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1-13. 帰らせると思っていたらそうならずに賑やかになった(2/4)

約2,500字でお届けします。

楽しんでもらえますと幸いです。

 やがて、現れたのは20代前半の容姿になったユウだった。髪の毛は金色の長髪が神々しく光り、顔立ちはどこか少し幼さを残しながら、身体はナジュミネ同様かそれ以上に美しいプロポーションをしていた。


 服装はいつもの人形のような服装より少し大人びた水色のドレスを着こなしている。まるで中世の貴族を思わせる容姿だ。


「なんと神々しい。そして美しい」


「さすがは神の御業じゃな。見た目が自由とは」


 ナジュミネとプロミネンスはユウを凝視したまま動けなくなっていた。


「普段は省エネで幼女の姿だけどね。5~10歳が一番動きやすいの。それ以下だとよく転んじゃうし、それ以上だとお腹空きやすくて。ちなみに部分的に成長することも可能だし、ムツキのリクエストには何でも答えてあげられるんだよ」


「まあ、誤解が解けて何よりだ。だいたい、最初したときは俺ももっと小さ」


「ムツキもそれ以上はやめるんじゃ。そっちもそっちで危うい。まったく……神というのは、貞操観念が少しわしらとはズレておるようじゃの」


 プロミネンスは冷や冷やした様子でムツキの口を止めさせた。


「いや、俺は神じゃない。人族だぞ」


「人族? どちらかと言えば、神に近い存在だと思うがの」


「人を辞めたつもりはないぞ」


 ムツキはプロミネンスのその言葉に全身で否定をして、ユウに一緒は嫌なのかと迫られて困り始めていた。ナジュミネやケットはそれを楽しく見ている。


「ここに、創世神、創世神を超える男、元・炎の魔王、そして、あの妖精王がいるのか。まさに、触らぬ神に祟りなし、とやらじゃな」


 プロミネンスは小さく独り言を呟いた。


「ワンッ!」


 犬の妖精がムツキたちに向かって吠えた。ケットが肯く。


「分かったニャ。みんニャ、ご飯ができたらしいニャ。ニャジュミネさんやプロミネンスさんのご飯もあるらしいから食べていくのニャ」


「ごはんだ、行くよ、クーちゃん。プロみんもナジュみんも早く! ムツキもね!」


 ユウはどこからともなく現れたクーに乗って、ログハウスの中にさっさと入っていく。


「はいはい」


「妾やプロミネンスにも……。ありがとう」


「そういうことなら、ご相伴に与るとするかの」


 全員がログハウスに入ろうとしているところに、ムツキはナジュミネの隣を歩き始める。


「だいぶ脱線してしまったけど、話を戻すと、ナジュミネさんは、俺たちの大事な仲間で、俺の伴侶、パートナーだ」


 ムツキは少し恥ずかしそうに照れつつ話しかけた。


 ナジュミネは本当に嬉しそうな表情をする。


「そうか。ありがとう。ところで、妾のことは、ナジュと呼んでほしい。昔から伴侶にはこう呼ばれたいと思っていた」


「分かった。じゃあ、ここに住んでもらうよ……ナジュ」


「あぁ。旦那様」


「旦那様っていい響きだな。奥ゆかしさがあって好きだ」


「そうか。それはよかった」


 ナジュミネは嬉しそうに微笑む。


 全員が食卓につき、ムツキとユウの周りには猫や犬、ウサギがバッチリ待機しているので、ナジュミネとプロミネンスは少しばかり首を傾げる。


「今日もいただく命に感謝ニャー!」


「にゃー」

「いただきます」

「いただきまーす!」

「ありがたく、いただくとするかのう」

「命に感謝します」


 それぞれが食べ始める。もちろん、ムツキとユウは猫やウサギに食べさせてもらっている。


「旦那様。なぜ自分で召し上がらない?」


 当然の疑問にムツキはナジュミネとプロミネンスに丁寧に説明を始めた。自分の呪いについて、その呪いの種類について、事細かに説明する。


 ナジュミネは思わずクスっと笑ってしまう。


 あれほどの強い男が日常生活では赤ん坊同然のような状況であり、そのギャップがとても面白く、そして、とても愛おしく感じたようだ。


「……というわけだ。って、真剣に悩んでいるんだから笑うなよ……」


 ムツキはナジュミネが笑みを零すので、少しばかり気恥ずかしい思いを覚えた。


「ふふっ。すまぬ。でも、そうか。なるほど。では、今度から妾が引き受けよう」


 ナジュミネがそう申し出ると、ケットが2本の尻尾を交差させて大きな×を示した。


「独り占めはダメニャ。当番制ニャ。ご主人のお世話はオイラたちの名誉ある仕事ニャ。だけど、ニャジュミネさんは奥様だから、お世話係筆頭の権限で食べさせ係とお風呂係の頻度を増やしてあげるニャ。炊事洗濯掃除はしなくていいニャ」


 ケットは独り占めをダメとしつつも、ナジュミネのことを配慮して、ムツキと直接関わるものを増やし、そうでないものをしないでよいと提案した。


 気遣いさんの鑑である。


「わかった。ありがとう。だが、炊事洗濯掃除に妾も入れてもらえるか。旦那様との生活で、できることは増やしておきたい」


 ケットは尻尾で〇を示す。


 ケットは客人がいる際に、こうやって尻尾で態度を示す癖がある。それは人が増えて、聞き取りづらい人ができそうなときの対応だった。


「立派ニャ。分かったニャ。意志を尊重するニャ」


 しばらくして、全員が食事を済ませ、談笑もひと段落した頃、風呂ができたとマルチーズがケットへ報告に来た。


「お風呂ができたニャ。誰から入るニャ?」


「はーい。先に入る。いいよね?」


 ユウが手を挙げて、周りに確認をする。もちろん、誰も否定をしなかった。


「私とナジュみんで入ろ? 女同士の付き合いってやつね」


「わかった」


 ナジュミネはユウに連れられて風呂場へと向かった。


「それじゃあ、ムツキよ。後ほど、わしと入らんか? こっちは男同士の付き合いってやつじゃ」


「あぁ。それはいいが、さっきも説明した通り、身体を洗ってもらう妖精たちは連れてくぞ?」


「構わんよ。風呂でゆっくり語れればよい。酒はあるか?」


 ムツキは少し考えて、アイテムボックスの中に酒が入っていることを思い出す。


「まあ、ちょっとならあると思う」


「風呂で少し、な」


 プロミネンスはにやりと笑った。ムツキもそれに笑顔で返す。


「わかった。それまで、おモフだな」


「おモフ?」


 ユウとナジュミネが入っている間、ムツキはプロミネンスにおモフの作法を教えていた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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