4-10. できる人が限られているからすぐに誰のしわざか分かった (1/3)
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楽しんでもらえますと幸いです。
ムツキの家のリビング。
ソファにナジュミネが座っており、彼女の膝の上にはちょこんとムツキが座らせられている。そう、彼女が彼を抱きしめていて離そうとしない。彼はまだ服装が古代ギリシャ人のような布を巻きつけただけのものである。ケット率いる妖精たちが急いで服を仕立てている。
その周りにはハーレムの女の子たちが全員集まっており、ソファの周りの密集度はいつも以上だった。リゥパ、メイリは瞳をキラキラとさせながら、子どものムツキを見つめている。コイハも尻尾を振ってそわそわしていた。サラフェも表情や態度に出てはいないものの集まってきている以上、小さくなった彼に興味津々である。
その中で、幼女姿に戻っているユウと、キルバギリーは神妙な面持ちで小さくなった彼を見つめている。
「きゃー♪ ムッちゃん、かわいいー♪ こんなにちっちゃいムッちゃん、初めて見たー♪ 私もだっこしたーい♪」
「ダーリンの子ども姿を想像したことあるけど、その何倍もかわいいよ♪ この時期のダーリンをユウが独り占めしていたのも分かるよ! 僕もダーリンだっこしたーい♪」
「ちょっと……2人とも近いんじゃないか?」
「えー、照れてるー♪ かわいいー♪」
「えー、照れてるー♪ かわいいー♪」
リゥパとメイリがずずいと、人一倍にムツキへ顔を寄せている。2人は今にも彼に頬ずりでもせんばかりの勢いだ。これには慣れているはずの彼も少し気恥ずかしそうにし、彼の表情と仕草を見て、2人のテンションはさらに上がっていた。
「ダメだ! 今の旦那様は妾のものだ! 離したくない!」
ナジュミネはムツキを取られまいとして、彼をさらにぎゅっと抱きしめる。彼は心配いらないと言わない代わりに、そっと彼女の腕に自分の手を当てて、しっかりと掴むようにしていた。
かなり強い友好度上昇のスキルにあてられてしまったという彼女の状況を知っているため、文句を言う者はいなかった。もし自分が今の彼女の立場なら、と思うと、誰もが彼と引き剥がされてしまった時の悲しみを想像できてしまったからだ。
「ムツキさんは皆のものです」
「いや、姐御もサラフェもハビーをもの扱いするなよ……」
「同意です。マスターはものではありません。が、ものとして独占したい気持ちは分かります」
「いや、キルバギリーも怖えよ……」
サラフェ、キルバギリーの発言にコイハが思わずツッコミを入れる。
「みんな、ナジュはちょっと今、俺のスキルに強い影響を受けて、普段のナジュと違うんだ……今、俺が制限の指輪を着けているから、次第に落ち着くと思うから、それまでナジュのわがままをある程度聞いてあげてほしい」
ムツキが自分のせいだとばかりにそう説明するので、誰もそれ以上のことは言えない。
「それはさっき聞いたわ。まあ、ムッちゃんが言うなら仕方ないわね……だっこしたい気持ちは止まらないけど、待ってあげるわ。ナジュミネが落ち着いたら、ぜったいにだっこさせてよね!」
「分かってくれて、ありがとう! あぁ、分かった!」
ムツキがニコッと満面の笑みで全員を見る。全員が赤面し、彼女たちの心は誰もが大きく揺れに揺れていた。
リゥパとキルバギリーは目を真ん丸にして驚きにも似た表情であり、サラフェとコイハはどう対処すればいいのか分からないといった困惑も混ざった表情になり、メイリとユウは笑顔を貼り付けたままで自分の身体のどこかをぎゅっと強めにつまんで理性を保とうとしている。
「ちょっと、ムッちゃん! ……かわいすぎ! その笑顔、反則よ! そんな笑顔を見せられたら、そりゃ理性的なナジュミネだって、理性が崩壊するわよ! ……もう1回いいかしら?」
リゥパの言葉に全員が止めにかかった。
「リゥパ、ダメだよ! 無理だから……私が無理……」
「やめてください……」
「やめておきましょう」
「やめとこうぜ……」
「うん、僕もやめたほうがいいと思う。これ以上は無理……」
「そうね……私が間違っていたわ……私も耐えられないかも……」
あまりにも口々にそう言われるので、ムツキは首を傾げる。
「そうかな……いつもと同じように笑っているだけなんだけどな?」
「そんなことないよ! ダーリン、すっごくかわいい♪ ほっぺたとかお手々とかも大人の時と違って、少しぷにぷにしてるー♪ いつまでも触っていられるよー♪ というか、普段ならそんな首の傾げ方しないよね! 絶対に自分がかわいいって分かってるじゃん!」
ムツキは自然と子どもがするようなかわいらしい仕草をしていた。彼は今の自分が子どもの姿であることを自覚しているためか、それらしく振る舞おうという気持ちも入り混じっている。
「なんか、メイリの……迫力がいつもよりすごいな……」
ムツキはいつもより視線が下になっているからか、何がとは言わなかったが、迫力があると感じたようだ。
「ふふっ……しかし、ムツキさんがこんなかわいらしい姿になって、まるで弟ができたような感じがしますね」
「そうか……サラフェお姉ちゃん?」
サラフェの言葉に応じてムツキがそう彼女に言うと、彼女は膝から崩れ落ちた。
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