に違いが生じるためである。
ただし、今回のナジュミネのような極端にパワーアップした場合、リゥパやサラフェでも容易に感じ取ることができる。
「むむ。そうか。意識していなかったが、少し力を抑える訓練をしないとな」
「ナジュミネとは戦闘力で大きく離されちゃったわね……まあ、本来、鬼族とエルフ族では比べるべくもないわね。さーて、それはともかく、次は私の番ね」
ほぼ互角か少しリゥパの方が見劣りする程度だった2人の力量差がいつの間にか、大きく離されてしまい、リゥパは一抹の寂しさを覚えつつもナジュミネをさらに頼れるようになった仲間として認識する。
「リゥパの試練か……なんだろうな?」
「よいしょ、と。サラフェもたまにはムツキさんを抱っこしましょう。ところで、リゥパさんもご両親と闘うとかになるのでしょうか?」
ムツキは疲れたのか、ソファに座り、足をパタパタと遊ばせ始める。それを見たサラフェが珍しく彼を軽く持ち上げてから、自分の膝の上に乗せるようにソファへと座った。
「…………」
彼は失礼だと思ったので絶対に口にはしないものの、彼女の上はとても座りやすいなと思った。理由を訊ねられた途端に何も言えなくなるので、座りやすいとも言わない。
「うーん……ママは闘えないし、パパは前にケッチョンケチョンにやっつけちゃったから、そういうのじゃないかも?」
「ん? リゥパは父親と既に闘っていたのか?」
コイハとメイリがケッチョンケチョンという言葉に苦笑いする中、ナジュミネは何気なく首を傾げて訊ねる。
「あー、そうそう。結婚してからなんだけど、結局、結婚は認められたけど、きちんと闘えとパパに言われて、仕方なくね。その時に、ムッちゃんの愛情がこもった身代わり人形を大事に使わせてもらったのよ」
「俺が込めたのは魔力だけどな。あと、お義父さんの身代わり人形はめちゃくちゃに酷使されたけどな……」
ムツキは当時のリゥパとリゥパパパの神前試合を思い出す。お互いにエルフ族の族長の系譜しか使えない固有魔法【ミリオンアロー】を使い、無数の矢をお互いに降らせ続けていた。
その後しばらくしてから、リゥパがさらなる覚醒を果たし、上位互換の【ビリオンアロー】を体得したことで、降参を宣言していたリゥパパパをこれでもかと何度も蹂躙していたのだった。
「…………」
ムツキはその当時、リゥパパパは少し震えながら、二度とリゥパと闘わないと心に誓ったと語っていたことを鮮明に思い出していた。
「なるほど。旦那様が前に使ったことがあると言っていたのはそれか」
「あぁ……本当に改良できた身代わり人形があって良かったと思ったよ……」
さすがにその光景を見たムツキは、リゥパを怒らせたくないなと思ったものである。
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