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【完結】最強転生者のゆかいなスローライフ生活 ~最強なので戦いに巻き込まれるけれど、意地でモフモフとハーレム付きのスローライフにしがみつく!~  作者: 茉莉多 真遊人
第3部2章 女の子たちの帰省とモフモフライフ

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143/360

3-17. 丁寧で穏やかだが何を考えているか分からない(1/3)

約1,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 世界樹の根が張り巡らされた樹海の中に点在するいくつかの洞窟。樹海の下、その洞窟はすべてこの最下層にある泉へと繋がっていると言われている。毒蛇たちの泉、毒蛇の王ニドの棲む大きな泉である。


 ニドは背も腹も真っ黒であり、また、毒蛇と言うには大きすぎるため、黒き蛇竜とも言われていた。しかし、蛇は竜族ではなく、妖精族の一員であり、ケットの傘下である。


「一年前……いや、あれは寒かった気がするから、半年ほど前だったか。ムツキ様は暑い時か寒い時だけ来られますからねえ……」


 ニドは、その巨躯を少しずつ露わにする。彼は、以前世界樹に出現した大蛇型の魔物ヤクルスよりも大きく、ムツキでさえ口を大きく開かずとも食べてしまえそうなくらいに大きい。


 その彼がその巨躯の動きに合わせてか、誰もが聞き取れるくらいにゆっくりと緩慢に丁寧に話している。


「半年に一度、このイベントがあるからなあ。他のタイミングで来てもいいなら、たまに遊びに来るぞ?」


 ムツキがそう提案すると、ニドは口の端を上げてニヤリと笑う。


「ふっふっふ……ご冗談を……【ライト】がなければ、静謐で暗澹たるこの泉にわざわざご足労いただくこともございますまい」


「そうか? 蛇も中々かわいいと思うけどな」


「……おやおやおや、少し話がズレたようですが……まあ、そう言ってもらえるのは悪くないですねえ……」


 ニドはムツキのかわいい発言に少々驚くもすぐに表情を戻す。


「そうか」


「ええ、毒蛇を好く者などおりませんからね……」


 ニドはしゅるしゅると巨躯を這わせながら、閉じた口からチロチロと舌を出す。


「そんなことないと思うが……あ、まあ、そういうこともあるか」


「おや、何かありましたか?」


「いや、蛇が苦手な妻がいてな」


「ナジュミネ様でしたかねえ。ラタから聞いておりますとも。鬼族の美しい女性と伺いましたよ。さぞムツキ様にお似合いのお方なのでしょうとも。でも、蛇が苦手だとか。まあ、それが普通ってものです。私らも魔人族の鬼族は少々苦手でねえ」


 ニドはムツキを値踏みするように見ている。ムツキはそれを気にした様子もなく、くりくりっとした目がかわいいなくらいに思っていた。


「ったく、ラタはお喋りだな。で、初耳だが、毒蛇は鬼族を苦手としているのか?」


「ええ、昔、彼らの近くにいた蛇どもが皆殺しにされましてねえ。あれ以来、その周りには近づかないようにしているんですよ。たまたまいるだけで殺されたりでもしたら困りますからねえ。おぉ……鬼は怖い怖い……ふっふっふ……」


 それはナジュ父が行った蛇の駆除の話だった。妖精族の蛇はすべてその周りからは消え去っていた。動物の爬虫類の蛇はナジュ父によって、鬼族の村周辺に限って、すべて駆逐されていた。


「そうなのか。何があったんだろうな。みんな仲良くが一番だけどな」


「ふっ……仲良くねえ……ぜひ、そうしてもらいたいですねえ……」


 ニドはムツキの言葉を鼻で笑う。毒蛇側に非はないと暗に伝えているようだ。


「ところで、泉の水はどうだ?」


「ええ、泉の水はいつも変わらず綺麗ですよ。なんなら、私らから滲み出る毒も浄化されていますからねえ」


 ムツキは目的である泉の水の話に切り替える。ニドも前の話にそれほど執着がなかったようで、水の話に切り替わって淡々と話し始めた。


「そうか。いつも通り、水を汲ませてもらうぞ」


「どうぞご自由に……」


 ニドがそう言った後、ムツキは水を運ぶための瓶を持っている猫を促した。猫は周りの毒蛇を警戒しながら泉に近付く。


「シャア-ッ!」


「にゃ!」


 毒蛇が近付く猫に威嚇をする。猫はびっくりして跳び上がる。


「お、おい!」


「おやおやおや……すみませんねえ。ちょっとうちのイタズラが過ぎたようで」


 ニドが詫びる。そこに気持ちがこもっていないのは明白だった。だが、ここで争っても仕方ないため、猫は気を取り直して、泉に近付く。猫は泉に瓶の口をつけて、ゆっくりと瓶の中を水で満たしていく。


「にゃー……にゃあ!」


「おい、気を付けないと!」


 やがて、瓶の中は水でいっぱいになる。猫はその瓶に蓋をすると安堵して、泉の水の入った瓶を高々と掲げて、その勢いでよろけてしまう。


「にゃっ!」


 わざとではない。わざとではないが、猫は近くにいた毒蛇の身体を踏んでしまった。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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