4-17. 楽しみたいからとゲームを提案された (2/3)
約2,000字でお届けします。
楽しんでもらえますと幸いです。
試練くんが1人で様々なポーズを取る中、レブテメスプの説明が始まる。
「これは実にうまくできている作品でね。使用者の成長を助けるために作ったものさ☆ 使用者、つまり、試練を受ける人がこの試練くんを使う場合、試練くんは使用者を詳細に隅から隅まで分析して、使用者に一番合ったお題を出してくれるんだよ! だから、これをクリアするということは使用者が成長できたってことになるのさ☆」
「それは危なくないのか?」
ムツキはただその1点のみが気になっている。そこだけでも確約されれば、彼は女の子たちに相談をしようと考えている。
「いや? そんなわけないじゃん? 試練なんだから、時には危なかったり何かを失ったりすることだってある。その何かが命ってこともあるさ☆」
「命だと!?」
ムツキの中で答えが明確になった瞬間だった。それと同時にナジュミネが周りの女の子たちとアイコンタクトを始める。
「オレ様たちがゲームに使うからって、試練に失敗して残念だったね☆ で済むかどうかは分からないね! 一番合ってる試練だからって、ちょっと背伸びで済むこともあれば、そうじゃないことだってあるだろ? そもそも、試練くんの出す試練じゃなくたって、生きている間にちょっとしたことで死ぬこともあるんだから、別にいいじゃないか☆」
「冗談じゃない! それなら、俺は!」
「待ってくれ、旦那様」
ナジュミネがムツキの言葉を遮った。彼が後ろを振り返ると、女の子たちが全員ムツキに向かってゆっくりと頷いている。
「ナジュ……みんな……まさか」
「そのまさかだ。妾たちは受けると決めたぞ」
「ムッちゃん、こんな大事なことを一人で決めるなんて、優しいんだか勝手なんだか」
「優しいのはいいことですが、サラフェたちに相談もなしに決めてしまうのは減点です」
「少しは俺らを頼ってくれよ。俺らだってハビーのためなら、さ」
「そうだよ! ダメダーリンめ! すぐに1人で突っ走るのは良くない! ……みんなで決めようよ」
「そうですよ、マスター。私たちにだって、想いや考えがあります。マスターの良かれと思ってしていることが私たちにとってもそうなのかは相談してくれないと分からないものですよ?」
「私は今回、サポーター側だけど、私もみんなに賛成! 神様が全力でサポートするんだから安心して試練を受けさせなさい!」
先ほどからナジュミネが他の女の子たち全員と顔を見合わせて、1人ずつと肯き合っていた。
彼女たちはムツキの言葉を嬉しく思っている。しかし、彼女たちが今一番に望むことはムツキが元に戻ることだ。決して自分たちが彼の犠牲の上で安全に過ごすことではない。
「ダメだ……何があるか分からないんだぞ?」
「分かっている。しかしだな、旦那様が元に戻ることは、妾たち自身のためでもある。それに成長ができるんだろ? 一石二鳥じゃないか。ところで、レブテメスプ。妾たちが勝てば、きちんと旦那様を元に戻すと約束できるのだろうな? まさか、途中や最後に反故にすることはなかろうな?」
ナジュミネは、優しい目でムツキを見ていたが、レブテメスプの方を向いて彼を睨み付ける時は一変して怒り混じりの目つきに変わる。彼女はムツキをこのような目に遭わせているだけで彼を許しがたい存在と認識していた。
「おっと、怖い顔をしないでほしいね! その心配はご無用☆ 試練の邪魔はするかもしれないけど、一度立てた約束は守るさ。さすがに嘘つき呼ばわりされたくないしね☆」
レブテメスプがおどけて、身を竦めるようなポーズを取りつつUFOの中に少し身体を戻す。
「まあ、今はその言葉を信用するほかないか……さて、旦那様、そういうことだ」
「俺は皆に危険な目に遭ってほしくない。誰かが傷付くかもしれないのを見たくない」
ムツキは悲しそうな目で訴えかける。その目に、女の子たちが全員、心をぐらつかせてしまうが、強い意志を持って首を横に振った。
「旦那様、そんな顔をしてないでくれ。それに……卑怯な言い方かもしれないが、妾たちは一言の相談もなかったことに傷付いているぞ?」
ムツキはハッとする。
「それは……すまない……ごめん……でも……」
「でも、じゃない。妾たちの意志は固い。旦那様は妾たちを信用して、レブテメスプにただ一言、受ける、と言えばいい。もちろん、旦那様やユウの手厚いサポートを期待しているぞ」
「分かった……。ここまで言われてしまったら、な。レブテメスプ、ゲームを受けよう」
女の子たちが全員ムツキの周りに集まる。ムツキが説得するのではなく、ムツキが説得される形でゲームをすることになった。
「そうこなくちゃね☆」
レブテメスプは嬉しそうにクラッカーを1つ鳴らした。
最後までお読みいただきありがとうございました!




