3-49. いろいろあったが更生させることにした(2/2)
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楽しんでもらえますと幸いです。
ユウは姿勢を変えて、ムツキに抱き着くようにしながら彼の方をまじまじと見る。彼女は自分の意見を言う前に、勇気をもらうためか少し彼に甘えているように頬ずりをする。
それは彼女が彼や全員の顔を見ないようにしているようにも取れた。
「まあ、そうだよね……。私は……そうだね、アニミダックを置いてほしいかな」
「ユースアウィス……」
アニミダックは嬉しそうにユウの方を見る。ムツキは分かっていても、自分で提案したとしても、少しだけ寂しく感じた。
「……そうか」
「でも、あれだよ? 誤解がないように言うけど、アニミダックはみんなももう知っているように元カレなんだけど、でも、今は友達みたいなものだからね! 絶対にヨリも戻さないし! メイりん師匠が言っていたように、ちゃんと更生させるためだから! 今はムツキ一筋なんだからね! これは絶対! 私はもうムツキ以外を愛しません!」
「ユースアウィス……」
アニミダックは悲しそうにユウの方を見る。唯一の味方を失ったような絶望を湛えた表情をしている。
「よくよく考え……なくても、だいぶ残酷な検討をしているな。……好きな人が自分のことを好きじゃなくなっている上で、別の人とイチャイチャしているのをこれからも見続けるとか……更生とかそういう問題じゃなくて、ただの拷問じゃないか?」
「まあ……そういうことになるわよね……私も自分だったら……正直勘弁してほしいって思うわ」
ナジュミネがふと気付いたことを口にすると、隣にいたリゥパが同意して首を縦に振る。
「妾がそんな状況になったら……あぁ……考えたくもない……嫌だ……旦那様……妾を見捨てないでくれ……どうして……妾を捨てたのだ……一生を添い遂げると……誓ったのに……それにその女は誰だ……誰なんだ……! どうして、妾にこんな拷問を……そんなに妾が憎いのかっ!」
ナジュミネは思わず入り込んでしまったようで、急に膝から崩れ落ちて嘆き始める。ムツキは突然のことに目を丸くして驚き、リゥパ以外は不思議そうにナジュミネを見つめている。
「え、ナジュ、急にどうした? 見捨てるってどういうことだ? えっと……? 女? 拷問? 憎い? ごめん、俺、なにか言ったか?」
「あー、ムッちゃん、大丈夫よ。ムッちゃんは何も悪くないわ。ちょっとだけ待ってね」
「え、あ、あぁ……」
「ちょっと、ナジュミネ、一人で何をやってるのよ……戻ってきなさい。まあ、でも、そうよね……というか、元カレと伴侶が同居する状況自体、よく分からないのは分かるわ……」
「……ありがとう、リゥパ。旦那様、すまぬ。少しあらぬ妄想をしてしまっていた」
ナジュミネは立ち直り、リゥパに支えてもらいながらゆっくりと立ち上がる。少し前に勇ましい口上を述べていた姿とは似ても似つかない。
「そ、そうか。えっと、じゃあ、ナジュ、リゥパ、サラフェ、コイハはどうなんだ? 意見を聞かせてくれ」
「妾は決まっている。旦那様のしたいようにしたらいいと思う。妾は旦那様の意思を尊重したい。そのために全力を尽くそう」
ナジュミネは強い意志を持ってそう答える。
「私も賛成。ムッちゃんの言うことなら大抵許すわよ。ただ、私、ユウ様に似ているから、アニミダックに襲われちゃったらどうしましょう」
「そんなわけねえだろう……ユースアウィスの劣化……がっ……」
「ん-? 何か言ったかなー? 【マジックアロー】。あー、手が滑りそうだわー」
「……何も言っていない……です……」
「よろしい」
リゥパもアニミダックを足蹴にしての話し合いがあったものの、最終的にはムツキに同意した。
「他の皆さんが良いと言っているのですから、サラフェはどちらでも構いません」
「ま、まあ、いまさら、俺が出る幕もないが、俺もハビーの意見を尊重する。メイリが言ってるってのもあるけどな」
サラフェもコイハも異論がなかった。
「だ、そうだ。アニミダック、最後にお前の意見を聞きたい。俺はお前の意思も尊重するつもりだ。ここにいるか、去るか」
ムツキは最後にアニミダックに問い、アニミダックは息を小さく吐いた。
「……勝手にしろ」
「アー、ニー、ミー、ダッ、クー! ムツキにそんな言い方したらダメ!」
ユウがそう言うとアニミダックは急に泣きそうな顔になる。
「……ううっ……分かったよ……。どうか、ここに住まわせてください……。がんばって、更生もしますので、どうか、お許しください……お願いします……」
「そうか! じゃあ、アニミダックはここで更生するために住むってことで決定したぞ!」
「ニャんだかニャ……」
最終的に、更生内容としていくつかの条件を付けられて、アニミダックもこの共同生活の中に入ることになった。
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