4-Ex2. 父親に後押しされたから少しだけ正直になった(1/2)
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楽しんでもらえますと幸いです。
サラパパの来訪してきた日の夜。ムツキはサラフェの部屋の前で、仔猫を2匹抱えながら、深呼吸をしていた。彼は何度深呼吸をしたか分からなかったが、やがて、意を決し扉をノックする。
「はい」
「サラフェ、えっと、ムツキだけど……ちょっといいか……な?」
ムツキは少し申し訳なさそうに後半は少しずつ声量が小さくなっていく。サラフェは彼の突然の訪問に驚きつつ、髪を少し整えて、パジャマにしている青色のワンピースが変じゃないかを咄嗟に確認する。
「……どうぞ、お入りください」
サラフェの了承の言葉がムツキの耳に届くと、彼はゆっくりと扉を開いて、するっと身を捩らせて部屋に入った。明かりを少し落とした仄暗い部屋、彼は扉をゆっくりと閉めた後にキョロキョロとせず、ベッドで腰かけている彼女の方をじっと見つめている。
一方の一緒に連れてこられた猫2匹は部屋をキョロキョロと見回して、周りを把握しようとしている。
「……どうかしましたか?」
「あ、いや……」
「にゃ、にゃー」
サラフェは寝る直前でいつものツインテールから髪を下ろした状態で、ふんわりとした青色のかわいらしいワンピース姿をしていた。
ムツキはいつもよりも大人びて見える彼女にドキリとする。たまに彼の部屋に添い寝に来る時はまた少し違うのでそれにも彼はドキッとしている。彼は分かりやすいほどギャップに弱いのだ。
「……そんな所に猫抱えたままで突っ立っていないで、こちらに来たらどうですか?」
「ありがとう」
「にゃー」
サラフェは自分の隣をぽんぽんと叩いて、ムツキを招き寄せる。彼は柔らかな笑みを浮かべて礼を言った後に、ベッドの方に近付く。途中に酸素カプセルのようなバカでかい装置があって、彼は一瞬それに目を奪われた。
しかし、話題にすると長くなりそうと判断し、今回は無視をして、彼は彼女の隣にゆっくりと腰かける。
「それにしても、珍しいですわね。ムツキさんが女性の部屋に来るなんて」
「え、まあ、女の子はプライベートがあるだろ?」
「みゅう」
ムツキはユウの教育により、男性はよほどのことがない限り、女性の部屋に入るべきではないと教え込まれている。それは、彼女の部屋が彼の姿をしたぬいぐるみやら写真やらで埋め尽くされているため、それらを見られないようにするための教育だった。
彼は真面目にそれを守り、極力、他の女の子の部屋に立ち入らないようにしている。
「男性にもあるとは思いますが……」
「一人じゃ何もできないんだから、俺のプライベートなんてほとんどないけどな……」
「にゃ」
サラフェは少し呆れたように言うも、ムツキの言葉に納得する。彼は1人で生きていけないのだから、まともなプライベートがあるわけもなかった。
彼女は、彼のハーレムやモフモフを周りに置いておきたい欲求は、彼の生存本能も関わっているのではないかと少しだけ感じるようになった。
「まあ、皆さん、ムツキさんが部屋に来れば喜ぶと思いますけど。っと、話を逸らしてしまいましたね。それで、どういったご用件でしょうか?」
「あ、あぁ……いや、お義父さんの話とかでもしようかなって」
「にゃー」
実のところ、ムツキはキルバギリーに頼まれたのだ。サラフェが少しでも素直になった今のタイミングで、彼女はムツキとサラフェの進展を狙った。
「お父様ですか?」
「あ、まあ、それだけじゃなくて、そのほかにもいろいろとあるけど、お義父さんの話もしたいかなって思って……」
「みゅう」
キルバギリーがナジュミネやリゥパに相談し、いろいろと調整をしてもらった上でこのお膳立てをしたのである。それを知ったムツキはそれに応えないわけにもいかないと思い、サラフェと少しでも夫婦らしい進展を目指してやってきた。
彼自身が思う最強の和みアイテムのモフモフを携えて、彼なりに万全を期したのである。仔犬や仔ウサギにしようかとも迷ったが、彼女が猫に少し興味ありそうに反応していたことを思い出して仔猫にした。
「あ、そ、その前に、この猫を一匹、はい。モフモフを撫でながら話すと心が安らぐぞ。ちょっと今日は猫吸いまですると、話にならないから、撫でるだけが良いと思うぞ」
「え? あ、まあ……はい。とってもかわいらしい猫をありがとうございます」
「にゃー」
サラフェは何故、仔猫を渡された上に、猫吸いがどうとか言われたのか分からないが、ムツキなりの優しさを無下にするつもりもなく、彼から猫を1匹受け取って撫で始める。
それからは彼の顔がパっと明るくなったので、彼女もまた嬉しそうな表情を返した。
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