4-13. 自分のしわざと気付かれたから派手に登場した (1/3)
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楽しんでもらえますと幸いです。
全員の頭上、突如、中空に現れたのは半球のカプセル型UFOに乗った少年だった。
幼くなっているムツキによく似たその少年は、リゥパの薄緑に似た黄緑色の髪をマッシュルームカットにして、目が丸っこい優しい形をしており、さらにキルバギリーに似た灰色の瞳を有している。
服装が半袖の白シャツに黒色の半ズボンとおめかしをした雰囲気で、その上に白衣を着込んで、まるで子ども博士といった見た目である。
「バレて飛び出て、ジャジャジャジャーン! さらに、パンパカパーンと大音量で、レブテメスプ様のご登場じゃーん♪」
そのセリフとともに、何もない所からクラッカーや爆竹、ラッパの音がいくつも鳴り響き、くす玉が現れて割れたと思えば、中から「レブテメスプ様のおなーりー」という意味を持つ古代の人族の文章で書かれた垂れ幕とこれでもかという量の紙吹雪がどさっと出て舞い始める。
ちなみに、これを後で片付けることになるのはアニミダックである。
「ふっふっふ……どう? 登場シーンにインパクトあったでしょ? やっぱ、これくらいじゃないとね☆」
「レブテメスプ!」
「レブテメスプ!」
「…………」
ユウとアニミダックがその名を叫び、キルバギリーはコイハのモフモフの中にこそこそっと隠れた。コイハは何かあるのかと察して、その大きなモフモフのしっぽで彼女をできうる最大限に隠してあげる。
レブテメスプは、ユウが始めに創った4人の内の1人である。アニミダックが魔人族の始祖に対し、彼は人族の始祖だ。もちろん、彼もまた彼女の元カレでもある。
なお、始祖と言っても、4人とも子どもがいるわけではなく、彼らをベースに次々と人族や魔人族が生まれたことからそう呼ばれているだけである。
人族はほぼ単一の種族に対し、魔人族は多種多様な種族がいるのも特徴だ。
「ふっふっふ……久しぶりだね……ユースアウィス、アニミダック……」
カプセル型のUFOの中で、レブテメスプが全員を見下ろすようにして話しかけてくる。ムツキは新たなユウの元カレの登場に思わずこめかみに手を当てた。
「また、ユウの元カレか……これまた、とんでもないのが登場したな……」
「レブテメスプとやらは、今の旦那様とそっくりだな……ちっちゃくてちょっとかわいいかもしれん……」
ナジュミネがムツキを抱き締めながらそう小さく呟くと、その呟きがムツキの耳に届いて、彼は首を動かして彼女の方を見つめながら口を開く。
「……ナジュ、俺とあいつ、どっちがいいんだ?」
ムツキは口を尖らせて、少し不満そうにナジュミネにそう訊ねていた。彼はほどほどに独占欲があって、自分と何かが比較された場合にこう訊ねてくる面倒くささがある。彼は人として規格外の強さを持っているが、まだまだ人格に人間臭さや人としての弱点が残っていた。
「ムッちゃん、妬いているの? かわいー♪ 私はもちろんムッちゃんよ♪」
「妾だって、旦那様に決まっているだろ! 妾の愛を疑うことは旦那様でも許さぬぞ!」
「僕もダーリン派だよー♪」
「そ、そうか……ありがとう……嬉しいよ……」
ムツキはナジュミネだけに訊ねていたはずだが、彼女だけでなくリゥパやメイリまで反応して、ちやほやされた感じになって少し嬉しくなってもじもじする。
「旦那様、かわいいーっ♪」
「ムッちゃん、かわいいーっ♪」
「ダーリン、かわいいーっ♪」
反応した3人は彼にかわいいと連呼していた。
「なあ、さっきから思っていたけど、俺は男だぞ! 子どもの姿とはいえ、かわいいは……ちょっと恥ずかしいし、かっこいいがいいんだが……」
「えー、だって、今のダーリンはかっこいいよりかわいいんだもの!」
「そうよね。かわいいものはかわいいわよね。それはそうと……ナジュミネ、そろそろ、落ち着いてきたんじゃない?」
「……ソンナコトハナイゾ」
「あ、姐さん、絶対に正気に戻ってる! ずるい! スキルの影響にかこつけて、ダーリン独占してる! 権利の悪用は許さないぞー!」
きゃっきゃっとしたやり取りで話が中断されていたユウ、アニミダック、レブテメスプが何とも言えない表情でムツキたちの方を眺めていた。サラフェやコイハ、ケット、キルバギリーもこのテンポがズレた2つの場の雰囲気には何となく居心地の悪さを感じる。
「……なるほどね……あっはっは……」
やがて、それに耐えきれなくなったレブテメスプがいくつものクラッカーを取り出して、派手な音とともに自分に再注目させる。
「って、これじゃ、話が進まないね! 登場したときくらい、オレ様の方に集中してくれない!? せっかくこんなにド派手に登場したのにさ! オレ様を潰さないでくれる!?」
「あ……すまん……」
ムツキは思わず謝った。
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