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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第3部3章 毒蛇の王ニドの謀略と魔人族の始祖アニミダックとの闘い

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3-28. 眠っていたが起き上がった(3/3)

約2,000字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 毒蛇はアニミダックに纏わりつくようにして、彼の逆側の耳の方に顔を近づけて話を続ける。それはまるで演劇で話を回しているかのような嬉々とした様子であった。


「そう、今まで誰にも、アニミダック様にも、ディオクミスにも、タウガスにも、レブテメスプにも、そう、誰にも許していなかった……その清き身体を、その柔肌を、強力な魅了によって、ある意味、自身で掛けてしまったその呪いによって、その男に捧げてしまったのです」


 毒蛇はアニミダックから離れて、彼の前で再びとぐろを巻き、少しうつ伏せ気味になりながら、話を続けていく。毒蛇には、アニミダックの憎悪の念が燃え上がっていることが直接見ずとも手に取るように分かっていた。


「あぁ……ユースアウィス様……おいたわしや……アニミダック様がいない寂しさのあまり、新たに理想の男を創り、パートナーにして、惑溺してしまったのです……」


 ここまで毒蛇が言い切って、するりと鎌首を再び持ち上げる。アニミダックの形相が見るからに恐ろしいものへと変貌を遂げ、周りの触手も活性化し始めたようで洞窟全体がざわつき始めていた。


「俺が眠っている間によくも!」


 よくよく考えなくとも、創られた側のムツキに非のないことが分かるが、好きで好きでたまらない自分の恋人をいつの間にか取られたと思っているアニミダックには怒りの矛先が彼にしか向きようがなかった。


「さて、私めが知るのはここまでです」


 毒蛇はほんの少しだけムツキの情報を隠しておいた。後の起爆剤にするためである。


「それで、いかがなさるおつもりですか?」


 近くにいた触手の1つが大きくしなってから地面を殴るようにぶつかる。地面には大きな窪みができ、その威力がただの人族なら一撃で粉砕できるほどの力であると示していた。


「それは聞くことか? 簡単なことだろうが! その男を亡き者にしてやる!」


「おぉ……なんと勇ましいこと。しかし、相手はユースアウィス様が皆さまを参考にして創った最強の男でございます」


「最強? ははっ! 最強か? 4人が、特に俺がいないところで最強か! はっはっは! 安心しろ、俺の【触手生成】に死角はない」


 アニミダックがムツキと闘うことは必至となった今、毒蛇がこれ以上煽る必要もなく、突然、恭しく頭を伏した。


「なんと頼もしいこと。どうぞお気をつけて……」


 毒蛇はそのまま去ろうとするが、触手が目の前を塞ぐ。


「待て。しかし、お前は何が望みなんだ?」


「いえいえ、特に望みはございません」


 とぐろを巻き始めた毒蛇は、自分の尾をまるで人の手のように使って、そっと触手をどけようとしていた。しかし、触手はびくともしない。毒蛇は誰にも聞こえない程度に小さく溜め息を吐く。


「残念だが、そういうのは信じられないな。わざわざ俺を起こしたんだ。正直に言え」


 毒蛇は観念したかのようにアニミダックの前まで戻り、小さな声で呟く。


「いえいえ、ただ私めもその男が気に入らないだけでございます。ただ、私めでは勝てません」


「ははっ! つまり、俺をお前の邪魔者の排除に使いたいということか! 大きく出たな!」


 毒蛇は頭を垂れたままでアニミダックの言葉を聞いている。


「はい、恐れ多くも……その通りにございます。あと、妖精王のケット・シーもその男の傘下にございまして」


「なるほど。つまり、その男……まあ、忘れる前に名前を覚えるか……ムツキだったかを倒すのに、ケット・シーも排除する必要があるわけか。お前が妖精王にでもなるつもりか?」


 アニミダックの邪推に、毒蛇は首を横に振る。


「いえ、既に妖精王の座には心底興味がございません。ただ、今の私めは縛られたくないだけでございます」


 アニミダックは思い出す。かつて、自由を求めて王座を狙い、自分の王に逆らった毒蛇の話。その毒蛇の末路は、昏く深い闇の底に落とされ、陽の光を浴びることも許されず、心に枷を嵌められて一生を過ごすこと。


「……なるほど。いいだろう。正直に言えと言ったのは俺だ。それに俺にも利がある」


「ありがとうございます。それでは失礼いたします」


 毒蛇はニヤリとしたが、それをアニミダックは気付かなかった。やがて、毒蛇が消え去る頃に、彼はまるで目が覚めたかのように目の焦点がはっきりとする。


「……ん? 俺は今まで誰と話していた? ……思い出せん。まあ、いい。ムツキの名前は覚えている。憎き男の名をな」


 アニミダックは誰かと話していたはずだが、なぜか、誰だか思い出せなかった。ただ、思い出せない気持ち悪さはありつつも、それ以上にムツキへの憎しみが全身を駆け巡っていた。


 彼は立ち上がり、再び、ユウの前に立つ。その姿はまるで魅力的な物をショーケース越しに眺めているかのようで、もう少しで自分のものになりそうな楽しみと、自分のものにならないもどかしさのいずれも表れていた。


「ああ、ユースアウィス。今も変わらず美しい。しかし、このような幼い姿を無理やりにさせられているのか。ムツキという男はとんだ変態ロリコン野郎だな……。俺がその呪縛から解放してみせよう。それまではしばらくお休み……」


 ムツキは知らない所で濡れ衣を着せられていた。あくまで幼女の姿はユウの省エネモードであり、彼女が意図的にしている姿である。彼の特殊な癖はモフモフだけだ。


「まずは様子見だ。時間はある。機を窺おう」


 アニミダックは無数の触手に指示をして、広範囲を探らせるようにした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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