3-37. 女の子たちは応戦していたが敵が卑怯だった(4/4)
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リゥパが冷静になった頃、ケットも回復し、全員が立ち上がれるようになっていた。
「ということは、メイリは、リゥパをメイリに変化させて、自分をリゥパに変化して連れて行かれたってことか?」
ムツキの問いかけに、全員がおそらくといった表情でゆっくりと縦に頷く。
「ナジュミネがキルバギリーと私……って、ややこしいわね、リゥパの姿をした私じゃない人を連れて行ったって言うなら、そうでしょうね。サラフェはサラフェ、コイハはコイハ、ナジュミネはナジュミネ、ケット様はケット様、クー様はクー様なら、ね。あ、先に言っておくと、私はメイリのイタズラじゃなくて、本当にリゥパだからね!」
「サラフェはサラフェです」
「俺は俺だな」
「オイラはオイラニャ」
「俺は俺だ」
「妾も妾だな。どうやら入れ替わったのは、メイリとリゥパだけのようだな。まあ、メイリは師匠と言われていただけあって、ユウを妹分のように可愛がっていたからな……」
ナジュミネは考え込むように口に手を当てつつ、メイリの心情を推測ながら代弁する。
「あと、サラフェほどではありませんが、メイリさんはキルバギリーともなんだかんだで連携できますからね。変化や弱化魔法にも長けていますし、攪乱や逃走を考えるならある意味、一番適役かもしれません」
サラフェはメイリを高く買っている。以前、自分が彼女を追った時に捕まえることができなかったことや先日のビーチバレーで負けたこともあって、戦い以外でならメイリが一番したたかなのではと思っていた。
「だけど、メイリ自体は強くないんだぞ! 頑丈じゃないし……」
「旦那様、落ち着け。【バリア】がある限り、ユウもメイリもキルバギリーも大丈夫だ!」
「やっぱり、ユウがいないのもアニミダックの仕業なのか!」
ムツキがナジュミネに詰め寄り、彼女は少し驚きつつも無言でコクコクと頷いていた。
「いずれにしても、早くした方がいいニャ。その【バリア】も時間の問題ニャ」
「それはどういうことなんだ? 俺の【バリア】は一応、かなり堅いはずだが」
「それは間違いないが、そもそも、アニミダックがなんでこんな所に来たかと言うと、おそらく【バリア】に侵入するか、【バリア】を破壊するか、何かしらの手を打つために【バリア】と同じ主様の魔力が必要だったんだろう。だから、魔力を吸収できる触手に主様の魔力を吸わせるためにここに来たんだ。ここは主様の魔力で満たされているからな」
クーがムツキにそう説明すると、彼の顔は青ざめていく。
「ということは、ユウさんやメイリさん、キルバギリーに危害が加わる可能性があるということですか」
サラフェの心配そうな声が全員の耳に届くと同時に、ムツキは翻って家の外へと出ようとする。
「アニミダックの所へ行く……」
「旦那様。妾も連れて行ってくれ」
「私も行くわよ」
「サラフェもお願いします」
「ハビー、俺も行く」
ムツキがそう呟いてどこかへ行こうとするが、女の子たち全員がムツキの前に回り込んで、一緒に連れて行くように訴えかける。
「ダメだ。皆を危険な所には連れて行けない」
「妾たちにも借りを返す機会をくれ!」
ムツキは彼女たちの性格をよく知っている。一度決めたら後に引かない。しかし、【バリア】が壊される可能性のある敵の根城に行くことになるため、彼としては一緒に連れて行くことに強い拒否感を覚える。
「仲間の危機に指をくわえて待っていられないわ。というか、私が行かないでどうするの」
「サラフェとキルバギリーは繋がっていますから、具体的な場所が分かりますよ」
「メイリが心配だ! 俺の強化魔法だって役に立つぞ!」
「……分かった。だけど、無茶はしないと約束してくれるか?」
やはり、一歩も引く気のない女の子たちの真剣な眼差しを見て、ムツキは了承せざるを得なかった。
それぞれが無言で強く肯く。
「ご主人、オイラとクーはまだ戦闘には参加できそうにニャいニャ。だから、彼らも連れて行ってほしいニャ。彼らもまた、仲間の雪辱は晴らすらしいニャ」
ケットがそう言うと、奥の部屋からぞろぞろと隊列を組んで、武装をした猫、犬、ウサギが総勢100匹弱ほど現れる。大きさはバラバラで1mを超える者もいれば、30cmにも満たない者までいる。
「ニャ!」
「バウ!」
「プゥ!」
「こ、これは!」
「主様、見てみろ。こいつらはいい目つきをしているだろう? モフモフ軍隊だ」
「オイラも認める優秀な戦力たちニャ。きっと役に立つから、よろしく頼むニャ。指揮はニャジュミネさんにお願いするニャ」
ケットとクーがいつになくニヤリと笑った。
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