4-Ex6. 服装がいろいろあるから話し合いになった(2/2)
約2,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
「話を戻すか。さて、ちょうど分かれてしまったな」
「そうね。今は6人だものね……」
ナジュミネとリゥパがそう呟くと、全員がすやすやと眠っているようなキルバギリーを見つめる。眠っているように見えるが、彼女は今、自分の記憶を失わないように必死に防衛プログラムで抵抗している。
「……同数じゃ決まらないな……キルバギリー……」
「…………」
ムツキは垂れているキルバギリーの前髪をさっと戻しながら、寂しそうな表情で彼女を見つめる。それはどんなゲームになるか分からない不安もまた映しているようだった。
サラフェは彼の注意を彼女の方に向けるため、2回ほどまるで拍手をするかのように手を叩く。その後、彼女はコホンと小さく咳をする。
「ほら、ムツキさん、そんな悲しい顔をされてしまうとキルバギリーが困ってしまいます。ムツキさんが大好きなモフモフ応援隊もいつも笑顔で応援しているでしょう?」
「そう、サラフェの言うとおり、こういう時こそ、明るく笑顔に、だよ! ダーリン。笑う門には福来る、って言うでしょ?」
ムツキはしばらくしてから、顔をマッサージするかのように頬をぐにぐにとしてから、ゆっくりと優しく微笑んだ。
「ありがとう……あ、もしかして、服選びのこの他愛もないやり取りも俺のことを考えて……」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
ムツキが今までの彼女たちのやり取りをそのように解釈して訊ねてみると、彼女たちは全員無言で少しばかり彼から視線を外してしまう。
彼の衣服は間違いなく彼女たちの趣味全開の主張である。さすがに無邪気な笑顔をした彼に誤魔化すための嘘を吐くこともできず、ただただバツ悪そうにするしかなかったようだ。
「え? あ? 違う?」
「……さて、衣服の話に戻そう。妙案を思いついたのだが、こうしようじゃないか。ゲームを受けている者の好みで旦那様に着せ替え可能というのはどうだろうか」
「……え?」
ナジュミネがこの問題を解決できる最高のアイデアを思いつき、全員に提案する。もちろん、ムツキの意見はまったくなかったことになる提案でもある。
「もちろん、それでゲームを意図的に引き延ばしたと多数に判断された場合は権利をその時点ではく奪するぞ。大目的を私利私欲で失念しては困るからな」
「いいわね。そっちの方がやる気も上がるわ」
「それなら賛成です」
「あぁ、名案だ。俺も賛成だ」
「さっすが、姐さん、士気の上げ方を知っているね!」
「ちょっと、私、サポーターだから、私の好きな服を着てくれないじゃん! そりゃ、リゥぱんやメイりん師匠と似ているかもだけど!」
「えーっと……」
釘を刺すこともナジュミネは忘れておらず、その彼女の提案にユウ以外の女の子が肯く。そう、サポーターの彼女にはその権利がないと思われるので当然反論する。
なお、その近くで何かを言いたそうなムツキがいるも、誰も気にした様子はない。
「ふふっ……そうだな。ユウは妾たちとは別になるが、妾なりの最高の提案があるぞ」
「最高の……提案?」
ナジュミネの自信ありげな強気の発言に、ユウの喉がゴクリと鳴る。他の女の子たちもこの状況で彼女の提案がどうなるか気になっている。
「……旦那様の毎日のパジャマを選ぶ権利、さらに添い寝独占権も付けよう。あ、モフモフは旦那様と要相談だがな」
ユウは眉間を射貫かれたかのような衝撃で後ろに倒れ、ソファの柔らかなクッションに包み込まれる。彼女は目を見開いたまま、両腕を天に向かって振り上げる。彼女の喜びように、ナジュミネは微笑む。
「……なんたる破格! いいの!?」
「サポートをしっかりとしてもらいたいからな。皆も異論ないな?」
実はナジュミネが先ほど、既にユウ以外の女の子たちと話をつけていた。
友好度上昇の効果もあって彼女たちはムツキととても仲良くしたいが、残念なことに今の彼は男女の営みをよしとしないため、それに類することができないのである。そのため、彼女たちにとって、彼と夜に一緒にいることが生殺しに近い状態になってしまうのだ。
その半ば無駄になりかけた状況を有効活用し、なおかつ、ユウに喜んでもらえるのだから、ウィンウィン状態である。
「んふふ……しばらく独り占めで添い寝……パジャマ選び放題……全力でサポート頑張っちゃうぞ♪」
ナジュミネは計画通りと言わんばかりに、ニヤリと笑う。
「えっと、みんな……俺の……意見は……?」
ムツキが少しうるうるとした表情で話をひっくり返そうとするので、ナジュミネは彼をそっと抱きしめて、耳元で囁く。
「旦那様、しっかりと妾たちやユウのサポートを頼んだぞ。もちろん、嫌ではあるまい?」
「あ、あぁ……嫌じゃないよ……そうだな……サポートがんばるよ」
「……ムツキはなんだかんだで難儀だな」
「前からそうニャ……みんニャにお世話になっているのと、みんニャのことが好きだからって、ほとんど断れニャいニャ……」
ムツキは完全に丸め込まれ、それを遠くから掃除をしつつアニミダックとケットが何とも言えない表情で眺めていた。
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